第十七話 最初の授業
最近、見てくれる人が段々と多くなってきて、ものすごく嬉しいです!…それでもまだまだ底辺ですが(笑)
入学式の次の日。俺は授業開始時間の5分前に教室に入った。
…どうしても前世の記憶が蘇ってくるな…前世では、小学校の頃からずっといじめられ続けてきたからな。あんな仕打ちは2度と嫌だね。
「あ、アースくん、こっちこっち!席取っといたよ!」
…なんか一斉に視線を向けられた気がする。気のせいだろうけど。
「おう、ありがとな。…わざわざ取る理由はわからんが」
「私がアースくんの隣に座りたかったから。理由なんてそんなもんでいいでしょ?」
「まぁな。席を取る時間も短縮できたから、むしろありがたい」
「あら、まだ10歳なのに、ラブラブね。秘訣でも教えてほしいわ」
「…一応、5歳の頃から結構一緒にいるからな。お前も許嫁のところ行って甘やかしてもらったらどうだ?同じクラスだったよな?」
…正直、5年程度一緒にいたところで、前世も合わせて27年ほど生きている俺にとっては、近所の子供に懐かれて面倒だぐらいしか思わないけどな。
「あら、私のことを調べたのね。素敵な許嫁がいるのに」
「基本情報だけな。それに、お前も人のこと言えねぇだろ。俺のこと結構知ってるくせによ」
…エマ・クロッカス。魔法士団長の娘で、魔導帝の職業を持つ。許嫁はこの国の王子、レオ・ライト。こちらは、剣王の職業を持っている。どちらも、下手な騎士団員よりも強いらしい。
「いずれ王妃となるのだから、この国の貴族のことは知っておかないとでしょ?」
「え?王妃?……エマちゃんって、王子様の許嫁なの?あの、魂が見れるって噂の?」
「そうよ。一応、次代の王妃の予定よ。今はまだクロッカス家の次女だけどね」
「お前は、魂を見られたことはあるのか?」
「あるわよ?というか、初めて顔を合わせたときに見られたわね。魂を見て、人を信じるか決めてるらしいわ」
…疑心暗鬼なのか?まぁ、それもそうか。表面上では優しく接してきてても、魂を見ればそれが嘘かわかるんだから。そんな嘘を付いてるやつを何回も見かけたんだろうな。
「魂を見られるのって、どんな感じなの?ちょっと怖いんだけど…」
「全然不快感とかはないわよ?本当に見ているのか疑うぐらいにはね。今もこっちを見てるし、あなた達の魂を見定めてるんじゃないかしら?」
…なんか嫌だな。そういうの。こっそり見ないで、しっかり真正面から見ればいいものを…
そんな事を話していると、急に教室のドアが勢いよく開かれ、俺がいた会場の試験を担当した教師が入ってきた。
「最初の授業を始めるぞ。世間話をやめて、立っている奴らは席に座れ」
教師のその言葉に従い、皆が席に座り始める。俺たちも話を止め、教卓に向き直る。
「…静かになったな。俺の名前はバックだ。試験では第六会場の試験を担当した。これから一年間、お前らの担任を務める。教える教科は武技だ。よろしく頼む」
バック先生か。ゴツいな。あの筋肉となると、力も相当なものだろうな…
「さて、最初の授業では、この学園での生活に関する解説や、教材や道具の配布を行う。では早速、この学園の生活についてだ」
…そう言って、バック先生は説明を始める。
「君たちには寮に入り、学業に専念してもらう。授業時間は8時から。数回の休み時間を挟んで、16時には終わる。寮では校則を破らない限り自由にしてもらって構わない。私服で過ごしてもいいぞ。ただし、校舎に来るときには、必ず制服を着るように。
実技の場合には、事前に配布されている運動着を更衣室で着て、指定された場所へ向かえ。寮に忘れた場合には、参加することができないから気をつけろ。また、座学の授業に行くときに、制服に着替えるのを忘れないように。
最後に、教科と時間割についてだ。教科は、実技が魔法技、武技の2種類。座学が歴史、公民、薬学、数学、科学、魔法学の6種類。合計8種類だ。時間割は、土曜日と日曜日以外の一日6時間で、すでに決まっている。後で配布するので、しっかりと確認しておくように。
説明はこんなところだ。なにか質問があるものはいるか?」
…大体聞いていたとおりだな。…本当にトラウマが刺激されそうで怖い。
ちなみに、制服と運動着はすでに寮の部屋のロッカーにかけられていた。
「…無いようだな。では、これから教材や道具を配布する。と言っても、流石に量が多いからな…誰か、運ぶのを手伝ってくれる人はいるか?」
…誰も手を挙げない。まぁ、それもそうか。結構面倒くさいだろうし。
「…よし、それじゃあ、入試成績11位までの奴ら、手伝ってくれ」
…なんか最近運なくね?なんで?そう思いつつも、俺は立ち上がり、先生がいる教卓の前に行く。
「そんじゃ、ついてこい。教科書を置いてあるとこに行くぞ」
そう言って連れて行かれたのは隣の教室。…そんなに遠くねぇじゃねぇかよ。
「そんじゃ、一人一束教科書を持ってくれ。残った三人は、そこの箱を持ってくれ。落とすなよ?」
…置かれている教科書は、それぞれの教科のもので、合計8束。そして、こっちの3つの箱には…鍋みたいな感じのものが入っている。
薬学があると言っていたし、その調合で使うんかな?まぁ、今はまだ気にしなくていいか。
教室に戻り、教卓の横に置かれた机に持ってくるように言われた箱を置く。そして全員が席に戻ったところを見て、再度先生が話し始めた。
「これらが今日配るものだ。それぞれの教科の教科書、薬学での調合に使う小さな鍋、教科書を入れるためのカバンに、この学校の詳しいルールが書いてある生徒手帳。どれも授業を受けるのに必須なものだ。絶対に忘れないように」
そうして、教材が配られる。…バックの品質結構良いな。かなり丈夫にできている。校外学習を行うこともあるって聞いているし、それにも使うからかな?
あ、ついでに時間割も回ってきた。ん〜まぁ、教科書も少ないし、毎日全部持ってくればいいか。把握なんてめんどい。
「それでは、今日の授業はこれで終わりだ。寮に戻って、明日から始まる授業の準備をしてくれ」
…これで一日目が終わりか。向こうよりも短いな。まぁ、明日からフルで授業が入るし、こんなもんなんだろうな。
———昔みたいに、いじめられることは避けたい。もう、あんな思いをするのはゴメンだ。
楽しんでいただけたでしょうか。誤字脱字があった場合は、指摘をお願いいたします。極力ないようにしていますが、自分でも気づかない間違いがあったりしますので。