第4話 新しい婚約者
男爵ポルシェノール家の屋敷前にて、俺は頬を引き攣らせていた。
あれから実家に帰ってきた俺を出迎えていたのは、王都からの通達であった。
その通達によってまたも休む間もなく、俺の周りは大騒ぎだった。
計画的な婚約破棄。
さらに俺が実家に帰るまでに知らない婚約者ができる。
実家に帰る、新しい婚約者迎える準備。
これがこの世界の貴族社会ですか。人権もへったくれもありはしないな。
そうして正装を着込み、屋敷の前で頬を引き攣らせている現在に戻る。
「なんで……新しい婚約者が来るんだ……」
王都からの通達とは、新たな婚約者が決まった、とのことだった。
上からの通達。
これだけでも嫌な予感はしたが、どうやらユリミア……元婚約者の仕業ではないようだ。
そうなると、別勢力による嫌がらせか。
おかしい。
俺って婚約破棄されたばかりだよな。
「あの、俺、婚約破棄されたばっかりなんですけど? またあの激務の日々が待ってるの!?」
嫌、嫌だ……!
せっかく手に入れた休みなのに……もう終わるなんて……!
いや、正直そこまで深く嫌がっている訳ではない。
別にお互いに不干渉をしていれば、下手に相手を傷つけずにも済む。
「ユリミアみたいな感じじゃなければ、いいさ……」
ユリミアの幻聴が聞こえてくる。
『無能!』
『貧乏貴族が調子に乗らないでくれる?』
『消えて!今すぐに!!』
できれば仕事をしろ!休むな!と怒鳴りつけないでくれれば、正直に言うとどんな人でも気にしない。
あとは領民から武器を持って追いかけられないことかな……。
アレ、未だに夢に見る……本当に怖かった。
大衆の怒りほど恐ろしいものはない。王女であっても、民衆から処罰されることもあるらしいしな。
ガラガラと馬車が一台、俺の前で止まった。
その馬車はまるで、どこかから拾ってきたかのようなボロい物であった。
しかも戦闘の形跡があるのか、ところどころ傷ついている。
道中で野党にでも襲われたのだろうか。
それにしても、この前助けたアリスさんは無事に戻れただろうか。
一応安全を把握するまでは護衛したが、その後はあまり関わりたくないからと何も言わずに別れてしまった。
再会したら絶対に怒られるな。
でも安全な場所だからきっと大丈────アレ。
俺、この馬車……知ってるぞ?
馬車から銀髪の少女が降りてくる。
カツン、と音が響いた。
……あっ。
俺は顔を硬直させ、口を開けたまま少女を見つめる。
少女……いや、アリスがそこにはいた。
「またお会いしましたね……アミノ・ポルシェノール様」
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