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命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第2章

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意外な協力者と遭遇する

 呼吸を整えながらゴーレムを見上げた。全身の所々に鉱石が埋め込まれており、太陽光で白く輝いている。


 (エインシェントオークのリーダよりもデカくないか⁉)


 「コイツがプラティヌゴーレムかー。うん、ゴツそう」


 「でも鉱石をとるだけなん、でッ⁉」


 ゴーレムが振り下ろしてきた腕を慌てて避ける。全身が岩なので攻撃を1発くらうだけでも致命傷になり得るからだ。それに、他のモンスターのように鳴き声を上げないため感情が読みにくい。


 「モトユウちゃん、腕とか足とか至る所にある鉱石の一部分でも採れればいいんだよな?」


 「はい。とりあえず1回行ってきます!」


 持ってきておいたテナシテさんの強化薬を飲んでゴーレムに向かう。

右足めがけて剣を振ったが刃が少し岩に沈んだだけて止まった。ゴーレムにしてみればかすり傷だろう。


 (硬てぇ!)


 素早くゴーレムから離れてデュークさんの側に戻る。薬で強化しても斬れないということは、長期戦になるのは間違いない。


 「ヒハハッ、やっぱ斬れないよなー。じゃあ俺も行って――」


 デュークさんが走り出そうとした瞬間、再び地鳴りと岩が転がる音。剣を支えに踏ん張って周りを見ると、10体のゴーレムに囲まれていた。

やっぱり岩は全部ゴーレムだったようだ。デュークさんはその場に踏み止まると口を曲げる。


 「あ、コレ勝ち目ないわ」


 「え、じゃあ……」


 「ヒハハハッ!逃げるしかねーだろ!」


 言い終わらないうち俺を担いで走り出した。突然のことに戸惑いながらも後ろを見てみたが、ゴーレム達は微動だにしていない。追いかけてくる様子もなさそうだ。


 「離れるだけですよね?」


 「いや、1回帰る」


 (帰る⁉確かに10体は多いけど、なんとかできないか?) 


 急ぎの用事でないのだがベッドがないのは辛いし、なにより今から戻ってまた来るとなると手間がかかる。


 「多少はケガしてもいいので!やりましょう!」


 しかしデュークさんの返答はなくゴーレム達の隙間を縫うように移動し、そのまま岩場の入口まで走った。追われてきていないのを確認すると、俺を降ろしてその場に座り込む。


 「俺1人だったらやるけどさー、今はモトユウちゃんが一緒。あ、モトユウちゃんのこと不出来とか思ってるワケじゃないぜ〜?さすがにあの数のゴーレムを1度に相手できねーって話。どれか1体の腕か足を斬り落とせばいいんだろうけど、1体に集中するとしても残りの9体に気を配っていないといけないからな」


 「避けながらやるしかないですよね……。かすり傷しか与えられませんでしたけど、同じ箇所を攻撃し続ければ斬れるはずです」


 それぐらいしか方法が考えられない。デュークさんも珍しく黙っているし、案が思い浮かばないのだろう。


 「ンー、やっぱり魔法扱えるヤツ連れてくれば――」


 「アンタたち、こんなところで何してんの?」


 なんと空中からマルールが俺達を見ていた。偶然なのだろうが、俺達にとっては願ってもない遭遇だ。デュークさんも同じことを考えているようで、ニヤニヤしながら地に足をつけたマルールに声をかける。


 「お、マルールちゃん。ちょうどいいところにー。

ちょっと手伝ってくんないー?」


 「嫌。どうせロクなことじゃないんでしょ。そもそもニンゲンいるし!」


 紫の髪を振り乱して勢いよく俺を指さした。言っているそばからどんどん表情が険しくなっていく。あからさまにそのような態度をとられるとヘコむ。


 (やっぱ嫌われてるよな、コレ。でもどうにかして協力してもらわないと鉱石を採るのは難しいぞ)


 「ロクなことじゃないとは思うんで、話だけでも聞いてもらえませんか?」


 「断る!ルーだってヒマじゃないんだ!」


 「とか言いつつ、立ち止まってるのはなんで〜?」


 少しの間マルールは俺達を睨みつけていたが、ふと大きなため息をつくと口を開く。 


 「ま、まぁ急ぎでもないし、聞くだけ聞いてあげる」


 (なんだかんだで聞いてはくれるのか……助かった)


 複雑な気持ちで経緯を話し終えると同時にマルールがまた俺を指さした。

 

 「魔王様からの命令かと思えば、ニンゲンが勝手にやってるだけじゃん!なんでルーが手伝わなきゃいけないの!」


 「やっぱゴーレム相手じゃ物理は厳しいってことになってな〜」


 「ルーじゃなくてもヘルメイジとかモンスター借りてくればいいじゃん!」


 「今から頼みに行くのメンドクサイ」


 「じゃあまた出直せば⁉どーしても今日中にやらないといけないわけじゃないんでしょ!」


 (思ってたより真っ当なこと言うな、マルール。ちょっと感情に流されてるけど)


 てっきり感情まかせかと思っていたが、必ずしもそうではないらしい。


 「とにかく、ルーは手伝わない!あ、だからってねえさんに頼むなよ!もし頼んだら――」


 「あーあ、そりゃ残念だ。採取が終わったら食料集めしようと思ってたんだけどなー」


 デュークさんの言葉にマルールは口を開けたまま固まった。しかしそれも一瞬ですぐに反論する。


 「そ、それがどうしたんだ!ルーには関係ない!」


 「この辺、クリアシープがいるだろー?もし手伝ってくれたら、お礼にソイツの肉持って帰ってもらおうかと考えてたんだけどー」


 「ルーは、た、食べ物になんて釣られないからな!」


 マルールは強がってはいるものの明らかに動揺している。クリアシープの肉が好物らしい。


 (どうにかして説得させる気だ!)


 気持ちも揺らいできているので、俺も加勢することにした。


 「デュークさん、クリアシープの肉ってウマいんですか?」


 「おうよー。少し臭みはあるが脂がのっててな、焼きたてがウマいぜ〜」


 「へー。俺、まだ食べたことないんで一緒に獲りに行っていいですか?」


 「モチロン。よっし、なら、どうにか採取頑張りますかー!!」


 気合を入れて立ち上がるとマルールが顔を赤くしてヤケクソ気味に声をかけてくる。


 「お、おい!肉はどれぐらい持って帰っていいんだ⁉」


 「そりゃマルールちゃんが持って帰りたい分だけ。それぐらい獲るぜー?」


 デュークさんがニヤニヤしながら言うと、マルールはさらに顔を赤くして叫ぶ。


 「と、特別に手伝ってやる!感謝しろよ!ニンゲン!」


 「ありがとうございますっ!」


 「勘違いするなよ!別にお前の為じゃないからな!」


 (食べ物に釣られないとか言ってた割には、あっさり釣られたな)

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