5、王子様はもう遅い
シャルロッテは、マリリナと親密になったことで、以前よりも穏やかな日々を送っていた。
秘術によって得た美貌と魔力は、シャルロッテの人生を大きく変えつつあった。
ーー周囲の人々はシャルロッテに魅了され、今やシャルロッテは社交界の花となっていた。
そんなシャルロッテの様子を、リューズ王子は複雑な思いで見つめていた。
以前は「悪役白豚令嬢」などとと蔑んでいたシャルロッテが、今や誰もが憧れる存在となっている。
リューズは、シャルロッテの変化に驚き、そして焦燥感を募らせていた。
「なぜだ……!なぜあの白豚シャルロッテがあんなにも美しく……?」
リューズは、自室で一人呟いた。
マリリナは、すっかりシャルロッテに夢中になり、もはやリューズのことなど眼中にない。
リューズは、シャルロッテに嫉妬し、そして後悔していた。シャルロッテを蔑ろにしてきたことを、今になって後悔していたのだ。
ある日、リューズ王子はシャルロッテを呼び出し、二人きりで話す機会を得た。
「シャルロッテ……お前、最近変わったようだな」
リューズは、シャルロッテを見つめながら言った。
シャルロッテは、リューズ王子の言葉に少しだけ微笑み、答えた。
「ははっ。少しだけ、な」
シャルロッテの言葉に、リューズ王子はさらに焦燥感を募らせた。
シャルロッテは、以前とはまるで別人のように美しく、そして自信に満ち溢れていた。
ーーあふれ出るスパダリパワーと魔力に、リューズは屈した。
「シャルロッテ……!以前のことは、本当に申し訳なかったと思っている。もう一度、やり直せないだろうか?」
リューズ王子はシャルロッテに謝罪し、復縁を申し出た。
シャルロッテは、リューズ王子の言葉に少しだけ驚き、そして冷淡に答えた。
「もう遅い。……あなたの言葉に一喜一憂していた悪役白豚令嬢は、もういない」
シャルロッテの言葉に、リューズは言葉を失った。
シャルロッテはリューズを深く傷つけたことを自覚していたが、自分の気持ちに嘘はつけなかった。
シャルロッテは、リューズに背を向け、歩き始めた。
「シャルロッテ……!!」
リューズは、シャルロッテの名前を叫んだが、シャルロッテは振り返らなかった。
シャルロッテは、リューズとの過去を断ち切り、新たな人生を歩み始める決意を固めていた。
リューズは、美しく去ってゆくシャルロッテの後ろ姿を見つめながら、深い後悔の念に苛まれた。
リューズはシャルロッテを失ったことで、初めて彼女の存在の大きさに気付いたのだった。
そして、シャルロッテへの未練に苦しみながら、今後のことを考え始めた……。