第五話 訓練開始
カン、コン、カン
…木と木のぶつかり合う音が聞こえる。セトと父さんが木の槍を使って修行をしているのだろう。俺は午後から修業なので、今は読書だ。
ちなみに、両親ともに片手剣と魔法ができない(父さんは感覚で魔法を発動しているので教えることができない)ため、家庭教師を雇うことになっている。
俺がステータスをもらった授与式の日、家族全員で夕食を食べているときに決めたことだ。
すぐに雇うことは流石に出来なかったため、授与式から10日経った、今日から修業を始めることになっている。
「ふたりとも、ご飯できたわよ!」
「分かった!今行くから待ってろ!」
母さんが父さんを呼ぶ声と、それに返事をする父さんの声が聞こえた。どうやら昼食の時間になったようだ。俺も食堂に行くか。
…そうだ、姉であるアリアは現在9歳。この世界の学校は10歳から入ることになっているため、来年には家を離れ、寮で生活することとなる。
———1時間後。食事を終えた俺は、先程までセトが訓練を行っていた訓練場に来ていた。少し離れたところでは、アリアとその家庭教師が魔法の練習をしている。
…訓練場は広い。流石は騎士団長の館というべきなのだろうが…それにしても広すぎる。多分、この屋敷の敷地が東京ドーム一個分。その半分ほどを占めているのが訓練場だ。
…まぁ、騎士団がここで訓練していることもあるし、当たり前っちゃ当たり前か…
そんなことを考えていると、目の前にいるゴツい赤髪の人物が話しかけてきた。
身長は190ほど。肩幅は50〜55くらいはあるだろうか?肩には長さ1メートルほどの長剣を背負っているが、ゲームなどでいうバスターソードや大剣ほどには幅が広くない。
身体には四肢と心臓を守るだけの簡素な装備をつけていて、基本的に機動性を重視した装備のようだ。
めっちゃゴツい見た目だけど、スピード早いんかな…?
「君がアースくんか?今日から5年間ほど君の家庭教師を務める、冒険者のガイアという。職業は『魔剣王』だ。こんななりだが、一応勉強も見ることができるぞ」
「グランツ公爵家次男、アースです。勉強を見る必要はあまり無いですね。本読んできたおかげで、大体はできるので。それよりも、魔法と片手剣を見てほしいです」
「そうか、大口を叩いたな…それじゃあ、少ししたらテストを作ってきてやろう。それで一定以上取れたら座学は免除にしてやる。…さて、ここからは実技訓練の話だ。魔法と剣、どっちを主体にしたい?」
魔法か剣か?そんなの決まっている。
「剣でお願いします!魔法はサポートで使うので!」
俺の目指す戦闘スタイルは、剣術主体で、スピード型の魔剣士だ。魔法は、牽制や距離を話したい時などに使うつもりだ。なぜかって?あまりmpを消費しないほうが継戦能力が高くなるだろう?
「そ、そうか。じゃあ、早速やるぞ。まずは…そうだな、これを片手で振ってみろ。もちろん、重いだろうから、時間はいくらかかってもいい」
そういって渡されたのは、一本の木剣。かなり細身で、見た目は軽そうだが、実際は数㎏ほどありそうだ。
それにしてもこの木剣…なんかデカくね?ガイアさんの剣と同じくらい長さあるんだけど…?太さもそうだし…
…もしやこれ、ガイアさんの訓練用なのでは?面倒臭いから訓練用のものを持ってきただけでは?
…まぁいいや。まずはこいつを片手で持てるようにしなければ…
片手で持つのは無理ゲーだろう。子供の筋力でそんなことができるわけない。
ならばと、床にある剣を両手で持ってみる。なんとか持つことはできたが、腕がちぎれそうなほど重い。振ったらすぐに落ちそうなぐらいだ。
それでも頑張って振るしかないか…最初なんだし、姿勢なんかどうでもいい。とりあえず、上に上げて…振る!
ピコン!
うん?
〈レベルが上がりました。初期ステータスの20%が加算されます〉
…は?
…おい、ちょっと待て。少しだけツッコませろ。木剣一回降っただけで、普通レベルなんて上がるか?何?この世界って物凄くレベルが上がりやすいの?それとも、まだ子供だから上がりやすいだけ?
…そういえば、称号欄にあった『転生者』の効果に経験値の獲得量を増やす的なことが書いてあった気が…
…え?そうなるとかなりの上昇量じゃね?基準がわからないからどのくらい増えてるのかはわからないけど…
レベルアップの結果は後で見るとして、今はもっと素振りをしよう。訓練するだけでも経験値が手に入るのことがわかったのは良かった。
…1、…2。
ピコン!
〈レベルが上がりました。初期ステータスの20%が加算されます〉
…苦労して2回の素振りをすると、またレベルアップの通知音がした。予想だが、次は4回振ったらレベルが上がるだろうな。
…1,…2,…3,…4。
ピコン!
〈レベルが上がりました。初期ステータスの20%が加算されます〉
うん、これは等倍で増えていくやつだな。だとすると、次は8回かな?Aが上がっているおかげか、持つ木剣が少し軽くなったような気がする。Aは筋力のことも表しているのか…?
…1,…2,…3,…4,…5,…6,…7,…8。
ピコン!
〈レベルが上がりました。初期ステータスの20%が加算されます〉
…これ、ピコン、ピコンとうるさいな。
すみませーん。この音、10レベルおきになるようにしてくれませんかね?
そう思いながら木剣を振る。次は16回かな?
…1,…2,…3,…4,…5,…6,…7,…8,…9,…10,…11,…12,…13,…14,…15,…16。
…あれ?鳴らないな。試しにステータスを見てみるか。
「ステータス」
アース・グランツ 職業:魔剣士(戦魔神) Lv6
HP:200/200(500/500)
MP:300/300(600/600)
A:160(240)
D:120(160)
MA:160(220)
MD:120(160)
S:140(320)
I:1000(10000)
〈スキル〉
固有:(『万象創造』、)『焔魔術Lv1』
(エクストラ:『戦神術Lv10』、『魔神術Lv10』、『戦魔結界Lv10』、『偽装Lv10』)
コモン:『片手剣技Lv1』、『片手剣術Lv1』
強化:『身体強化Lv1』
耐性:『炎熱耐性Lv1』
(称号:『異世界人』、『転生者』)
…知力が変わらないのは、特に勉強とかをしてないからか?一応、丸括弧の中が偽装していない状態のステータスとスキルだ。というか、俺が聞いたレベルアップの音は4回なんだが…なんでレベル5じゃなくて6なんだ?
…もしかして、さっき心の中で思ったことが反映されたとか?だとするとかなり便利な機能だな。
このあとも訓練は続き、今日は剣の素振りをしただけで終わった。なお、レベルは8まで上げることができた。次のレベルまで128回は辛いって…素振りだけで上がると考えたら妥当だけどさ…
おなじみ、マイペース投稿者の神名剣斗です。
一か月に2話も投稿するのは初めてですね。
明日から実家に帰省するので、続きはまた一ヶ月後になるでしょう…
今後とも、よろしくお願いします。
2023年、6月4日 追記
ステータスの上昇量がやばいことになりそうな予感がしたので、変更しました。