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命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第2章

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今までの経緯を振り返る

 翌朝、起床した俺は床にあぐらをかいて唸っていた。雑魚寝でまだ体が痛いのもあるが、エフォールにいろいろ聞きそびれてしまったのだ。


 「食料庫から少し食べ物分けてもらいたいのと、外に出るときの監視を頼もうかと思ってたんだけどな」


 前者はもちろん自分でも採るが、食料庫があるのならそこから少し貰おうかと考えたから。後者は単純に身の危険を感じているからだ。

 

 「昨日は明らかに危なかったし……。特に何かしてるわけでもないんだけど、デュークさんにとっては印象的なのか?」


 理由はハッキリしないにしろアブないのだけはわかる。

 大きく息を吐いてからボンヤリと天井を眺めた。考えないようにはしていても、どうしても「決戦」が頭をよぎる。


 「俺は……どうすべきなんだ?」


 しかしすでに魔王に「どちらにもつかない」と宣言してしまった。人間と魔族、どちらが負けそうになっても黙って見ておかないといけない。


 「でも選択は間違ってないはず。戦えと言われても戦えないしな。モンスター相手ならまだいいんだけど」


 我ながら呆れている。

 実をいうと最近モンスター相手も危うくなってきていた。勝手に数が増えているみたいなので俺が心配するようなことではないのだが、諸事情を考えてしまうのだ。 


 (よくよく考えればモンスター達も生きるのに必死なんだよな。しかも俺達のように復活システムなんてなくて倒されたら終わり。それが普通ではあるんだけど……)


 キリがないのは承知の上だが止まらない。 

 しかし、ここまで考えていてあることを思い出した。


 「デュークさんが起こしに来るんじゃね?」


 素早く立ち上がってドアから顔だけを出し様子を伺う。

幸い、誰の姿もなく足音も聞こえてこない。


 「よし、今のうちに出よう」


 周囲の様子を伺いつつ足音を立てないように慎重に移動する。とはいえ、デュークさんの気配を感じ取れなかったときがあったのであまり意味はないのかもしれないが、ひとまずは大丈夫そうだ。


 「どこか落ち着けそうな場所……」


 デュークさんに会う心配がなく、なおかつ人通りのない場所。必死に考えているとちょうどいい場所を閃いて手を叩く。

 

 「ドーワ族の工房の入り口付近なら大丈夫じゃないか?」 


 床が扉になっているしデュークさんも知らない。さっそく移動する。ついでにベッドができているかの確認もできるので、得した気分だ。

 先にベッドの確認に行くことにした。入口から様子を伺おうとすると小柄な人物と鉢合わせする。


 「あ、ネキ……」


 ネキはジロリと俺を見たあと無言で中を指さした。親方がそこにいると教えてくれたのだろう。


 「ありが――」


 しかし、お礼を言い終わる前にネキは外に出ていってしまった。何かすることでもあるのだろうか。工房に籠もりきりかと思っていたので少しビックリした。 

  

 (まだ怒ってるのか……。前みたいに完全にスルーされてないだけマシだけど) 


 「お、親方さーん」


 声をかけると休憩していたらしい親方が立ち上がってこちらに歩いてくる。 


 「よう。ベッドならまだだぞ。明日取りに来な」


 「あ、ありがとうございます……」


 (先に言われた。

 それにしても最初とだいぶ態度が変わったな。気を許してもらえているのか?)


 警戒しているだったのかもしれない。

 すると親方が思い出したように口を開いた。

 

 「そうそう、ネキへのミヤゲも忘れんなよ?楽しみにしてるみたいだからな」


 「わ、わかりました。

あの、しばらく入り口付近に居ていいですか?じっくり考え事したくて」


 「別に構わねぇけどよ、なんでだ?自分の部屋とかねぇのか?」

 

 「ありますけど、そこにいたら苦手な人と会ってしまう可能性があるので」 


 「ふーん、よくわからねぇけど大変だな。邪魔にはならないと思うが、道は譲ってくれよ?」


 「はい」


 返事をして親方と別れ、入り口付近に行くと大きなため息をつく。たった今の間だけで疲れてしまった。


 「さて、整理するか」


 呟いて、記憶を呼び起こす。


 (もともと俺は「教会送り」になりたくないから魔王に命乞いした) 


 あの戦いで初めて最後に残り、1人になった途端「教会送り」があるにも関わらず死の恐怖が襲ってきた。今までは何とも思ってなかったにも関わらずだ。

 それからどういうわけか命乞いが受け入れられ、俺は魔王の配下になった。


 「でも魔王にも何か考えがあるのは間違いない」


 命乞いをしてきたのは俺が初めてだったらしい。ほんの好奇心かもしれないが、用済みだと判断されれば「教会送り」にされるはずだ。


 「それからデュークさんが付いて、魔王に城内を連れ回されて――そういえば「教会送り」についてどう思ってるか聞かれたんだったな」


 2日目でいきなり尋ねられた。どう答えたらいいかわからないこともあり「便利なもの」と答えたのだが、「つまらん」と返されてしまったのだ。 


 「でもわざわざ聞くってことは何かあるんだよな?」

 

 魔王は何かを知っている。やっぱり「教会送り」と「墓地送り」についてだろうか。


 「よくよく考えれば「教会送り」と墓地送り」って似てるよな。名前もシステムも」


 そこまで考えてふと新たな疑問が出てきた。 

 

 「なんで俺は「死」を怖いと思ったんだ?」


 普通なら「教会送り」で町に戻されるだけなので怖いことなんてないはずだ。確かに意識を失うまで感覚はあるから痛いしキツいが、送られたら元通りなので何も心配はいらない。

 

 「もしかして「死」を怖いと思うことがおかしいのか?」


 「教会送り」のせいで老衰以外では人は完全に死ぬことはなくなった。

 生死観が狂っているといえばそうだと思う。


 「そもそも「教会送り」っていつからあるんだ?まさか人が誕生してからずっとってわけじゃないだろうし」


 少なくとも俺が物心ついたときにはあった。よく村の外に飛び出し、何度モンスターにやられて「教会送り」になるぞ、と言われたことか。


 「教会があるから村のみんなも「教会送り」があることはわかってたしなぁ。だからお年寄り以外は死ぬことを怖がってる人なんていなかった。

 「墓地送り」は魔族専用で生き返るのは一緒だけど……そうか!魂みたいなのが出るのは魔王に殺されたときだけだ!」


 デュークさんから聞いたのは魔王に殺された後のことだ。魔王以外に殺されたときはどうなるのかわからない。


 「もう1回デュークさんに聞いてみるか?いや、会うの怖いしやめとこう。

 となると、魔王に直接聞くしか……教えてくれんのかな」


 可能性はなくはないが、「教えるわけがなかろう、たわけ!」とボコられそうな気がする。

 どうするかしばらく考える必要がありそうだ。

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