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命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第1部配下生活編 第1章 

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魔王からの仕事にチャレンジする

 今回も(改行除いて)3000字超えています。

 よろしくお願いします。


 翌朝、起床した俺は複雑な気分で自室に突っ立っていた。

 やっぱり白い世界の夢は見ていないし、魔王も叩き起こしに来ない。


 「なんなんだ、いったい……」


 期間限定だったのだろうか。魔王の方はそれで納得できても、夢の方はできない。

 

 (仲間達の夢なんて連日みないだろうし)


 何かしらの暗示だとは思っているが、考えてもキリがないので、ひとまず頭の端に押しやる。

 

 「今からでも始めないと間に合わないよな……」


 魔王から与えられた仕事だ。エインシェントオーク50体の討伐。頑張れば倒せるだろうが、3日以上かかるのは間違いない。

 

 (誰かに手伝ってもらうしか……。

となると、やっぱり――)


 「モ〜トユ〜ウちゃ〜ん、起きて――」


 (シメたッ!)


 俺は部屋に入ってこようとしているデュークさんの前に素早く移動した。グッドタイミングだったので、少しテンションが上がる。


 「ちょうどよかったです!」


 「オ?……オウ?」


 珍しく戸惑って瞬きを繰り返すデュークさんの目を

しっかりと見た。


 「いきなりどうしたよ?モトユウちゃん」


 「実はですね――」


 経緯を話すとデュークさんはどこかつまらなそうに

声を漏らす。


 「フーン、エインシェントオーク50体ねぇー。

しかも3日以内と」


 「厳しいですか?」


 「どうだろうなー。モトユウちゃんの実力による」


 「一撃では難しいですけど、何回か攻撃すればイケると思います」


 俺の言葉を聞くとデュークさんは表情を変えずに

頭の後ろで手を組んだ。


 「アイツら割と頭いいからな〜。相手が1人だって

わかったら、たいてい2体以上で来るから」


 (確かに……)


 前に対峙した時も2体いて、1体は背後から気づかれないように俺に近づいてきていた。それに突撃バッファローといい、この辺りのモンスターはそこそこ賢い。

 少し考えながら唸っているとデュークさんが口を開く。


 「ところでさー、マーさんは50体倒して来いって

言ったんだよな?」


 「はい……」


 「よっし、じゃあ俺も手伝おーっと」

 

 「え、いいんですか⁉」


 不安になって尋ねるとデュークさんが笑う。


 「だってマーさんは()()()()()()()1()()()とか、()()()()()()()()とは言ってないんだろ?」


 「そうですけど……、実は言い忘れててバレたらボコられるとかないですよね?」


 「ヒハハハハッ!本当に言い忘れてたなら、昨日の時点で言ってるはずだぜー。

 マーさん、モトユウちゃん1人じゃ厳しいってわかってるんだな」


 (……気遣い?そんなことしないほうが俺をボコれるのにな)


 今までの魔王の振る舞いからして理由としては足りているが、裏がありそうで怖い。


 「とりあえず外行こうぜー。

まず今の段階でどこまでいけるのか確認しないとなー」


 「俺1人でですか?」


 「おうよー。ヤバくなったら加勢する。

 あ、ちょっと待った」


 そう呟いてデュークさんは早足で俺の前に立つと、

いとも簡単に担ぎ上げる。


 「ちょっ⁉何――」


 「あ、これなら楽勝だわ~。ヒハハッ!」


 「はい⁉」


 そのまますぐに何事もなく降ろされた。

一瞬の出来事に固まっているとデュークさんがニヤニヤしながら言う。


 「またこの前みたいになったらモトユウちゃん担いで逃げようと思ってさ〜。これなら、ヨユーヨユー」


 「は、はぁ……」


 (明らかに俺よりデュークさんの方が足速いしな)


 先に話題に上げたのはデュークさんの方だが、続けたら殴られるのでスルーすることにした。


 (それに、この前、としか言ってないからな)


 「その時はよろしくお願いします……」


 「おう。じゃ、今度こそ行こうぜ〜」


 剣を腰から下げてデュークさんの後に続く。

 食料調達、討伐と、なんだかんだ連日荒れ地に来ている。荒れ地はとにかく広く、視界には一面ヒビ割れた土地。緑が全く見えない。

 

 「ほんと広いですね、ここ」


 「ヒハハハッ!冒険者共の勢い減らす為だろうな〜。

モンスターうじゃうじゃいるし」


 「確かに……」


 突撃バッファローやマッドネスウルフ、今回の目的のエインシェントオークなど、多くのモンスターが生息している。

 前回はたまたま会えたが、今回は時間がかかるかもしれない。

 

