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4 若き秀才(仮)



「へぇ〜、あんたが……」


第一印象は、なんだ このクソガキだった____



任務待機場所には、そこそこ人がいたが半数は私と同期であり初めての任務を控えているものだった。

(リリアちゃんが、去年で中等部1年って言ってたから、今中2___)

どこにいるのかと、見渡していたら、目が合った。

小さくて、威圧感も感じない、普通の男の子だと思った。

「アイル・アド「気安く呼ぶな!サキ・アールグレッド」

「は?」



アイル・アドラー。多くの者は彼を過大評価し過ぎていたと悟った。彼は若いだけで、隊員としての実力は20歳の隊員よりは下だったと。彼は同い年より頭1つ分だけ秀でているが、世間一般で言えば、強くなかった。そう、彼は勝手に周りに注目され、勝手に分析され、期待され、何もしていないのに失望されていた。


「いいか、俺はお前より1年も早くに入隊したんだ!俺を敬え!」

(なんだ、このガキ!)

出逢って初っ端、私は彼に大声で、「気安く呼ぶな!」「サキ・アールグレッド」と言った。

いやいや〜気安く呼んだのは悪かった。けど、名前をそんな大声で呼ぶやなーーー印象づけられんだろうがッ!

サキのイライラは少しずつ溜まっていくのであった。


任務開始_____

私は今、アドラーさんと市民の安全のための初めての巡回警備を行っていた。

(アドラー、覚えておけよ)

アイルは、何かあった時は俺が対処する。だからお前は何もするな!とまたしても、大声で言ったため、苛立ちが収まらなかった。

「ったく、この俺をどうして こんな奴と巡回警備なんてしなくちゃいけないんだよー」


ずっとイライラしてたし、疲れもあったんだと思うけど…………知らない景色だ………

ここがアトラティカルの領土内でアトラティカルで1番有名なアベニューだということは、分かっていた。

が、見慣れない。何も覚えていない。懐かしむこともなければ、今となっては初めてみたであろう景色に驚きもしなければ興味も湧かない。サキにとっては、どこを歩いても何も知らない分からない場所をただ歩く、難解な迷宮な迷路に迷い込んだ気分だった。


「ねぇ、ちょっと!返してよ!ねぇ、」

アイルとサキは同時に足を止めた。

すぐに声の主の方へ2人は視線を向けた。そこはアベニューからセントラル広場までの間にある小学生の多くはここで放課後を過ごすといった公園でだった。2人の少年と1人の少女がいた。

(あら〜、なるほど。あの男の子達が、あの女の子の髪飾りを取ったのか…)

…任務中だしな…。どうする…。


「おい、何やってんだ!」

「え、ちょっ…」


アドラーはズカズカとその子達に近づいていった。

「お前らな、人が嫌がることをして楽しいのか?」

「はぁ?なんだよおま…え…!?」

「おい、こいつ…アトラティカルだ…!」


アドラーさんは、彼らにこう言った。

「人のものを勝手に取ったり触っていいのは、自分にとって限られた人だけなんだ。もしかすると、誰もいないかもしれない。例え仲のいい友達であっても 誰にも触られたくない物だってあるだろうし、家族でもだ。俺なんて母さんには冷蔵庫を触るなって言われるし、姉ちゃんからは絶対に私物を触るなって言われてる。俺だって家族に触ったり取られたりしたら嫌なもんぐらいある。お前らだってあるだろう?この子の立場になったことはないかもしれないが、相手が今どんな気持ちでいるか想像はできるだろ!」


アドラーさんは、中等部2年生といえど、軍事国家でラングールのこれからを担う勢力の1人であり、

(こういった人がいるのは、貴重だな)


アドラーの言葉により、男の子2人は女の子に謝り、3人で仲良く帰って行った。

「凄いですね。 」

「はぁ…何が凄いんだよ、あんなの…!!」

「すみません」

(なんだ、急に人が変わった…?)

