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命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第2部 「教会送り」追求編

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87話 仲間とはぐれる

 トゥラクの門はあっけなく開いた。

エインシェントオーク達のパワー連続攻撃により、

土砂が崩れるようにガラガラと音を立てて道を作った。


 そして、眼前には武装した司祭と冒険者、騎士の集団。ざっと見ても30はいるだろう。

 リーダーらしき司祭が1歩前に出ると意気揚々と俺達を指差す。


 「やはり来たな!犯罪者達よ!しかも、モンスターまで引き連れてくるとは!」

 

 「…………」


 (ぐうの音も出ねぇ……)


 いきなりモンスターのことを突っ込まれて、黙り込むしかなかった。

 あんな様子では、いくら俺達が連れていたわけじゃないと言っても信じてくれないだろう。

 すると、フローが声を張り上げる。


 「仕方ないじゃない!勝手についてきちゃったのよ!」


 「ほう?誰もケガせずにか?さしずめ、そこのヒーラーが操っているのではないのか?」


 「わ、私はそこまで高度な魔法は扱えません!」


 指を差されて慌てたように答えたアリーシャを見ると、司祭はニヤリと口角を上げた。

彼だけを見ていると、まるで向こうが悪人のようだ。


 「ふん、まぁそんなことはどうでも良い。我等がここを通すと思うな!

捕まえて教会に――」


 「邪魔」


 司祭の言葉はオークの陰から飛び出したデュークさんの一撃によってかき消された。

 みぞおちに一発。司祭は簡単に地面に倒れてしまう。

 その直後、群衆からざわめきが上がった。


 「げ!?魔族!?」


 「しかも幹部のデュークじゃないか!?」


 「魔族まで連れてくるなんて、大犯罪者だ!」


 「おいおい、変な勘違いするなよー。俺は別の目的があって来たんだから、コイツラと一緒にしないでもらえる?」


 デュークさんに睨まれて、集団が後ずさる。でも武器はしっかりと握っていて、戦う意志はあるみたいだ。 


 (俺達とは無関係だってことを示してくれた!?)


 思わずデュークさんを見ると、清々しい笑みを浮かべる。


 「あ、そうそう。アンタらも俺の邪魔するなら容赦しねぇからな。

  よし、じゃあ暴れてきな!!」

  

 デュークさんの号令でワイバーンとオークは建物を中心に破壊し始めた。命令した本人もニヤニヤと不気味に笑いながら、走り去ってゆく。

 中に居た人々が慌てた様子で飛び出し、外の状態に悲鳴を上げたり立ち止まったりしていた。


 「な!?」


 「おい、町の被害を抑えるぞ!」


 「それと一般民の誘導もだ!急げ!」


 集団はそれぞれの目的を果たすために散り散りになってしまう。

残ったのは半分ほどになってしまった。


 「いい具合に減ったわね。皆、集まって!」


 フローの呼びかけに応じると、彼女は呪文を唱えて俺達を覆うように赤い炎の壁を造った。円を描くように渦巻いている。

 どう見ても熱そうなのに、俺達は熱さを感じなかった


 「炎の球体(フレイムスフィア)よ。走ることにはなるけど、あんまり戦わなくて済むわ。

 さぁ。火傷したくないなら退きなさい!!」

 

 突如現れた灼熱の球体に、集団は喚きながら道を開けていく。数人は攻撃しようと武器を振るおうとするが、熱さに耐えきれず悔しそうに歯を食いしばっている。 


 「やっぱ命の方が大事なのか……」


 「そりゃあ誰だって大火傷して死になくないでしょ。

明らかに敵ならともかく、一応同族なんだから」


 「なんか申し訳ないな……」


 ザルドが盾を構えながら呟く。

 アリーシャは感心したように回転する炎を見つめながら言った。


 「この状態で大聖堂を探さないといけませんね……。

少し炎で見づらいですけど」


 「なら、魔法消すわよ?」 


 「ご、ごめんなさい。悪気はないので、消さないでください」


 「はいはい。冗談だから気にしないでよ」


 少しだけ声を柔らかくして言ったフローにアリーシャは安堵していた。


 しかし、町の半分ほどまで進んだところで水魔法が飛んできて、炎の壁が煙をあげて消える。


 「やっぱり、そう簡単にはいかないわよね……」


 魔法を消されたフローは歯ぎしりしなが呟いた。


 「当然だ!こちらにも魔法部隊はいる!」


 前方に姿を現した若い男の魔法使いが堂々と言い放つ。

彼の後にもゾロゾロと集団が出来ていて、門の近くの時よりも数が多そうだ。


 「今ここで降参するなら、攻撃はしない。乗り込んできた勇気は認めるが、無駄死にしたくないだろう?」


 彼の言葉に思わず皆で顔を見合わせる。


 「……するか?」


 「なわけないでしょ!ここまできて諦められないわ!」


 「それに捕まったら終わりです。進みましょう」


 「よし、じゃあ俺が盾持ってガードするから、皆は無力化を頼むぞ」


 大きく頷き合うと、一斉に武器を構えた。

魔法使いの男が大きく目を見開く。 


 「バカな。自ら死地に飛び込むつもりか!?」

 

 「町に入った時から飛び込んでるわよ!」


 でも双方誰も攻撃をしようとしない。後々の証拠になるため、控えているのだろう。ピリピリとした緊張感だけが走る。


 その時だった。


 「グオオオォ!!」


 5体のエインシェントオークが雄叫びをあげながら、こちらに突進してきたのだ。ある程度建物に被害を与えて、こちらの建物に目標を定めたのだろう。 


 「はい?」

 

 「え?」


 俺達も固まるしかなかった。

いくら魔王の暗示があるとはいえ、オーク達から見れば俺達は石ころ。

人間に狙いを定めているわけではないようだが、とても敵味方の区別がついているようには見えない。


 「とりあえず端に移動するわよ!」


 フローの叫び声にに慌てて従う。


 オーク達との距離が短くなってくる度に地面が大きく揺れた。

 相手の部隊はオーク達を最優先と判断したのか、武器や魔法を放っている。

それに何体かは足止めされたが、あまり気にしていないように前進していた。


 「ボーっと突っ立つな!踏みつぶされるぞ!」


 どこかから上がった声に弾かれ、一斉に撤退しだした。

目の前に指名手配の相手がいるにもかかわらないみたいだ。中には、情けない悲鳴を上げながら背中を見せている者もいる。


 「この隙に俺達も進むぞ!」


 ザルドの提案で進み始めたのだが、オーク達の地響きで足元が揺れて上手く進めない。

幸い、相手は逃げることに集中しているようで誰も攻撃はしてこなかったが、オーク達の足は石畳を破壊し、周囲を砂や白煙に包んでいく。


 離れないように身を寄せ合っていたはずなのに、

気づいた時には俺は1人になっていた。

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