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空に歌えば  作者: カツオ
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第九話:サギ師だろ?

 はぁ…っ。黒崎がいないなんて何か半分以上ピースを失ったパズルみたい。

 稲垣はそう思いながら学校とは反対方向の道を歩いている。

 海に浮かんでいる島のように雲がふわりふわりと浮かんでいる。

「こんな日に学校なんか行ってらんねえよ」

 稲垣はカバンを高く掲げながらあくびをした。

「寝るべ」

 稲垣は雑草が生い茂っている斜面に寝転んだ。

 いつもなら邪魔な存在の雑草が布団の中に入っている羽のように眠り心地がいい。

「ああ、空っていいよな。人を悲しませる事が無いからな…」

 稲垣は空と今までの自分を比べたが、空の方が勝っているようだ。

「空になりたかったな」

 稲垣が悲しそうに呟くと、なんか声が聞こえる。

「そうだよね、空を見ると、自分がめちゃくちゃちっぽけに見えるよね」

 またピリオドの妖精か?稲垣は辺りを見回すが、妖精が現れる前兆が無かった。

 稲垣はよく耳を澄ますと、ギターの音も聞こえる。さらにあの言葉が歌に聞こえる。

「そうだよね〜♪空を見ると〜♪自分がぁ♪ちっぽけにぃ〜♪」

 見事にリズムがあっている。音色から見ると、稲垣はフォークギターと察した。

「あああ、空よそぉらぁよ♪自分を強くしてくれないか」

 なんてくさい歌なんだ。これじゃいい歌と言われたいだけだ。

 稲垣が後ろを見ると、華麗な指使いでギターを弾いている青年がいた。

「よお、高校生。俺の歌に感動したのかい?」

「全然!歌詞がなってない」

 稲垣は起き上がって斜面をゆっくりと登る。

「弾いてみ」

 登りきった稲垣は、青年にメロディーの要求をした。

「空を、空を見上げてみろよ♪青い空、青い海、青い僕がいた」

 青年はギターを弾くのを止めて立ち尽くしている。

「…」

「どうした?」

「…いい」

「はい?」

 青年は稲垣の肩を掴んだ。

「いい!!いいよ!!君の歌!!全然くさくなくて、心の奥の奥の中を見ている歌!最高だよ君!」

 青年は稲垣の肩をがっしり掴んで、揺らしていて、離さない。

「ちょ、ちょっと、苦しいぅい」

「あっ」

 青年はさっと肩を離した。稲垣はぜいぜいと音を立てながら息をしている。

「すいません、すいません!!」

「い、いいよ。別に…」

「そ、そう」

 稲垣は何だあいつは?って顔をしてカバンを持って歩き出した。

「とことん変な奴だな」

 稲垣が呟きながら歩くと、車の音と『待って』と声がした。

 振り返ると、軽自動車に乗っている青年の姿。

「なっ…。お前車持ってるんかよ」

 稲垣は必死に走るがやっぱり車。追いついてしまった。

「ふぅ、やっと追いついた」

「お前、俺を追う理由なんてあるのか?」

「まあ、空を見てみろよ」

 稲垣は空を見た。

「空で語れないものはない。ギターで語れないものはない」

 稲垣はその通りだと思って頷いた。

 青年は軽自動車のドアを開けて、フォークギターを出した。

「ギターで語ろうぜ。俺と一緒に」

「俺、ギター弾けねえし」

「ギターで語りたい思いがあったら上手いも下手も関係ない」

 青年は笑顔で語った。

「別に暇だからいいけど」

 『やったー!!』と叫びながら青年はクラクションを何回か鳴らした。

 こいつ、暑苦しいなと思いながら稲垣はギターを見た。

 稲垣は固まった。

「ああ、そうだ君。ギター代は払ってくれよ」

 青年は待ちかまえるかのように手の裏を稲垣に見せた。

「いくら?」

「50万ぐらいかな」

「兄さんの名前なんてゆうの?」

「俺の名前は福元健吾さ」

 今ごろ名前聞いたよと思いながら、福元は笑顔で名乗った。

「福元健吾、お前、サギ師だろ?」

「え…」

 福元は何で見抜けたの?と思って何も言い返せなかった。

 なぜか、雲一つない青空だった。


とりあえずギターを始めることになった稲垣だが、久々のピリオドの妖精の登場でバンドにするように命じられた。

残ったメンバーをどうすればいいのか?

必死に考えた挙げ句、あいつらに頼む事になった。

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