単に行いが良かった。と褒めたつもりがどうやらアドラーさんの期限を損ねてしまった。初回任務ということもあり、任務が終了した。


自室に戻り、リリアちゃんが寝付いた頃に考える。

何故、アイルは機嫌を悪くしたのか…。

(もう考えたくないんだけどな…)

サキが考えている理由は1つ。サキには任務があと2回残っている。次の任務を共にする昨年度入隊の先輩は別の人だが、最後の1回はアイル・アドラーと任務だった。今は部隊編成期間であるため、ソロで行動しているアイルはかなりの巡回警備の任務をこなさなければならなかった。

それでイラついているのだろうか…。〈アトラティカル〉と言葉を聞いた時よりも、この部屋に初めて入った時とは違う。心のざわめき。焦ることもなければ、冷や汗をかくことも、記憶がないから…ということでも何でもない。ただ、不安 という気持ちだった。


夜が明け、次の任務までの間、リリアちゃんと訓練を共にしたり色々な部隊を見に行ったりと長いようで短い。短いようで長い時間を過ごした。2回目の巡回警備で一緒行動を共にした方は、とてもお優しい女の人で、街のことや、去年自分たちが何をしたのかを教えてくれた。そして、アイル・アドラーのことも。


「あら?前回は、アドラーくんとだったのね」

「はい。今日はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくね。そんな かしこまらなくて全然いいわ。そう、最初がアドラーくんとだったのね…」

「??」

(アドラーに対して何かあったのかな)

「アドラーくんはね……」


アイル・アドラーは、昨年度入隊員のほとんどは覚えてることがあった。彼と同期入隊だった何人かは、彼のような若き子が自分達と〈同期〉というのが、何とも気に食わなかった。そのため、アイルの年齢が若い。そして、あの態度であったため、妬む者は先輩に嘘を交えた情報を伝え、アイルを誰とも部隊を組めないように仕向けようとした。が、アイルはそれ以上に優秀であったため、勧誘の手は後を絶たなかった。

事件は起こった。同期の多くが集まる場所でアイルが自身を妬んだ者に全治2週間の怪我を負わした。妬んだ者が悪いという人間もいれば、あんなに怪我を負わせる必要はなかったんじゃないのかという人間が圧倒的に多かった。上層部の判断は、 アイル・アドラーに3ヶ月の減給の処罰を下した。中学一年生の子が、大柄な体格をもつ20歳であった人に全治2週間のケガを負わしたことは、十分過ぎるほどに人々の記憶に刻まれた。アイルを自身の部隊に入れようと勧誘しに来る人はいなくなった。


(手を出したことは悪いが、アドラーだけに処罰が下ったのは何故だろう…)

「アドラーくんは、それ以来、孤高を貫くというか何というか…。私は悪い子ではないと思うのだけどね……」

「ありがとうございました。」

「…部隊編成期間が終われば、他のソロで行動している人や部隊での都合が合わなかった人とも任務が一緒になるから、気を落とさないで!」

「いえ…。ご心配なく」


自室___

「ねぇ、リリアちゃん」

「ん?どうしたの?」

「私達の同期で1番若いのは何歳だっけ?」

「んー…。確か15歳…だったかしら」

「ありがとう」

(15歳か……アドラーの方が年下か…。)

サキの疑問は、年齢だけで何故妬むのだろうかだった_

(アドラーだって、育成機関に受かって卒業試験も合格して、正式に入隊しているのに何が妬む要因となっているんだろう…)

確かに、自分より年下に負けるのは悔しい。自分の方が先に生まれ、年下は後に生まれる。経験や時間の差と有利があるのに、負けるのは悔しいという理由はよく分かる。ただ、人と比べるよりも大事なのは、誰かに勝ちたい、人より上に立ちたいという心構えよりも、己の力量を理解し負けを認め、自分を知り、悔しいという感情を味わえたことに、真の価値を感じると思う人の心構えの方が、物事に勝った人よりも得るものは大きいのかもしれない。

