5.ギルド
吹っ切れたので、最後にやりたい放題やろうと思う。
「ミクルちゃんに用があるんだけど、手伝ってくれない?」
「追放したんだから出ていって
「最後なんだからさ」
「……わかったよ。で、何をすればいいの?」
「俺が逃げ出さないようにしてくれ」
俺の用とは、ミクルちゃんに告白をすることだ。
ミクルちゃんのことをヒロインにして早六年。一度も告白できていない。
何度も告白しようとデートに誘ったことはあった。しかし、告白できずに終える日々だった。
俺は追放されるんだ。
もう告白するチャンスはないんだ。
なら、今するしかない。
俺はヒロインとイチャイチャラブラブをする夢を叶えるんだ。
「逃げ出さないでくれって、レンの手足を掴めばいいの?」
「いや、俺のすぐ近くにいて、逃げ出しそうになったら手足を掴んでくれ」
今回こそは逃げ出してはいけない。
俺は深呼吸をした。
心が落ち着いたので、クルミちゃんのところへ行く。
「何をするの?」
「告白だよ」
「誰に?」
「クルミちゃんだよ」
「あ、ああ、そうなんだね」
カソマルは俺から目を逸らした。
どうしたんだ? クルミちゃんのことで何かあるのか?
クルミちゃんは端の机で水を飲んでいた。
水を飲んでいる姿も可愛い。結婚したい。
「な、なら、頑張れよ。応援してるよ」
カソマルの目が極限に泳いでいる。
不安しか持てなくなったんですけど……
でも、頑張るしかない。
「あ、あの、クルミちゃん」
クルミちゃんは俺の方を向いた。
クルミちゃんは笑顔だった。
可愛くて仕方がない。
「単刀直入ですが、あ、あの」
その後の言葉が出ない。
好きです、と言わなければならない。
言え、言ってくれ! 言わないと一生後悔するんだぞ!
言わないと一生輝く財宝が見れなくなる……ではないぞ!
とりあえず、落ち着け。
一旦深呼吸をしよう。
スーハー
よし、気持ちが落ち着いた。
好き、と言うぞ。
「クルミちゃんのことが好きでした! 付き合ってください!」
ついに言えた。
よくやったぞレン。
お前は今最高に輝いている。
「え!」
クルミちゃんは驚いた表情をした。
これは……告白成功の可能性が高いぞ!
「ありがとう」
ありがとうだってよ!
告白成功ってことだな!
「なら、早速デートをしよう」
「でも、私既に付き合ってる人がいて……」
よし、ならデート場所はラブホテル、って、え?
「嬉しいけど……ごめんなさい」
お願い、嘘と言って。
嘘って言ってくれないと俺は生きれない。
「本当なの?」
「本当だよ」
そうだよね。
ミクルちゃんが嘘はつかないよね。
あああああ! もうダメだ!
「今更だけど、お付き合いおめでとう」
「今更じゃないよ。昨日付き合ったから」
昨日だと……一日遅れたということか。
まあ、それが人生だよね。
アハハ。
「涙が溢れ出てるけど大丈夫?」
カソマルが心配をしてきた。
「気のせいだよ」
俺は嫉妬涙なんぞ流さないぞ。
「鼻からも涙が溢れ出てるけど」
「気のせいだよ」
俺は鼻からも涙は流さないぞ。
「口からも涙が溢れ出てるけど」
「さすがに気のせいだろ」
口からは絶対に流さないぞ。
「ちなみに、その彼氏って誰?」
一応聞いておく。一応だ。
決して恨んだり憎んだり、カンチョーをしたりはしない。
「スルメだよ」
ああ、スルメか。
まあ、スルメは優しいもんな。
どんなときも他人思いで、自分が危機的状況のときも他人を助けに行くもんな。
というか、ミクルちゃんの部屋でスルメのパンツを獲得したのは、ミクルちゃんと付き合っていたからだったのか。
スルメでよかった。
ミクルちゃんと一緒に幸せな暮らしをしてくれ。
……こんちくしょう。
「クルミちゃん、最後に俺のお願い聞いてくれない?」
「何?」
「パンツください」
クルミちゃんは困惑した様子を見せた。
ごめん。けど、もう俺は耐えられないんだ。
大切にしていた剣は捨てられて、ヒロインは奪われる。
こんなことが起きたら、最後は滅茶苦茶にしたいと思ってしまう。
「お願い! くれ!」
カソマルが俺の両手を掴んだ。
そして、扉の方へと連れて行こうとした。
「俺は逃げ出してないぞ! 掴む必要はない!」
「違う意味で逃げ出してるから掴んだよ」
「離してくれ!」
「無理」
「離せ! 離せえええ!」
誰も暴走した俺を止めることはできない。
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