表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/92

魔王の意図を知る

 魔王は気まずそうに目を閉じて俺達から顔をそらしていた。俺をボコったり無言で見下ろしたりしたときの威厳は

どこにいったのだろうか。 


(話全部聞かれてたのか⁉というか何からツッコんだらいいんだ⁉)


 何か言おうにもショックが大きすぎて言葉が出てこない。

 するとテナシテさんがクスクス笑いながら口を開く。


 「魔王様はモトユウさんが心配で仕方がないのですよ」 


 「は、はあ……って、テナシテさん聞いてても大丈夫なんですか?」


 「はい。全て伺ってますから」


 影のない普通の笑顔で言うテナシテさん。魔王も何も言わないし居ても大丈夫なのだろう。

  

 「でも心配って?俺をコキ使うつもりじゃなかったんですか?」


 「建前ですよ。だってモトユウさん、ほとんどコキ使われていないでしょう?」


 「そうですけど……」


 思い当たることならたくさんあるので心配だったと言われれば頷けるが、少しモヤモヤする。


 (だったら部屋に閉じ込めておけばよかったんじゃないのか?理由ならなんとでもなるし。俺は困るけど)


 「閉じ込めておこうとも考えたそうですが、無理だったみたいです」


 「って、テナシテさんが答えてますけど、いいんですか?」 


 魔王を見て言うと、俺から顔をそむけたまま頷いた。

本当に魔王なのかと疑うレベルだ。


 (俺何もしてねぇけど⁉)


 心の中で盛大にツッコむとテナシテさんが笑みを漏らす。

魔王が姿を現してからずっと笑っているし、機嫌がよさそうだ。何か特別な関係なのだろう。


 「最初に乞いましたよね?」


 「はい……」


 「その時点ですでにダメだったそうです」


 (なんだそりゃ⁉)


 もともと変だとは思っていたが魔王のイメージが一気に崩れた。

 ようやく魔王は俺に顔を向けると口を開く。


 「……乞いてきたヤツは初めてだと言ったな。……不覚にも

カワイイと思ってしまったのだ……」


 「はい⁉」


 「今まで勇ましい姿で剣を振るっていたかと思えば、いきなり頭を床に打ちつけて「配下にしてくれ」だと?

これをカワイイと言わずになんと言う⁉」


 (魔王にとっては可愛かったのか?土下座が⁉)


 屈辱的な行動に愛情を覚えるタイプなのだろうか。それに捨て身をカワイイと捉えられていたことにショックを受ける。


 「え、でも2日目に「教会送り」にしようとしましたよね?」


 「………あれは魔王のプライドと言うやつだ。

ま、まだよく知らぬニンゲンにデレデレするわけにもいくまい!」


 (でもあの殺気はマジだったよな……)


 思い出すだけでも鳥肌が立つ。あれが演技だとしたら、

うますぎる。


 「我が行動する前にデュークが必ず止めると信じていたからな。

もしデュークが止めなかったとしても外すつもりだった」


 「な、なら、俺の首を掴んだときは?」


 「あれは咄嗟の行動だ。……だから謝ったではないか」 


 (魔王らしくないとは思ってたけど、ここまで⁉)


 開いた口が塞がらない。そんな俺を見てもまったく気にしていない様子でテナシテさんが尋ねてきた。


 「失望しましたか?」


 「ビ、ビックリしてるだけです。その、魔王らしくないなとは思っていましたけど。

 あ!でも弱いって意味じゃないですよ⁉思ったより怖くないというか優しいというか……」


 慌てて弁解する。てっきり魔王とテナシテさんの機嫌を損ねると思っていたのに、2人は眉をひそめるわけでもなく表情すら変えていなかった。


 「お、怒らないんですか?」


 「自分の事ぐらいわかっておるわ。今の状況は周りに恵まれておるだけよ。

 ここで会ったついでだ。お前が見たという夢について聞いてやる」 


 (あ、そうだった)


 予定では明日の夜だったが、手間が省けるしちょうどいい。デュークさんやテナシテさんから聞いているとは思うが、念のため確認する。


 「全部聞いてますか?」

 

 「ああ。それでお前は暗示だと思っているらしいが、間違ってはいないだろう。

 我も胸騒ぎを覚えておる」


 「胸騒ぎ、ですか?」


 「何かしらの転機の際、胸騒ぎを覚えるようになってしまってな。期間は出来事の7日前から半年。

 お前が乞う時もな。7日前から胸騒ぎを覚えていた」


 (期間もバラバラなのか。しかもいつ起こるかわからない。俺なら毎日不安になる)


 長ければ半年もの間、不安を抱えながら過ごしていたのだろうか。魔王に少し同情する。 

 なんとも言えない気分に浸っていると魔王が話を続ける。


 「それで今回の事だが、おそらく、ニンゲン達が束で乗り込んでくるだろう」


 「束で⁉」


 何をどうしたらそのような考えが出てくるのかわからず、声が裏返った。

しかし思い当たることならある。ここ最近、城の外で冒険者パーティを見ていなかったのだ。

俺が来た頃は魔王が城内から吹き飛ばしたり、デュークさんが2パーティ連続で「教会送り」にしたりと、そこそこ乗り込んでこようとはしていた。

一斉に突入するために準備をしているのだとしたら納得がいく。確証があるわけではないが、そう思える。 


 「それに備えて準備をしているんですか?」


 「だから最も近い町を壊滅させただろう。すぐに立て直されても困るからな」


 「…………」


 (人間と魔族の戦いが始まろうとしているのか?

俺は…………どうしたらいいんだ?)


 少し俯く。今は中立的な立場だ。とてもワガママだが、

どちらかにつくことなんてできない。

 デュークさんからも、どうするか考えておいた方がいいと言われていたが、結局そのままになってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