 (生息区域とか決まっていなさそうだしな……)


 ちなみに眼前にはボコボコと不自然に穴が空いている地面が広がっている。モンスターの影はない。


 「これだけ広いとオークを探すの大変なんじゃ――」


 「オーク見っけー!」


 「早い⁉」


 嘘かと思ったが、デュークさんが指さした方を見ると、かなり遠くで黒い粒が動いている。

 この辺りで黒い色のモンスターはエインシェントオークしかいないので、急いで移動する。

 向かっている途中で向こうも俺達に気づいた。

どうやら今は1体だけのようだ。

 

 (今のうちに仕留めないと!)


 素早く剣を構えてエンシェントオークの前に立つ。


 「オ゛オ゛ォッ‼」


 「でりゃあぁっ‼」


 振り下ろしてきた腕を避けて、斬りつける。

反動で少し右手が痺れた。


 (硬てぇ)


 突撃バッファローとは比にならないほどだ。石ころが跳ね返ったのも納得がいく。

 ノーダメージではなかったが、それでもかすりキズ程度だ。エインシェントオークは気にもしない様子で再び攻撃を仕掛けてくる。

 

 「オ゛オ゛オォ‼」


 「あぶねッ⁉」


 やっぱり俺1人では無理そうだ。何度も攻撃を避けながら、良い作戦がないか考える。


 (このままじゃ負ける。力が足りない!)


 「モトユウちゃーん、ちょっとこっち来てー」


 戦いの最中にもかかわらずデュークさんが手まねきしてきた。何を考えているのかわからないが、呼ばれたからには行くしかない。

 小走りで近づいた俺の胸ぐらをデュークさんが掴む。 


 (は?)


 「オラ、空の散歩してきな!モトユウちゃんッ!」


 そう聞こえたのとほぼ同時に体が浮いて空に投げ出された。

 

 「えぇぇッ⁉」


 (ムチャクチャだな⁉)


 剣を持っている俺を片手で投げ飛ばすなんて、さすがとしか言いようがない。全身に風を受けながら下に目を向けると、オークの黒い図体が見える。と、同時に勢いが止まった。あとは落ちるだけ。

 力加減が絶妙だ。部屋を出る前に俺を担ぎ上げたのには、ちゃんと意味があったようだ。


 (落ちる勢いで斬れってことか!)


 剣の柄を両手で握り、頭上に持ち上げると重力に身を任せる。一撃では倒せないかもしれないが、大ダメージにはなるはずだ。


 「うおおおぉっ‼」


 「オ?……」


 だが、オークが黙って俺の攻撃を受けるはずがない。地面に転がっている石を掴んで振りかぶる。


 (多少のダメージは我慢するしかないな……)


 勢いを緩めずに急降下する。投石をくらうと思っていたのだが、石が手から離れる前に腕の方がオークの胴体から斬り離された。


 「オ゛オ゛ォォ⁉」


 「させませ〜んッ!」


 (デュークさん!よしッ!)


 そのままオークの体を真っ二つにした。

地面についた瞬間、靄になって消える。


 「た、倒せた……」


 しかしやっと1体。それもデュークさんの力を借りてだ。

 大きく息をつくと声をかけられる。

 

 「モトユウちゃん、おつかれ〜」


 「お、お疲れ様です!でも、課題が……」


 「だなー。ヒハハッ!

まず圧倒的に筋力が足りない」


 「ですよね……」


 自分でもわかっていたことだ。ここに来てから鍛錬が疎かになっているので、もともと自信はなかった。

 オークとはまだザルド達と一緒の時に戦っているはずだが、どうやって勝ったのか覚えていない。

 みんなと力を合わせて勝ったのだろう。


 「でも急には増えませんよ……」


 「ヒハハハッ!一時的なら増やせるかもなー。

薬とか使って」


 「え?筋力って増やせるものなんですか?

それに、薬に詳しい人いるんですか?」


 「いる。それにモトユウちゃん、ソイツに会ってるぜー。なんせ俺が連れて行ったんだからなー」


 (まさか……)


 デュークさんから紹介された魔族なんて片手で数えられる。自然と選択肢は絞られて、俺の頭の中にはある人物が浮かび上がっていた。

 次話でわかること


 ・テナシテさんの趣味?

 ・デュークさんとテナシテさんが

どうやって知り合ったか


 よろしくお願いします

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