8、さようなら、王子様
いまや社交界の花形となり、学園でもアイドル的人気を誇るシャルロッテ。
その輝きは、焦燥するリューズ王子をさらに追い詰めていた。
マリリナは完全にシャルロッテに心酔し、「お姉様」と慕って離れようとしない。
失意のリューズは、美しくなったシャルロッテを再び自分の支配下に置き、あわよくばマリリナも取り戻そうと下衆な策略を練り始めた。
「シャルロッテが、なぜ急に変わったのか……あの白豚のことだ。どうせ裏があるに違いない!シャルロッテを再び従順な婚約者に戻してやらなくては!」
リューズは、側近の貴族令息たちを集めて密談を始めた。
側近たちはシャルロッテの急激な変化に驚きつつも憧れていたが、王子に忠誠を誓っているため、その策略に協力することを約束した。
リューズの策略は、シャルロッテに濡れ衣を着せ、彼女を陥れるというものだった。
シャルロッテが学園で人気を集めているのは、彼女が禁忌である闇の魔術を行って人々を洗脳しているからだという嘘の噂を流し、シャルロッテの評判を落とそうと画策したのだ。
ーーしかし、リューズの策略は、彼の予想をはるかに超える力によって阻まれることになった。
「なにやらくだらない噂を撒いているそうだが……暇なら鍛錬でもしてはいかがか?」
白豚令嬢を脱却してからのシャルロッテの美しさや努力、優しさを知った人々がリューズの側近たちが流した噂など信じるはずもなかった。
みんなでシャルロッテの評判を守ったのだ。
「シャルロッテ様はいつも優しい言葉をかけて私たちを気遣って下さいます!私達がシャルロッテ様をお慕いするこの気持ちが洗脳なわけないでしょう!」
「そうだそうだ!!そんな作り話をしてなんなんだコイツら……怪しいぞ!」
ーー結果としては、シャルロッテのあふれ出るスパダリ魔力が、リューズの策略を潰したことになる。
さらにシャルロッテは、リューズが下衆な策略を企てていることを察知し、逆にリューズを罠にはめることにした。
マリリナに演技を頼み、リューズに助言させたのだ。シャルロッテが闇の魔術を使った証拠を作ればいいと。
「以前の私の中身も見ずに白豚と罵っただけでは飽き足らず、見た目が変わっただけで婚約者に戻れとはなんて身勝手な男だ!」
そして、リューズが闇の魔道具をシャルロッテの学園のロッカーに入れて、彼女が闇の魔術を本当に使ったかのように捏造している現場を魔法で記録すると、それを国王に報告した。
国王は、リューズの非道な行為に激怒し、彼を厳しく罰すると約束してくれた。
リューズ王子の策略は失敗に終わり、彼はシャルロッテに完全に敗北した。
リューズは、シャルロッテの知性に圧倒され、自分の無力さを痛感した。
城の地下牢に捕らえられた彼は、今や美青年であった頃の面影もなくやつれて小汚くなっている。
鉄格子の前にシャルロッテが現れると、リューズは媚びるように縋るように彼女を見た。
「シャルロッテ、これからはお前を大切にするよ!仮にも婚約者じゃないか……」
ーーシャルロッテは、リューズを見下ろしながら、冷たく言い放った。
「あなたのような男に、私はもう興味がない」
シャルロッテの言葉は、リューズの心に深く突き刺さった。
リューズは心の醜さから、シャルロッテを失っただけでなく、自身のプライドも人生の全ても失ってしまった。
シャルロッテは、リューズに背を向け、新たな人生へと歩み始めた。