第八話 初戦闘?
この町の領主の館?なら大丈夫だ。一応道は覚えて...じゃねぇ!俺の家にこんな普通に来るってことは、それなりの家格ってことじゃねぇか!
うちは公爵だから、同じかそれ以上の価格の子って考えると…公爵の娘か王族がお忍びできてるってこと!?
「えっと...1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんでもどうぞ」
「失礼かもしれないけど、君の家の家格は…?」
「えっと...たしか、お父さんが魔法師団の団長で、公爵っていってました」
...予想的中。何で町中を歩いてるんだよ。しかも結構質素な服で。豪華な服を着て、馬車で来るだろ、普通は。(筆者の偏見です)
ってか、魔法師団?え?騎士団長とほぼ同じ立場じゃん。
「そ、そっか…魔法師団長の娘か…」
「?はい。最近は平和で、仕事があまり無いらしいですけど…」
魔法師団は、騎士団と逆の存在だ。宮廷魔術師には及ばないものの、全員がかなりの練度をもつ。
…アーマーリザードを魔法師団だけで倒せるらしいからな…S〜Eまでのランクで表すとしたらBだ。これを倒せる魔法師団はそうそう無い。
宮廷魔術師は、この国でも有数の魔法の実力者が得られる称号みたいなものだ。この中でも特に魔法を上手く扱えるものが魔法師団長となる。
騎士団との違いとしては、街の近くに出た危険なモンスターの討伐に駆り出されるかそうじゃ無いかだな。魔法師団はその強さゆえ、CランクからBランク下位の魔物で駆り出されることなどない。
その逆に、騎士団は本当によく駆り出される。1ヶ月に1回は3日留守にする時があるからな…
「えっと………俺はここの領主の息子なんだ。同じ家格の子供だし、この話し方やめてもいいかな?多分だけど、年齢も一緒だと思うし…」
「もちろんです。家格が同じなら気遣う必要もないですし…私も普通にしてもいいですか?
「うん。——で?どうしてそんな格好で町中を歩いてるんだ?普通馬車で来るもんだと思っていたんだが…」
「私も普通に話すね。他の領主様の街に来たことがなくて、少し探検したいとお母さんに言ったの。それで許可をもらえたから、こうして歩いていて——迷っちゃった…」
「…ちょっとは地図把握しなよ…それじゃ、俺の家まで案内するよ。ちょうど俺も探索してたところだけど…客人が迷ってるとなればな…」
「う、うん。ありがとう…一気に口調が崩れたね…」
「まぁ…さっきまで結構丁寧に話しかけてたし」
この口調で話しかけたら怖がられると思ったからな…俺口調なんざ適当だし。
「素の口調との差がすごすぎじゃない?結構驚いたよ…?」
「いいだろ、別に。それよりも、早く行くぞ。こんな路地裏にいたら変なチンピラに絡まれかねん」
そう言いながらも俺は歩き出す。公爵家の娘がわざわざここまで来たのなら、大切な用事があってここに来たのだろう。早く送り届けないとな。
「あ、ちょっと…!おいてかないでよ!?」
なんかここにいると嫌な予感がしてくるんだよな…まあ、俺の勘はよく外れることがあるから、心配ないと思うけど…
「おい、そこの子供ら!」
———こういうときだけ嫌な勘が当たるんだよな…
「何だ?なんかようでもあるのか?」
「お前らは完全に包囲されている!そこを動くな!」
うーわ、めんどくさ。包囲、ね…盗賊か、違法な奴隷を扱っている店の人間か…
「おい!!この二人は絶対に逃すなよ!この世でも珍しい色をした目と髪を持つ二人…高く売れるに違いない!」
うん、奴隷商の手先確定だな。しかも違法なやつ。それにしても、隣の少女は白髪に赤色の目をしているから珍しいが…俺はいま黒髪黒目のはずだぞ?
珍しくもなんとも…いや、そういえば黒髪黒目の人全く見たことなかったや。
とりあえず、最初は言葉で脅してみるか…貴族の子供だっていえば、少しは怖がるだろ
「お前ら、わかってんのか?俺たちは貴族の子供だ。そんな俺らを奴隷になんてしたら、最悪処刑だぞ?」
「お前らが貴族の子供かどうかは関係ない。俺たちが見るのは稼ぐことができるかどうかだ。お前を捕まえることができれば、身代金を請求して稼ぐこともできる。
それを受け取ってからお前らを奴隷にして売り捌くことができれば、俺たちには莫大な利益を得ることができる!」
金の亡者どもが…こういうゴミクズは、本当に嫌いだ…俺の親もそうだった。相手が金を持っていると分かればすぐに平伏してペコペコと…
「…そうか。なら仕方ない」
この魔法を、試すとしよう。
「『焔魔術 焔の束縛』」
「魔法?しかも炎だと?これはいい!捕まえることができればっ…」
そこで親玉の言葉が詰まる。俺が生み出した焔で、話せないように束縛したからだ。もちろん、周りを含んだ他の奴らも。暑さは感じないだろう。温度は人間の体温と同じくらいにしてるしな。
…けど、『炎魔法』ではそんなことはできない。これが俺の『焔魔術』の特徴。出した炎の温度、密度、性質を自由に変えることができる。
「捕まえることができれば…どうなんだ?」
「んんっ!んんん〜!」
「高く売れるってか?…俺は奴隷制が嫌いなんだ…犯罪奴隷ならまだいい。ただ、借金返済のために売られた奴隷や、お前らみたいな違法奴隷商人に捕まった奴らがいると考えると吐き気がする」
そう言いつつ、俺は炎を操作して違法奴隷商人どもの首を締めていく。全員が苦悶の声を漏らすが、そんなことは関係ない。
「いいか、今度このような真似をしているのを見たら、この程度では済まされない。ゆっくりと地獄を見せてから———殺してやろう」
その一言に、奴隷商人の手下どもは激しく首を縦に振る。どうやら、わかってくれたみたいだ。
「よし、お前らが俺を追跡できないよう、このままお前らを気絶させる。殺されたく無いのなら、違法なことから足を洗うんだな。そうしたら、殺されることはないぞ」
「えっとー、そこらへんにしてあげたらどう?」
「気絶した後は放置するだけだ。それ以上の危害は加えない。それに、俺らにを攫おうとしたやつらに慈悲なんざいらねぇ。違うか?」
……優しいやつだな。自分に危害を加えようとしたやつを気遣うなんて。まぁ、俺も正直殺したくは無いし、ただの脅しなんだが…
「…よし、全員気絶したか」
俺らを包囲していたもの全員が気絶したのを確認してから、俺は拘束を解く。全員雑魚で助かった…
「さぁ、俺の家に向かおう。あいつらが起きる前に行かないと、また襲われるかもしれん…あぁそうだ。このことは父さんには内緒にしてくれよ?バレたらどうなるかわからない…」
「う、うん。助けてくれてありがとう…」
「俺のただの自己満足でもあるから大丈夫だ。それより、早く行くぞ。」
「うん!!」
色々あったが、やっと家に帰れる…。そもそも、なんで家出てから40分も経ってないのにこんな事になってんだ。はぁ、疲れたなぁ…
追記 2023 1月1日:自己紹介をしていないのに少女の名前が出ている部分を修正しました。