負けず嫌いな人も多くいる。負けとなり悔しいと思う人は、その物事に一生懸命に取り組み、それでも自分よりも優れている人がいる。その一連の過程が脳に刻まれ、感情が追いつき、泣く者がいる。悔しいという感情は、己がこれまでに築き上げてきた過程が努力の積み重ねによって生まれる感情なのだと思う。だから、悔しいと感じられることはその人が、努力してきた結果であり勝者に味わえない一種の特別な勝ちであると思うからである。だから、何故妬むのかが理解できなかった。それは、アイル・アドラーも同様であった。


時が経ち、アドラーとの任務日、夕方__


「いいか!何があっても俺の言うことを聞けよ!」

「分かっています。」

(こいつ、やっぱり腹立つ)

今日の巡回警備が終わり、明後日を迎えればまた、新たに任務日程表が張り出される。多くの隊員は部隊編成の書類を提出したりと、何かと忙しい日々を送っていた。

「今日はあの子たち、いないですね」

「そりゃそうだろ。今日は学校が創立記念日で休みだってさ」

「へぇー」

(よく知ってるな〜)

「な!?別にあいつらの仲良くなったわけじゃねぇからな!……たまたま、この間 任務中に会っただけだ……」

「……」

(そんな、顔真っ赤にしなくても……)

少し違和感を感じていた。前回の任務の終わりごろ、あまりいい表情もしておらず、機嫌を損ねていたはずなのに、今回はそこそこ優しさを感じていた。


ウゥーンウゥーン

突如鳴り響くサイレン。

『ポート・セカンド・アベニューにおいて、ゲイルの出現を確認。直ちに巡回警備中の隊員は向かってください。繰り返します…』


「…!?。アドラー…!!」

「お前はここに残って市民の安全を守れ!」

そう言い残し、バイタルから武器を装備しゲイルが現れた方向に走っていった。

(市民を守れって…とりあえず、安全な場所に誘導するか…)


「ねぇ、あんた。アトラティカルの人間なんでしょ?何か動きなさいよ!」

「ぁ、すみません。直ぐに安全な場所まで誘導します。こちらです」



「ったく、数が多いな…ッ!」

(切っても切ってもキリがねぇ。)

ざっと、20体程度いるゲイル。なかなかこの数を1人で倒すのは、アイルも至難の業であった。

もう、すくならからずとも、30分は1人で50体以上もいたゲイルを1人で相手していた。


一方その頃……

「キャー。こっ、こっちにもゲイルがいるわ!!」

「おい!あんたアトラティカルだろ?は、早く行けよ!」

「何をぼさっとしているの!早く武器を出して戦いなさいよ!」


サキは、市民達を安全な場所に避難させるといっても、ゲイル出現場所よりもそこそこ遠い場所であり、本部からの情報では避難区域でもなかったため、特に対策をとることは、しなかった。いや、できないのであった。が、なんと3体のゲイルが現れた。そして、市民達に戦えと助けを求められているが、サキには記憶がないため、武器を装備することは可能だが、スナイパーとして戦う術がなかった。

(とりあえず、銃は装備したけど…)

スナイパーは、銃を構えると周りへの視界が狭まるため接近戦では、ほぼ、為す術がなかった。しかし、

(まぁ、死なないし…。とりあえず、撃ってみるか…)

市民たちの様々な感情を受け止め、膝を着く。


(構えて……撃つ………)




ダンッ


たった、0.4秒しかない音は、市民たちを静寂にさせた。

結果は見事命中。ゲイルは黒い煙を少し漂わせ消え去った。

(おわぉ、………当たった………)


グルルルル…ガゥ……

残り2体。1体は、3発ほど撃ち当たったが、もう1体は市民を狙ったため市民に当たるかもしれないという可能性が当たる確率を下げた。

「伏せてください」

しかし、狙われた市民は怖さ故に何も聞こえていなかった。

(クソ……あの人に当たってしまう。)


あの人に傷がつけば、間違いなく上層部に市民に傷を負わせたと報告が届き、もしかすると自身が記憶喪失であるとバレるか、はたまた実力不足か責任を負い除隊の可能性がある。

神経を研ぎ澄まし、膝をつき、銃を構えた____

市民が襲われている。同じ立場の市民が襲われていると脳が語っているであろう、市民達の声を耳に届かないぐらい速く、撃った。


だが_____

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