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命乞いから始まる魔族配下生活〜死にたくなかっただけなのに、気づけば世界の裏側に首突っ込んでた〜  作者: 月森 かれん
第1部配下生活編 第1章 

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13話 クセの強い魔族を紹介される②

 数分ほど歩くと建物の端に辿り着いた。

他のドアは分厚い木製だったのに目の前のドアは鉄製だ。ちょっとやそっとじゃ破壊するのは無理だろう。


 (まるで牢屋みたいだな)


 「ここだけ鉄なんですね」


 「おうよ〜。本人の要望なんだってさ〜」


 少し不安になりながら尋ねるとデュークさんはいつも通りの笑みを浮かべた。


 (要望⁉魔王に楯突いてるからとかじゃなくて⁉)


 その人の意思ではなくオネットみたいに別の人格があってそれを鎮めるためにわざと強固な造りにしてもらったのかもしれない。


 「その人、大丈夫なんですよね?」


 「大丈夫大丈夫〜。大人しいからな。出会い頭に殴り合いになんてならないぜ〜。

 まぁ、自分から頑丈なトコに入れてくれなんて言わねーもん、フツー」


 (不安しかねぇ……)


 下を向くとデュークさんがさらに下から覗き込んでくる。俺は慌てて顔を上げた。


 「そんなカオするなよ〜。イイ奴だからさ〜」


 「は、はぁ……」


 (イイ奴。大人しいけどフレンドリーとか?

でも、そうならなんで自分からわざわざこんな要望を……)


 ますますわからなくなってきた。変わり者というより厄介者なのかもしれない。


 「そんな考え込むより会ったほうが早いぜー。

せーのっ!」


 掛け声もあり、オネットの時と同じように勢いよく開けると思いきや、デュークさんはドアを4回ノックした。

すぐに中から主と思われる声が返ってくる。


 (ノックした⁉回数も意味がありそうだな)


 少し低めの声を聞く限りどうやら男のようだ。


 「邪魔するぜ〜」


 当たり前のように中に入っていくデュークさんを見つめていると、いきなり振り返って俺にテマネキした。


 (い、いいのか?)


 俺はおそるおそる足を踏み入れる。

 正方形の室内は薄暗く、オネットの部屋とは真逆で閑散としていた。2面の壁に棚が建てつけられており、本がギッシリ詰まっている。

 そして唯一棚が無い壁に向けて置いてある机とイス。そこに肩あたりまで伸ばした白髪を1つ結びにして白いローブを身に纏っている魔族がこちらに体を向けて座っていた。目を閉じているが寝ているわけではないようだ。


 「ああ、こんにちはデュークさん。と、もう一方いらっしゃいますね?」


 「おう。こちら、モトユウちゃん。

マーさんから聞いてない?」


 「聞いていますよ。そうですか、この方がモトユウさんですね。

 初めまして、テナシテと申します」


 そう言った彼の目は閉じたままだ。見えないのかもしれない。


 「あ、ど、どーも」


 (本当に大人しそうな人だな。でもなんか胡散臭いというか油断できない……)


 そう思った直後、テナシテさんが俺を見て少し口角を上げた気がした。


 (ん、俺なんか変な事言ったか?)


 思わず彼を見るが僅かに笑みを浮かべているだけだ。口角は上がっていない。見間違いだったのかもしれない。

 するとデュークさんが思い出したように声を上げた。


 「じゃあ、俺はやる事があるからここで帰るわ〜。

モトユウちゃんはテキトーに過ごしといて〜」


 「は、はぁ……」


 (やることってさっき言ってた素材を取りに行くのか?

 ってここで放置⁉カンベンしてくれよ⁉)


 心の声も虚しくデュークさんが出ていってテナシテさんと2人になる。どうしようか悩んでいると彼の方から声をかけてきた。


 「立っているのもなんでしょうからイスに座ってください。いくつか壁に並べてあると思いますので」


 「じゃあお言葉に甘えて……」


 近くの壁を見ると大木の幹を切っただけの「イス」が3つ並べてあった。ところどころ虫が喰っていて穴が空いている。


 (この辺りの大木から切ったんだろうな。

ほぼ枯れ木だったし……)


 大木があるとわかったのは2日目に自室から外を見た時だ。ヒビ割れた土地に合わせるように薄い茶色の大木が点々と生えていたのを覚えている。

 俺は「イス」を1つ取るとテナシテさんのナナメ前に置いて座った。初対面なこともあって正面に座るのは気が引けるからだ。


 (でも何を話したらいいんだ?共通の話題とか……)


 「何でも良いですよ。気になる事があるのなら、それについて尋ねてくださっても構いません」


 「え……」


 思わず彼を見る。俺はまだ何も言っていないからだ。


 (ま、まさかこの人……)


 「他人の心が読めます」


 「マジですか⁉」


 「はい」


 思わずイスから立ち上がった俺とは対照的にテナシテさんは落ち着いた様子で答える。


 (俺は考え事が多いから気をつけないとな。やましい事考えてる訳じゃないけど。で、でも……)


 「スゲェ!生まれつきですか?」


 「え、ええ……」


 テナシテさんは少し困ったように眉を下げる。その様子を見て俺は不安になった。


 (何か気に障るような事を言ってしまったのか?)


 そう考えていると彼は静かに首を横に振る。


 「……凄いと言ってもらえたのはあなたで2人目です。

心が読めると言ったら大抵は気味悪がられますから。

 この力は制御できません。常に発動していますので、私は部屋の中で日々を過ごしています」

 

 「常に他人の心が聴こえるから……」


 (魔族間でも嫌悪ってあるのか)


 てっきりそんなものは無いかと思っていた。ここに来て数日は経ったもののまだ偏見が拭えない。デュークさんみたいなのは珍しくて、まだ自己中心的なヤツが多いのではないかと思う。


 「はい。面白いですよね。自分達もニンゲンからすれば嫌悪の対象なのに、私の能力に関しては気味が悪いそうです。

 この能力は半径3メートル以内に居る者の声が聴こえます。嫌でも頭に響いてくるんです。

 部屋に閉じこもっていれば誰の声も聴かずに済みますから」


 「じゃあドアが鉄なのは……」


 「木製だと聴こえてしまいます」


 「…………………………」


 返す言葉が見つからないまま周りを見ると、ドア周辺の壁は鉄製だった。よく見ると窓も無いことに気づいた。


 (マジかよ。だから部屋の中が暗いのか)


 「ちなみに天井も鉄です」


 「……あ」


 (ってことは太陽光とは縁ナシ⁉)


 「いいえ。時々魔王様が散策に連れ出してくださるんですよ。もちろん、周りに誰も居ない時にですが。

 とはいえ、久しぶりに浴びると眩しいです。しばらく目を開けられません」


 「目、見えるんですか?」

 

 「見えますよ」


 テナシテさんはハッキリと答えたあと、小さく息を吐いた。


 「でも、心の声が聴こえるせいか相手を目に映すのが嫌になってしまいまして。なので、普段は閉じています」


 「そう、なんですね……」


 魔族なのにここまで苦しんでいる者が居るなんて思ってもみなかった。

 俺は適当な相槌しか打てず、複雜な気持ちでテナシテさんを見ることしかできなかった。

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