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9.家

 結局、スライムに100回攻撃することになった。

 全て失敗に終わった。


「もう無理だよ」

「諦めたらいけないよ!」


 周りはすっかり暗くなった。

 もう家に帰る時間だ。


「家に帰ろうよ」

「スライムを撃破してからね」

「だから、もう無理なんだよ!」


 俺には剣がないと何もできない。


「仕方ないな。今日の訓練は終わりにするよ」

「やった!」


 嬉しさのあまり、飛び跳ねてしまった。


「それじゃ、私の家に行こうか」


 異性の家に行くなんて、なんだかエッチな展開が起きそうだ。


――――


「私の家だよ」


 暗くて外観は全くわからない。


「どう? オシャレな家でしょ?」

「暗いから見えないよ」

「目を細めたら見えるんじゃない?」

「見えない」

「なら、心が汚いのかもね」


 暗くて見えないのは、心が綺麗やら汚いやら以前の話だぞ。


「アイリアは見えるのか?」

「見えるよ。カラフルな色彩で、まるでお菓子の家のようだよ」


 幻想が見えてるね。


「なら、中紹介するね」



 家の中に入った。

 いたって普通の家だ。


「まず、キッチンを紹介するね」


 最初にキッチン紹介とは、中々に変な紹介方法だな。



 キッチンに着いた。


 キッチンとダイニングとリビングが同じ部屋にあるそうだ。


「どう?」


 キッチンには食料収容棚と包丁とまな板があり、ダイニングには食卓があり、リビングには椅子がある。


「普通だね」

「もっと褒めてよ」 


 褒めてほしいのか。

 褒めろと言われても、褒める部分がないんだよな……


「し、食卓が大きいのがすごいな」


 食卓は二人座る分しかない。

 決して大きくないが、褒める部分がないため、仕方がない。

 

「そうだよね。他には?」

「い、椅子が二つもあるところ」


 至って普通だが、褒める部分がないため、仕方がない。

  

「うんうん。他には?」

「もうないかな」

「少ないな」


 至って普通の中で二つも褒めたんだから十分だろう。


「包丁があるところとか、まな板があるところとかも褒めてほしかったな」

「それは褒める以前の話だよ」


 包丁とまな板はどの家庭にでもあるよ。

 まだ、色や形なら苦しみしながらも褒めれそうだけど。


「なら、次はお風呂紹介するね」


――――


 家の全ての部屋を確認した。

 どの部屋も普通だった。


「汗かいたからお風呂入りたい」

「湯船にも浸かる?」

「もちろん」

「なら、私が先に入るね」


 アイリアは一番風呂派か。

 俺は二番風呂派なので、ちょうどいいな。


――――


 お風呂も入ったことだし、寝ることにする。

 ということで、おやすみ。


「ちょっといい?」


 アイリアが部屋のドアを開けて入ってきた。


「何?」

「ちょっと聞きたいことがあるの」


 聞きたいことか。

 なんだろう。

 エッチのお誘いかな?


 アイリアはベッドに座った。


「レンって元々どれくらい強かったの?」

「攻撃力がSで、500000ゴールドの剣を使ってたよ」


 アイリアは驚いた表情をした。


「すごいね」


 まあ、努力の結晶だろうからな。


「聞きたいことってそれだけ?」

「うん。そうだよ」


 アイリアは立ち上がった。


「おやすみ」

「おやすみ」


 アイリアは優しい笑みを浮かべ、部屋から出ていった。


 正直、可愛い。

 けど、恋愛対象になるような気がしない。

 エッチの対象にはなるが。

 中二病苦手は克服したんだけどな……



 眠ろうと思うと同時に、500000ゴールドの剣を思い出してしまう。

 黄金で巨大で斬れ味の良い剣……


 スメルやカソマルより強くなって再び会ったときは、ざまぁしてやろうと思う。

 ざまぁとはいっても、スルメとカソマルが大事にしている剣を真っ二つにして、修復不能状態にするだけだが。


 二人の剣はせいぜい10000ゴールドだと思う。

 それくらいなら、失望感は少ないはずだ。


 二人にざまぁすることよりも、俺を追放するよう命令したやつをざまぁすることに徹した方がよい。

 二人は親友以上の関係だったからな。

 正直、ざまぁする気なんかない。


 命令した相手は、最強の名を持っているやつだろう。

 でなければ、もしバレたときに戦闘をしたとしても、絶対に勝てないからな。

 俺と張り合える相手……考えても思いつくわけがないか。

 

 今日はもう寝よう。

 剣のことは忘れて、ミクルちゃんのエッチな夢を見よう。ではなくて、健全な夢を見て眠ろう。


――――


 朝食の時間になった。

 

 俺の食卓には、水が注がれたコップが一つ。

 反対側のアイリアの食卓には、牛肉、豚肉、鶏肉のステーキがそれぞれ二枚。

 ステーキは早朝に焚き火で焼いたらしい。


 アイリアは牛肉のステーキを口いっぱいに頬張った。

 アイリアは笑みを浮かべている。


 朝から飯テロはキツいよ。

 せめて、深夜からにしてくれ。


「もう一回聞くけど、俺の食事はこれだけ?」

「ムムムムム」

「飲み込んでから話してくれ」


 アイリアは飲み込んだ。


「そうだよ」


 俺の朝食は水のみらしい。

 俺とアイリアの食事の格差が大きすぎる。


「二枚食べているけど、そのうち一枚は俺のなんじゃない?」

「私のだよ。レンの分はないよ」


 そうだとしても、分けてあげるのが普通だと思うのだが。


 指をチュパチュパしたら分けてくれないかな?

 指をチュパチュパした。


「指美味しい?」

「美味しくないよ」

「なら、なんで食べてるの?」

「食事が水しかないから」

「そうなんだ」


 アイリアは豚肉のステーキを口いっぱいに頬張った。


 一口もくれないのか……

 優しさが全くないな!


「せめて、一口くれない?」

「うーん……嫌だ」

「そこをなんとか」

「無理」


 無理まで言われちゃったよ。


 アイリアは鶏肉のステーキを口いっぱいに頬張った。

 満面の笑みを浮かべている。


 耐えられなくなりそうだ。

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