6 よくいそうなキャラ
アイルとともに、部隊を作ったものの私達は基本合わなかった。
例えば、ショートケーキかチョコケーキ、どちらが選ぶ場合、私はショートケーキ、アイルはチョコケーキといった感じであった。
そして、隊の方向性に関してがとにかく食い違った。
サキは、ある程度の実績と隊員同士の結束を第一に。アイルは、個々の能力を高め、アトラティカルの部隊による模擬戦に参加したい。シーズン毎に行われているため、次は来月の頭からだった。次のシーズンまでには2週間と1日しか時間はなかった。
「アイル…。あんたも分かってんだろ?私たちは、確実に戦闘においても息が合わない」
「分かってるよ!そんなの!だからこそ、今はお互い特訓して強くなって、そんで連携を高める!それ以上に何があんだよ!俺は部隊で1位になりてぇんだよ!」
「アイル、あんたの気持ちはわかるよ!けど私はこれ以上、スナイパーとしての力量は上がらないと思う。1位って…1位には次のシーズンだけでは、なれる訳がない。今はある程度の実績を積んで経験することが大事だ!」
「俺だって、お前が言ってることぐらい分かってんよ!けど、最初から高い目標を定めていないと、いつになったって低いままになんじゃん!」
「いや、だからさ〜」
いつまでたっても、話は平行線のままだった。
ヒメナ・パトリック。17歳。ポジションはガンナーであり、両手で銃を使える、いわば二刀流の隊員だった。
だが、しかし彼女はいつも、周りから白い目を向けられいたのであった。その理由は____
「ねぇ、見て。あの子」
「うわ、本当」
「あんな、髪型恥ずかしくないのかしら…」
「なんか、ね〜」
クスクスと人を嘲笑わう声がいつものように彼女の耳に届いていた。
彼女は、ピンクの色の髪色で、高い位置でツインテールをしており、綺麗に髪の毛を巻いていた。
どうやら、ほとんどの人間は、高い位置でツインテール、しかも巻き髪。周りからは、ぶりっ子と思われ、女性からなんて、男を狙っているのか笑と思われる。そのため、彼女もまた、アイルと同様に基本孤高を貫いていた。
しかし、彼女の性格は、なかなかに癖のある強烈な性格とは言えず、ならば見た目通りの性格なのか…とも言えず、何とも言えない性格であった。
彼女はその強烈と思われる見た目とは裏腹に中身は平凡な少し…いや、かなり臆病といった性格だった。
人は見た目である程度この人はこんな人だという、こんな というだけで、決めつけ脳が覚える。そのため、髪型を1度嘲笑われても髪型を変えない。=彼女は揺るがない心を持った人=協調性のない人とレッテルを貼られていた。なぜ人は自分の人生に、ほとんど関わりをもたない人。自分から持たなくて済むような相手に関心を見せるのか、ヒメナは、ずっと考えていたのであった。
アトラティカル本部内 休憩室_____
「なぁ、俺たちの部隊に入れる奴のことなんだけどさ…」
「入れるって………。うん」
「できれば、協調性のある奴がいいよな」
「協調性ね…。まぁ確か私達二人だと、協調性があるよりっていうか優しい人がいいね」
「はぁ?俺だって優しいだろ!」
「ごめんごめん」
(やっぱ14歳…。可愛いな〜)
初対面のとき、かなり腹が立っていたサキは、部隊を組み任務や休憩時間などをアイルと共にしていくうちに、アイルのことを分かってきていた。
アイルは、口は悪いが根は優しく分からないことや困っている時など直ぐに気づいてくれ、教えてくれる。不器用なだけであり、少し自分と意見が会わないだけで案外が良い関係だと思っていた。それはまた、アイルも同様であったが、少し違う点があった。
(サキって、たまに何考えてんのか分かんねぇとき あるよな〜。別に困ることでもないけど…)
行動の多くを共にすることになり、サキは周りをよく見ており、場を読み、極力人を避けているといった印象を覚えたアイルであった。あまり、表情豊かではないな〜とは思っていたし、年上をアイルは基本避けていた点もあり、少し頭の隅に置いていた。
「それより、お前。もうすぐ新入隊員同士による新人戦あるだろ?対策とか訓練とか大丈夫か?」
「あぁ、………」
「おまえ、忘れてだろ……」
「忘れていた訳では無いんだけどね…」
ジーー……
「考えないよに は してた」
「はぁ、ったく!お前はもうソロじゃないんだ!新人戦は自分たちの部隊の新人の強さを知らしめる先輩隊員にとったら、大事なイベントなんだからな!」
新人戦__
通常の模擬戦を新入隊員のみで行うリーグ戦。
スナイパーは、主に後方から戦うため不利に思われるが、仮想空間で本当の市街や森林をモデルとした仮想空間であるため、そこまで不利にはならなかった。
新人戦では、各々の既存部隊に新たなる隊員を補充した場合やサキとアイルのように新たに作った部隊なのが、自分の隊には こんなにも強い隊員がいるのだとお披露目するための模擬戦であった。
基本的に新人戦は、原則として当年に入隊した隊員は出場する決まりがあった。
