第十九話:『果たし状』
俺、元ジャニーズJr.の屋良です。
さてさて、いつも俺たちが練習している長橋ライブハウスにとんでもねえ物が届きましたよ。
『果たし状』だって!今時そんなの書かねえよ。
内容を見てみると…。
突然の手紙、申し訳ございません。
(敬語!!)お二人に手紙を出した理由は、先日、私達がお二人にお金を拝借させてもらおうと、お二人に所持金額をお訪ねし、貸して頂こうと思った所、お二人は容赦なく暴力を振るいました。
私達が通っている高校は暴力に関しては一番という記録を残しておりまして、お二人がその記録を汚したという事になりますと、とても許されべき事ではありません。なので、お二人に決闘を申し込むためにこの手紙を送りました。明日の午後三時壊されてしまいました廃工場で待っております。お待ちしています。敬具(拝啓が無いのに?)○○高校、大塚進、屋良慎様へ。△△高校、古谷より。だってー。
「どうするん?屋良と大塚」
稲垣が真剣な眼差しで俺と大塚を見ながら聞く。
「てかさー、カツアゲされそうになったのを殴って逃れただけなんだからあいつらが怒る意味が分からねえ」
大塚がふっきれた感じで主張する。でも同感だ。
「無視ればいいんだよ。俺なんか何回もこんなの来たけど無視したぜ」
福元が自分の実体験も加えてアドバイスをするが、実体験は本当なのか分からない。
まあとりあえず無視する事にした。てか最初からそんな気はなかった。
だが、あの高校はそんなに甘くはなかった。
翌日、また『果たし状』が届いた。もちろん差出人は古谷である。中身を見ると、こう書いてあった。
てめー!!なんで来ないんだよ!!今度の今度は許さねぇ。また同じ時間に待つ。今度来なかったら君達がいつも集まる場所が消えるから覚悟してね。それじゃあ。と、血らしき物で書いてあった。
「やべえよ。これは」
大沢が果たし状をじっくり見ながら言う。
「頼む。このライブハウスだけは消えては困る」
福元が慌てて俺たちにケンカを買う事を頼む。
「しょうがない。行くか」
大塚がやれやれって感じで俺に言う。だが、俺の心の中は違った。
「いや、俺だけで行く」
「何!?」
俺の衝撃発言に全員が驚いた。まあそんなに俺はケンカに参加しなかったから無理もないと思う。
「なんでだよ!?屋良!?俺達に売ったケンカだろ?なんでお前だけなんだよ!?」
大塚が納得いかないのか俺に反論して俺の所に歩み寄ってくる。
「よく見ろ。大塚」
俺は果たし状を大塚に見せた。
「一枚目の果たし状の一番下に古谷よりってあるだろう。△△高校とは書いてあるが古谷だけしかこのケンカに参加しないだろう。しかも一回俺たちが倒した奴だから一人で余裕だろ?まあピンチになったら助太刀を頼むけどな。分かった?」
「お、おう」
大塚は納得をしてくれた。それにみんなも納得をしてくれて、俺にがんばれよとエールを送ってくれる。
俺がさっき言った事はカッコつけるために言った演技では無い。心の中で思った事だ。
「待ってろよ、古谷」
俺はそう呟いてエアーボクシングをし始めた。
翌日、俺は学校をふけて、午後三時に間に合うように家を出発した。
「屋良〜」
声がする方を見ると、大塚が自転車に乗ってやってきた。
「来たな、大塚」
大塚はキィーとブレーキをかけ、俺の前に自転車を止めた。
「ちゃんと助太刀するからよ」
俺はニッと笑顔を浮かべて、大塚と共に廃工場へと向かった。
午後三時二分ごろ俺たちは廃工場に着いた。
「大塚はここにいろ」
俺は大塚を入り口の死角に隠れさせ、助太刀を頼む時は右の中指を上げるからその時は宜しくと頼んどいた。
こうして、俺は廃工場の中に入っていった。大塚を残して…。
工場の中には、古谷がポツンと一人で立っていた。俺はそこに向かってゆっくりゆっくり歩いた。
「久しぶりだな。屋良」
古谷がニヤリと笑顔を浮かべて俺に話しかける。
「お前と会ったのはあの時だけだ」
と、俺は拳を構えて決闘の準備をした。
古谷はニヤリと笑って指をパチンとはじく。すると、四方八方から古谷と同じ制服を着た奴(鉄パイプ持参)が現れた。
そして、一気に俺は囲まれた。
くそ、予想外の展開だな。まあ、でもやるだけやってみるかと俺は思った。
「かかってこい!!」
俺が叫ぶと、古谷の仲間が鉄パイプを振りかぶりながら俺の所へ。
俺はよけられそうな鉄パイプをよけ、そいつを蹴りや殴ったりして倒す。挙げ句の果てには落ちてあった鉄パイプを二本持って古谷の仲間を殴り倒した。
だが、古谷が仲間の中に隠れて俺の足下に鉄パイプを置き、俺がそれを踏んでこけるのを待った。
案の定、俺はこけた。その瞬間古谷の仲間たちが俺を囲んで鉄パイプで殴ったり蹴ったりした。
俺はこれじゃあ勝てそうにも無いから大塚に助けを求める合図を出そうとした。
「何やってるのかなあ?」
古谷が笑いながら俺の右手を踏んだ。
「ぐわぁああ」
俺は痛さのあまり叫んだら、古谷の仲間の一人が首に鉄パイプを当てたため、俺は気を失った。
「まずは一人目完了」
古谷が気を失った俺をおもいっきり蹴って隅の方へと飛んだ。
「えっ、もう一人いるのかよ」
古谷の仲間が聞く。
「ああ、そこに隠れてる奴、出て来いよ」
古谷の視線は、大塚が隠れている場所だった。
屋良が負けてしまった奴に見つかってしまった大塚。
――俺はいつも屋良にくっついていたけど、こんな俺でも一人で出来る事があるのか?
そんな時、『あなたにも一人で出来る事はあるはずよ』という声がしてきた。
あの声は、一体誰なんだ?
次回は大塚目線で行かせていただきます。