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第11話 マカロン星人


 俺はその日、屋敷の増築に乗り出していた。

 

 雇った人たちが木材や建築を進めてくれる。


「アミノ様~、木材はこっちで良いですかい~?」

「はい! あっ、そっちの魔物の素材はアミノ研究室にお願いします」

「あいよー」


 今までは香辛料は研究室で作っていたが、売れる速度に対して生産が間に合っていなかった。

 そこでコツコツと自分で貯めた資金と、アミノ産ガーリックで得た利益を使って、さっそく生産所を増やすことにした。


「アミノ様。みなさんのお昼をご用意したのですが、いかがでしょうか」


 アリスが持ってきてくれたのは、手作りのおにぎりだった。


「ありがとうございます。じゃあ、お昼にしましょうか」


 時間もちょうど良く天気が良いこともあり、雇った人たちも集めて昼食にする。


「しかしまぁ……アミノ様のこと、聞いていた話と全然ちげえな!」

「だよな! ユリミア様が統治するテンペランド領での噂って嘘なんじゃないのか?」

「アハハ……」


 凄いズバズバと言われる……。

 ぐいぐいと来られるのは嫌いじゃないけど、本当にはっきりしている。


「やっぱりアミノ様の婚約者のお陰もあるだろうさ」

「私……ですか?」

「周りのみんなが言ってるぜ? アミノ様の婚約者は良く出来たお嫁さんだって」

「そ、そうですか……」


 アリスは少し照れた様子で、それでいて悪い気はしていなさそうに俯いた。


「あと常にマカロン食ってるから、マカロン星人って言われてるな」

「マカロン星人」


 え、マカロン星人!?

 アリスってマカロン星人って言われてるの!?


 そのあだ名から、本当にそうかと考える。

 

 まず朝食ではマカロンを食べている。

 昼は食べていないが、その後の休憩時間でマカロンを食べている。


 好物だとは知っていたが、本当にそんなに好きだったのか。


 実際、アリスはマカロンで釣れたしなぁ……。


 でもアリスの名誉にかけて、あまりそのあだ名が広まることは避けた方が良いな。


「あの……流石にマカロン星人は言い過ぎな気が……」


 そう言って顔をあげると、マカロンを咥えたアリスと目が合った。


 ま、マカロン食ってる……!

 現在進行形でマカロン食ってた!


 マカロン星人いたよ!

 

 そうしてパクッと飲み込むと、ゆっくりとマカロンの山を片付けた。


「おにぎりって美味しいですね」

「あの、アリス様マカロン食べてましたよね」

「いいえ~? おにぎりです」


 ……まぁ、そういうことにしておこう。彼女が食べていたのはマカロン型おにぎりだ。

 あまり深く追及したところで、【アリスはマカロン星人なのか?】の謎を追うだけになりそうだし。


 テレビ番組で特集が組めそうだな……見てみたいかもしれない。

 視聴者は確実に俺がいる。


「アミノ産を売ってる時も、影でバクバク食べてたって商人が話してたぜ」

「あーーーっ! やめてください! 私は糖分を取らないと人と話せないし、体力の消費が早いんです!」


 そんな特性があったとは……。

 確かに、アリスってかなり頭良いし、数字にもめちゃくちゃ強いから、そういう所でバランスを取っているのかもしれない。


 頭いい人って甘いもの好きのイメージあるし。


 でも、裏でバクバク食べていたとは……なんか想像すると、どんぐりを隠れて食べるリスみたいで可愛いな。


「言葉の暴力で訴えますよ!」

「マカロン星人でそんな訴えられても困るんだぜ……」


 やめて、落ち着いてアリス。

 秘密でもあるマカロンが好きな事がバレて恥ずかしいのは分かるけど、マカロン星人で訴訟を起こされたら流石の俺も恥ずかしい。


 マカロン星人の旦那って言われるのは嫌だよ、俺。


「お、落ち着いてください。また今度、王都の三ツ星マカロンあげますから……」


 流石にこれで黙るとは思えないが、機嫌くらいは……。


「……」


 黙った。


 本当にうちの嫁は、マカロン星人なのかもしれない……。


「わ……私だけ恥ずかしい思いをするのは、卑怯です。アミノ様も何かしら恥ずかしい思いをして欲しいです」

「えっ……」


 恥ずかしい思い?

 中学生の頃に好きだった女子から告白されたと思ったら、『好きな人と仲がいいアミノくんに、手伝って欲しい』って言われて絶望したこと?


 それとも、高校生で女子とデートしてたらのちにSNSで『一人で○○行ってきた笑』って写真を乗っけられてたこと!?


「ごふっ……」

「何も言ってないのにアミノ様がダメージを負われた!!」


 傷が抉られていく音がする……。

 あっ、塵になって消滅しそう……。

 

「アミノ様! お気をしっかり!」

「大丈夫……アリス様が居れば、俺は……」

「アミノ様……!」


 雇い主を眺め、昼食を取っていた彼らは呟く。


「こいつら……幸せそうだなぁ」

「めちゃ幸せそうっす!」


 ポルシェノール領に住むマカロンの民は、そう確信した。

 

そう思っていただけたら


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