第十話:妖精来襲
なんでサギ師って事が分かったんだろう。
で、でもさ、ギターはあげるんだし、ギター買うのにも金がかかる訳だし、高校生がサボるって事は将来実家暮らしになりそうだから、高校生の家、金持ちだよね。サギ師、福元健吾はそう思っていた。
「50万するフォークギターだったら、ビンテージだけど、このギターにビンテージの条件はまったく無い。おまけにこの傷は自分でつけてるような感じ。まあおよそ七万円だな。」
うわぁん。
一気に43万円も値引きされちゃったよぉう。
福元はそう思いながら心の中ではものすごい落胆していた。
「うん、七万。七万円な。福元の相棒の入会金」
稲垣はポケットの中から七万を出して福元に渡した。
七万を普通にポケットから出してる!?なら50万なんて探せば家にあるだろ!?と心の中で福元が稲垣に問いかけている。
だが、福元はこのギターを三万で買ったのを言えないで、稲垣からもらった七万円をまじまじと見ていた。
「どうするん?サスケ系で行くん?」
「サスケ系!?」
「まあギターを持った二人が歌うフォークシンガーみたいなのをサスケ系。これオレ語」
「はあ…」
絶対流行らない言葉だなと思いながら福元はこれからの事を考えていた。
サスケ系。
サスケ系もいいなあ。
福元は稲垣と共にしんみりとした曲を客に届けているのを想像して(正確には妄想)、福元はサスケ系で行く事に決めた。
「うし、サスケ系で行こう」
「オレ語もう使ってるよ…。うん。いいよ」
「よーし、がんばるか」
福元が拳を高く掲げて軽自動車に乗ろうとした時、何か声がした。
「駄目だよ。どうせフェスティバルに行ったらドラムとベースとか入るから意味無いよ」
福元が『えっ?えっ?』と言いながら周りを見ている。
稲垣は覚悟したのか固まっている。
あいつが来襲してきた。稲垣は冷や汗を垂らしながら妖精を迎えた。
光の玉がくるくると円を囲んで中からピリオドの妖精が出てきた。
「どうも〜♪ピリオドの妖精です」
「てめー!!またオレにラリアットしに来たのか!?」
稲垣が妖精を指でさしながら怒鳴る。
「違うわよ!!今日はミュージックフォームについてアドバイスしに来たの」
「ミュージックフォーム?」
「そう。それ自分語」
妖精が胸を張りながら言った。
「てめー!!オレ語パクリやがったな」
「はあ!?あんたのオレ語なんてパクる気にもなんないね!!」
「なんかすげームカつく」
福元は妖精と口ゲンカをしている稲垣を不思議そうに見てた。
稲垣は視線を感じてハッとして振り向いた。
「福元さん、見える?」
稲垣が妖精を指で差すと、福元はコクリと頷いた。
稲垣は『ヤベエ』と感づいて言い訳を考えた。
「あのさ」
「はい!?」
福元が言うと、稲垣はビクビクしながらも速く対応した。
「妖精さん、話があるんだ。乗ってくれないか」
「はいはーい♪」
福元が妖精を呼ぶと、妖精は警戒もせずに車に乗った。
稲垣は、福元の行動から気味悪がってないと察して、よかったと思っていた。
「久しぶりだな。まさか稲垣君の所に来るなんてな」
福元は笑いながら妖精に語った。
「聞いたよ。解散したんだってね」
「うんまあ」
福元はタバコを一本出して吸い出した。
「今は何してるの?」
「今はコンサートのバックバンドで食ってるよ」
「そう」
福元は煙を鼻から出した。よっぽどのヘビースモーカーだろう。
「あの子、なかなかの能力を持っているよ」
妖精は胸を張って話す。
「まあな、作詞の能力もあるし、コードを教えればすぐ覚えるし…作詞と作曲両方出来るよ」
「やっぱり福元は選ぶ人が違うね」
「へっ」
福元は勝ち誇った顔をして妖精を見た。
「あ、出てきた」
稲垣は妖精と福元が出てきたのを見て、歩いて二人の所へ向かった。
「何話したんすか?」
稲垣が聞くと、福元は苦笑いをしながら『まあいろいろ』と答えた。
稲垣は変なのと思った。
「それより、やっぱりバンド形式にする事に決めたよ」
妖精が福元に代わって結果を発表した。
だが実際そんな話をしてなかったから妖精が勝手に決めた事になる。
「はあ」
「とりあえずあと三人は確実に必要ね」
「はあ」
妖精が勝手に決めた事だが、稲垣は相づちを打って従おうとしている。
福元はよくやるなと思った。
「分かった。それじゃあ」
「はあ」
最後も稲垣は相づちを打って妖精を見送った。
「…誰にする?」
稲垣はちょい涙目で福元を見た。
「三人か…、はあくそ!!俺の友達はみんなドラムやベース出来ねえからな」
福元が思い当たる友人はどれもダメらしい。
すると、稲垣はある三人がいる事に気づいた。
「俺、可能性がある奴知ってる」
「マジで、じゃあ呼んできてくれ」
「わかった」
稲垣は学校の鞄を持って走り出した。
思い当たる三人を連れ出す事に成功した。
それぞれの楽器を見事にこなす。
こうして、バンドが結成された。あとは名前だけ!!