ならなぜ、部隊編成期間の後に新人戦を行うのか。と疑問が生まれる。その理由は、憶測であるが隊員たちは理解していた。まず部隊を多く作りたいのが上層部の見解であった。部隊を作り、チーム内で高め合い相談したり励まし合い、いざというときの連携。そして、先日アイルが危機的状況に陥った時など、1人より複数人でいる方が、勝率の確率が上がるためであり、市民の誘導時においても、非常に役立つからであった。
新人戦を先に行うと、実力があり良い結果を残した隊員が主に勧誘され、勧誘されない隊員が増える。そして、ソロの隊員が増え、アトラティカル全体の実力が隊員数に比べ大きく下回ってしまい、足でまとい_になってしまう可能性が高まるためであった。
ならば、育成機関での噂、ポジション、オーラや性格などで部隊編成をし、既存の部隊であれば新人を鍛え、新たに作った場合であれば、いかに互いを協力し合い自身らの伸び代を知る良い機会でもあった。
(新人戦ね…。記憶がない分 不利だし、少なからずある手の内を晒すのは避けたいな……)
「まっ!お前が乗り気じゃないのは分かってる。けどせめて初戦は突破だ!…いいな?」
「…分かった。頑張ってみるよ」
「おぅ!あたりめえだ!よし、そうと決まれば訓練室に行くぞ」
「今の時間帯だと人が少なくていいね〜」
そうして、2人は休憩室をあとにしようとした。
ウィーン__(自動ドアが開く)
「おわぁっ!」
「!?」
「ひゃァ」
(ピンク髪………)
下を向いて歩いていたヒメナは、尻もちをつき上を見た。
これが、3人と出会いであり始まりだった。
「すみません。こちら側の不注意です。ケガはありませんか?」
「ごめん。勢いよく飛び出しちゃって……」
(髪の毛、綺麗にクルンってなってるな〜)
アイルとサキは、こういう時に限って思考が似ており、お互い彼女に手を差し出していた。
「い、いえ、気にしないで…………ごめんなさい…」
しかし、彼女は一度も2人を見ず足速にこの場を去った。
「ビックリしたなー」
「勢い飛び出すのは危険だよ」
「分かってるよ…もうしない…」
「ふっ、さぁ訓練室に向かおう」
「おぅ!」
(あの目…どっかで見たな〜。記憶に関する感じじゃない。どちらかといえば、既視感を感じたな…)
サキの第一印象は、よくあんな高い位置でツインテールしていて、髪の毛が綺麗にまとまっていて、尚且つパッと見ただけだが、巻き髪が左右対称であり、すご!という気持ちだった。一瞬、彼女と目が合ったであろうときの、彼女の瞳がサキの目に焼き付いた。
何とも言えない、あの瞳。自分たちの体で彼女が陰に隠れていたが、あれは何かあった…という目をしていた…。
「はァ、はぁ………」
(ひ、久しぶりに、人と目があっちゃった……。ビックリした……)
彼女は周りから恐れられているのでない。わざと関わらないようにされているのであった。誰かの目の前にペンが落ちたのであれば、タイミングが良くなかった人や、忙しい人や気づかない人以外は大抵拾ってくれる善意な行いだが、彼女の場合はペンが転がれば、人が捌けるといった。アイルとは相手の心情は違うが、周りからされてきた行動は同じであった。
そのため、先程の2人の行動は彼女にとって、久々に優しくされた、関わりを持とうとしてくれた行動であったため、咄嗟の優しさに慣れておらず逃げ出したのであった____
(はぁ…絶対、嫌なやつって思われたよね…。せっかく優しくしてくれたのに…。しかも、ぶつかりかけたのって若くして入隊したけど年上殴っちゃっていう、あのアイル・アドラーくんだし…。………)
「誰だろ……。あの人………」
たった少し、本の僅かな時間……20秒程の時間ではあったが、ヒメナはサキのことが頭離れないのであった______
胸の高鳴り。きっと久々に自分に優しくしてくれたから今は、鮮明に記憶が残っているのであり、その内消え去り、たとえ次に会ったとしても相手は忘れているだろうと思った。だが、夜になっても次の日になっても忘れられなかったのである。若くして入隊した、アイル・アドラー。そして名前すら知らない_あの人のことを…………
3人の出会いより2日後_____
ヒメナ・パトリックは、あれ以来、暇さえあれば、あの時の休憩室に足を運んでいた。
(今もいないな……って、私ストーカーみたいじゃない!?)
悶々と休憩室の中で休憩を取らないヒメナは、1人、あの2人組に会おうと健気に努力していた。
「まぁ、この調子なら初戦は勝てそうだな!」
「いや〜、どうだろな〜」
「おい!もっとちゃんとやる気出せよ!」
(!?この声、アドラーくんと…あの人!?)
ヒメナは、理性よりも感情に従うまま勢いよく立ち上がり、ガタッと机が音を立てた。
ウィーン___
「ったく、お前ってやつは………あ」
「あ….あの時の……」
(!?覚えててくれた____)
アイルは入口で足を止め、横にいるサキの方を見たがサキは斜め前にいた。
サキは足を止めず、彼女の方へ歩いてた。
(ふーん、珍し…………)
「あの時は、すみません。ケガはありませんでしたか…?」
ドクン…ドクン…鼓動が速い。段々と速くなっている。他の人から笑われたりバカにされたりするときとは違う、また別の理由で速くなっている鼓動。
彼女は今、脳で理解した。この人は今の段階では、私を笑わない。嘲笑わない、普通に優しく接してくれる人だと…!
「あ、あの………!」
「??」
「あなたの、……………