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6.冒険証 前編

 スーハー


 深呼吸をした。


「落ち着いた?」

「ちょっとだけ」


 あの後、ギルドから追放された。

 そして、アイリアと一緒に、ギルドの近くにある噴水へ行った。

 一緒というよりかは、アイリアが俺についてきた、という形の方が自然だな。


「なーんで涙流してたの?」


 アイリアも俺が失恋する姿を見ていたのか。


「失恋したからだよ」

「そんなの忘れて、次の恋を探せばいいじゃん」

「六年間も恋してたんだぞ」

「六年か」


 アイリアは暗い表情になった。


「でも、六年は短いし、また探せばいいでしょ」


 アイリアは一気に明るい表情になった。

 アイリアは慰めようとしているようだ。

 出会って数時間の相手を慰めようとするなんて、優しいな。

 まあ、慰められてもパーティーには入らないが。


「ありがとう。それじゃ、俺は疲れたから家に帰るね」

「レンって家ないんじゃないん?」


 家に帰るという言葉は、アイリアと別れるために言っただけ。

 なので、本当に家に帰ろうということで言ったのではない。

 いや、家には帰りたいよ。でも、カソマルから無償で借りていた家に帰るのは無理だから……


 ……なんでアイリアは俺が家なしって知ってるんだ。


「家なしってよくわかったね」

「そりゃ、さっきまで白パンツ一丁だったからね」


 白パンツ一丁って、ある意味偉大だな。


「家が無いんだから、帰る場所はないでしょ?」

「ないけど、草原に行けば寝ることはできるはず」


 家が無い。金も無い。

 つまり、当分はホームレス生活をしなければならない。

 異世界でホームレス生活か。

 なんだか虚しいな。


「この時期は寒いんだから、草原で寝るなんて無理だよ」

「無理だとしても、そうするしかない」

「なら、私の家に来て」


 私の家に来てなんて、もしかして俺のことが好き?

 という冗談は程々にして、どうするか考えよう。

 

 アイリアの家に行く条件に、なんとか最強パーティーに入る必要があるかどうかで、アイリアの家に行くかが決まる。


「アイリアのパーティーに入らないと家に来れない、ということはないよね?」

「あるよ」


 なら、草原でぐっすりと眠るしかないな。


「アイリアの家に行くのは拒否しとく」

「来てよ」


 アイリアは俺の裾を掴んだ。

 そんなに俺が家に来てほしいのか。

 もしかして、本当に好きだと……

 童貞の考えは捨てろ。裾を掴まれただけで好意感を抱いていると思うな。

 あと、普通に好意感を抱いてほしくない。

 

「パーティーに入りたくない」

「なら、パーティーに入らなくてもいいから来て」


 パーティーに入らなくてもよいだと!

 それなら、喜んでアイリアの家に突撃します。


「わかった。なら、家を教えて」

「その前にレンの冒険証を作りたいな」


 冒険証か。

 そういえば、剣と一緒に失っていたな。

 もう一度作り直さないといけないな。 


「作りにいこうか」

「そうだね」


 アイリアは俺の腕を掴み、引きずるように連れて行った。

 


 つい数分前に滞在していたギルドの扉の前に着いた。


「俺はこのギルドで冒険証を作りたくないんだ」

「いいじゃん」


 アイリアは俺の腕を掴んだ。


「行くよ」

「ちょっと待って」

「待たないよ」

「待って、待ってくれ!」


 アイリアは俺を引きずるようにギルドへ歩いていく。


 まだギルドに元パーティーメンバーがいる可能性が高い。

 あんなに暴れた後に出会うなんて無理だ。


「お願い! お願いだから!」

「行くよ」 

 

 ズルズルとギルドに連れられた。


 ギルドの中に元メンバーの姿は確認できなかった。

 次、元メンバーと出会っていたら、頭から湯気が出ていたと思うのでよかった。


「なら、作ろうか」

「うん」


 一番手前の受付には、青髪ショートで小動物のような可愛さを持っている女性がいた。

 その隣の受付には、金髪ミディアムで派手派手しい男性がいた。

 その隣の受付には、黒髪ショートの爽やかな男性がいた。


「冒険証を作りたいんですけど」


 四つある受付のうち、一番奥の受付に行った。

 受付の人は、黒髪ロングで色気のある美女お姉さんだった。

 俺の好みは三つある。黒髪ロング、色気、お姉さん。

 俺の好みを全て満たしている。

 ということで、結婚を前提にエッチをしましょう。


「わかりました。それならばこの紙に情報をお書きください」


 受付の人は紙とペンを差し出した。

 紙には名前や年齢などの個人情報の記入欄がある。


 アイリアは記入を始めた。


「年齢っていくつ?」


 俺の代わりに記入してくれてるのか。

 ありがたいけど、通常なら自分で書くよな。


「俺が自分で書くよ」

「大丈夫。私が書くから。年齢教えて」


 アイリアに記入を任せるか。

 

「20歳だよ」

「私の二つ上なんだね」


 アイリアは18歳なのか。

 俺の視覚がお姉さんと判定したため、俺よりも年上だと思っていたが勘違いだった。

 俺の視覚は改善の余地があるようだ。

 ……いつかは衣服が透明に見える視覚になりたいな。


「はい、書き終わりました」


 アイリアは受付の人に記入した紙を差し出した。


「ありがとうございます。

 今から作成しますので、少々お待ちください」


 受付の人は奥の扉へ入っていった。


 これから冒険証がやってくる。

 ほんの少しワクワクする。

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