第二十一話:地獄のキックパーティー
「地獄の…キック…パーティー…」
古谷の顔が青ざめていく。怯えているのだろう。
「…やっぱりお前も知っていたか」
俺は歩幅を大きくして歩き、古谷に近づく。
「く、来るなー!!!!」
古谷は持っていた鉄パイプを振りながら俺を近づかせないようにする。
そりゃそうだよな。小学生の時に高校生三人とのケンカで全員半殺ししたからな。昔の思い出がふつふつと蘇る。
「…まあ、これは小学生の時だ。今のお前はそれよりも劣っていると思うぜ」
古谷がニコニコしながら近づく。
「ばーか」
俺がそう言うと、古谷はキレたのか鉄パイプを構えながら走ってきた。そして、俺の目の前に着き、ニンマリと笑いながら構えていた鉄パイプを下ろした。
「本当にばかだよな」
俺は下ろされた鉄パイプをよけて、古谷めがけて強烈なキックをする。
「ぐふぁは!!」
俺の蹴りは見事古谷のみぞおちに命中。古谷はみぞおちを押さえながら倒れた。
「弱えなあ…」
俺は古谷を見下す。
「やっ、やっちゃえ!!」
古谷が負けた事に怯えながらも古谷の仲間たちが鉄パイプを持って襲って来た。
「すげえ、こんなにたくさんの奴、相手にしたことねえ。これこそ地獄のキックパーティーにはちょうどいい」
俺は余りの人数の多さにひるんだが、やりがいがあるからケンカをする事に決めた。
仲間たちは『うおおお!!』と叫びながら俺に向かって突っ走る。
「面白え。かかってこい!!」
俺は走ってくる古谷の仲間めがけて走っていった。
「廃工場って何処にあるんだよ…」
稲垣と大沢は今俺が奮闘している廃工場を探している。
「ねえ大沢、交番行こう。交番」
稲垣は大沢に寄りすがる。
「高校生が廃工場に行く用事ってケンカしかないだろ。交番に行ったら警官も一緒についていくだろ」
そういえばそうだなと稲垣は思った。
「コンビニで地図買って工場の地図記号を探してそこに行くべ」
「あったまいい!!大沢。よっ、知将!!高校教師」
「よせって…」
稲垣は大沢を微妙にほめ殺した。高校教師って誉めた事になるのか?
「とにかく行くぞ!!コンビニへ!!」
二人はコンビニへ向かって走り出した。
「大沢家直伝秘技!!ヒューマノイドタワー!!」
俺は技の名前を叫ぶ。別に大沢家直伝ではないが…。その後タワーのように倒立してばた足のように足をバタバタして相手を蹴り倒した。
「ぬはっ!!」
うめき声をあげて人々が次々と倒れる。
「全員倒すぜ!!デス・ストリート」
俺は古谷の仲間と仲間との間の隙間を探し、その隙間を繋ぎ合わせて道を作った。
その俺が作った道を歩きながら周りにいる人達を蹴り倒してゆく。もちろん、みぞおち狙い。
ははは、面白いように人が倒れてるよ。俺は自分の強さに誇りを持った。
「てか何で地図買いに行ったのにさけるチーズなんか食ってるんだよ」
大沢は地図を買うついでにさけるチーズも買ってきた。(ダジャレじゃないよ)それを裂いて食べている。
「だって好きなんだもん」
大沢は裂いたチーズをまた裂いて食べた。
「初めて見たよ。道端で地図を見ながらチーズ食ってる人」
稲垣は生まれて初めてみた光景に感動していた。
「それよりあったぞ。工場の地図記号。しかもこの名前の工場、前潰れたって噂があるぜ」
大沢が指をさす所にはまさしく工場の地図記号と、潰れたと噂されている工場の名前が記されてあった。
「おっ!!本当だ。行くぞ!!大沢」
二人は工場に向かって走り出した。
「…やっと着いた」
大沢と稲垣が見た光景は、一つの雑音もなく迫力がある廃工場だった。
「…心霊スポットぽくね?」
稲垣の発言に大沢は頷くしかなかった。
「行くぞ」
二人は唾を飲んで工場に入った。
「屋良ー!!大沢ー!!」
二人は口をあんぐりあけて唖然としていた。無理も無いよな。だって俺以外みんな倒れてるんだもの。
「よっ!!大沢、稲垣」
「お…大塚…」
俺はその声が聞こえるまで二人の存在に気付いてなくて今まで見てたかと思ってビビった。
「屋良は?」
「やられちまって倒れてる」
俺は指をさして屋良の状態を伝えた。
「うわあ、ひでえやられよう。てか大塚は大丈夫なのかよ」
大沢が心配する。
「大沢、稲垣。知ってるか?高校生を半殺しにした小学生がいた事」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「確か、地獄のキックパーティーっていう異名を持つんだろ?」
俺はゆっくり頷いて自分を指さした。
「それ、俺の事」
俺がそう言うと、しばらくの間シラケた。
「はぁ!?」
二人が同時に反応した。理解するのに時間が掛かったのだろう。
「えっ、それ大塚の事なの?」
稲垣が聞くので俺はまたコクリと頷いた。
「すっげーな。大塚」
稲垣と大沢は俺を尊敬した。
その時、倒れていた仲間の一人が、手をブルブル震えさせながら鉄パイプを強く握り、俺にめがけて振った。
「!!。大塚!!危ない!!」
俺が振り向くと、そこには人影があり、鉄パイプの攻撃から俺を守ってくれた。
「今まで、伸びてて悪かったな」
笑顔だが、笑顔の裏では真剣な気持ちの屋良が守ってくれたのだ。
「屋良!!」
「平気なのか!?」
「打ち所悪かったのか?」
俺たちが屋良を心配すると、屋良が疲れた表情になった。
「はあ、お前にだけいいとこ取らせねーよ」
屋良はそういって鉄パイプを持った仲間を殴り倒した。
大塚はふうと息をついて、屋良の所へ行き、手と手を叩きあった。
「まずさ、古谷って一体何?」
稲垣が今誰もが知りたがっている質問を俺たちにした。
「喧嘩が出来ない不良だよ。かもふらーじゅってやつ」
稲垣は『ふうん』と言いながら納得した。
俺は思う。あいつは今まで自分に逃げていた自分に活をいれるために俺たちに『果たし状』を送ったのだと思う。もう自分をカモフラージュしたくなかったんだなあと思った。バカな俺でも分かるよ。それくらい。
まあ、今日はみんなに対する俺の見方が変わった日だと思う。
遂にバンドでいう大きな一歩ともいえるSONG OF SKYの第一曲目が完成!!
歌詞も乗せちゃうぜ!!
そのタイトルは…『恋ものがたり』
ちなみにそれをつくった福元ちゃんは彼女無し。んじゃラブソングなんて作るなよ。
次回からは稲垣視線になります。