4.再会
俺は三人の目の前に行った。
そして、土下座をした。
「もう一度、パーティーに戻してください!」
大声で叫んだ。
元Sランクパーティーのリーダーが、元メンバーにパンツ一丁状態で土下座をする。
こんな光景は現実どころかアニメでも見たことないだろう。
追放してきたメンバーに土下座をする必要はない、と思うかもしれない。
俺もそう思う。
でも、物事というものは何事でも楽に解決したいと思う。
そんなときに、土下座という便利なアイテムがある。
土下座をすれば、何事でも許してくれる。
土下座をすれば、何事でも受け入れてくれる。
土下座をすれば、女性のパンツは見える。
ミニスカだと特に見えやすい。
この言葉を、偉大な父は残してくださった。
亡くなったように扱われているが、多分亡くなってないぞ。
俺が生まれた際に20歳で、俺が前世で亡くなった際は33歳。それから七年だから、40歳なはずだ。
異世界と地球の時間軸は一緒ではないかもしれないが。
まあ、四十路ジジイの可能性が高いということだな。
とりあえず、土下座は偉大だ。
なので、それを実演している。
「ごめんけど、無理」
スルメは堂々とした態度をしながら言った。
無理だと……
七年も一緒に過ごしてきたのにか?
「俺との思い出を忘れたのか?」
「忘れてないよ……」
「なら、言ってみろよ!」
「川や山のから落とされたこととか、大切なプリンを奪いやがったこととか、パンツを盗まれたこととか、これは俺の話じゃないけど、ミクルちゃんが着替え中に部屋に突入
「思い出は十分に伝わったからもういいよ」
まるで俺が悪役のような言い方をしているな。
全て理由があるのに。
まず、川と山に関してはスルメの不注意で落ちたんだ。
俺が押したり、触ったり、殴ったりしたわけではない。
プリンに関しては、ミクルちゃんが気づかずに食べていたという話だったじゃないか。
パンツに関しては……俺のことだな。
でも、ミクルちゃんのパンツを奪おうとしただけなんだ。
スルメが俺を悪役に仕立てる必要はない。
……スルメは盗まれていたことに気づいていたんだな。
着替え突入? なにそれおいしいの?
「良い思い出はないの?」
「良い思い出か。餅を一つくれたことかな」
「他には」
「うーん……ないな」
この七年で俺は餅一つしかあげなかったのか?
そんなはずはないんだが……
「何もしてないリーダーだったから追放したのか?」
「そうではないよ……」
スルメは暗い表情をした。
「ならなんで?」
スルメは明るい表情になった。
「ミクルちゃんのパンツを覗いてたか
「アハハ、お、面白いね!」
ミクルちゃんがいる前で言うな!
俺がミクルちゃんに嫌われるだろう!
「とりあえず、追放理由は他のやつに聞くね」
「カソマルも俺と同じ理由だと
「ミクルちゃんに聞くね」
七年のパーティー生活は幻だったのかな?
「なんで俺を追放したの」
ミクルちゃんの方を向き、聞いた。
ミクルちゃんはモゾモゾとしていた。
やはり、うちのパーティーのヒロイン兼俺のヒロインだ。可愛すぎる。
ミクルちゃんは正直なので、追放理由を聞けるだろう。
「……追放しろって言われた」
スルメが焦るようにミクルちゃんの口を抑えた。
「パンツ覗かれたって言えよ!」
スルメは必死な形相で言った。
必死になりながらパンティーの話をするなんて、もしやスルメは隠れパンティー好きだったのか?
スルメは真面目なやつだと思ってたが……
「本当の理由は言っちゃいけないんだよ!」
スルメが隠れパンティー好きという話ではなさそうだ。
追放した理由を言えないのか。
どんな悪行を企んで……というパターンではなさそうだ。
ミクルちゃんの言っている感じだと、裏に誰かがいて、そいつに指示をされて追放したような形だな。
「とりあえず、僕が追放するよ」
カソマルがギルドの端に置いていた剣を持ってきて、俺の方に向けた。
剣と俺の距離は三センチほどだ。
鋭い刃が目の前に現れた。
これほど恐怖なことはない。
「な、何をするのかな?」
「お前をパーティーから追放する。
今回は容赦しない」
威圧ながらに言うが、目が泳いでいる。
そんな姿を見ていると、安堵してしまった。
「剣を戻してくれ」
「お前を追放するんだ。この剣を戻す気はない」
目が極限まで泳いでいる。
剣もブルブルと震えている。
無理する必要はないんだよ。
「剣を戻した方がいいぞ」
「いや、戻さない」
「戻そうよ」
「戻さない」
「戻せ」
「戻さない」
中々戻してくれない。
こんな近距離に剣があるのは恐怖なので、早く戻してほしい。
「本当に戻してくれ」
「それなら、今すぐこのギルドから出ていってくれ」
「出ていかなかったらどうなる?」
「そりゃ、この剣をお前に刺す……」
カソマルは苦しそうな表情をした。
明るい表情をしなくてよかった。
餅一つしか思い出に残っていないスルメなら刺していたかも……スルメは優しいからあり得ないか。
「わかったよ、出ていくよ。でも、追放する理由だけは教えてほしいな」
「追放理由はミクルちゃんのパンツを覗いたって
「本当の理由を教えてくれ」
「本当の理由を言ってるんだよ」
ミクルちゃんのパンティーを覗いただけで追放されるわけがないだろう!
第一、ミクルちゃんは覗かれることを嫌がってないぞ!
……単に覗かれたことに気づいてないだけか。
「なら、追放を命令した人の名前を教えてくれ」
「そんなやつはいない!」
カソマルは目が極限に泳いでいる。
裏に誰かいることは確定のようだ。
本当にそんなやつがいるのか? と思うかもしれない。しかし、俺は世界最強だ。
最強の中では、俺を認知しているやつもいるだろう。
裏のやつを聞き出すことはできなさそうなので、諦めてギルドから出ていくしかないか。
さっきギルドから出た際に取り忘れていたバッグを持ってから出ていくか。
バッグを置いていたギルドの隅を見た。
……俺のバッグが無くなっている。
バッグの中には、剣や冒険証やスルメのパンツが入っている。
「バッグがない……」
「あ、バッグはさっき川に捨ててきたよ」
カソマルが衝撃の発言をした。
「え? 嘘だよね?」
「本当だよ」
「嘘って言ってくれよ」
「本当だよ」
何してくれてんだよ、捨てたやつ!
誰だよ捨てたやつ!
……まさかカソマルが捨てたわけではないよね?
「ちなみに、捨てたのは誰?」
「俺とスルメだよ」
お前ら二人かよ!
「ちなみに、バッグの中に剣が入っていたことは知ってた?」
「もちろん」
もちろんじゃねえよ!
カソマルとスルメには、剣は500000ゴールドしたって何度も言ったよな?
クルミちゃんには自慢男と思われたくなかったので、言わなかった。
500000ゴールドは前世の価格で5億円。
盾やら美味しそうな高級食材やらクルミちゃんのパンティーやらを購入するのを我慢し、貯金をして買ったんだぞ。
そんな大切な剣を捨てられるなんて……
今ならソシャゲで5億円課金したのに、データが消えた人の気持ちがわかる。
「ちなみに、どこに捨てた?」
「川」
草原ならまだ取り戻せると思ったが、川なら無理だな。
ああ、俺の今までの努力が全て水の泡に。
「ちなみに、『実はドッキリでした』だったりしない?」
「しないよ」
ドッキリであってくれよ……
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