75話 走り出せ
「やぁ、待ってたよフレイ先生。いや、フレイ」
魔王幹部は足を組みスマートな恰好をして椅子に座っていた。
「おいおい、警備は何やってんだよ……」
「心の準備がまだできてねぇよ……」
俺達はまさに今この状況に絶望する。もっと後にやってくるであろう魔王幹部が目の前にいるのだから。
そんな怯えた俺達をみて、イケメンは笑いながら言う。
「ハハハ、そんな怯えないでよ。すぐに殺したりしないさ。ちょっと聞きたいこともあるしね」
「ならよかったとはならねぇよ」
「何を聞きたいんだ?」
そう聞くとイケメンは爺さんの方をちらっと見て
「この爺さんが怖がってるし、外で話そうか。もちろん隣の君もね。なにか知ってるみたいだし」
こういう気遣いができるところ、冷静でむやみに人を襲わないというのは本当みたいだ。だが、俺達には容赦しないといった様子である。
「わかった、すまんな爺さん」
「あ、あぁ。気をつけろよ」
そう言って俺達は本屋の外へと出た。ここで俺のやることはただ一つ。
逃げる。
俺は全速力でイケメンから逃げた。だが、さすがは魔王幹部。こんなんじゃ撒くことはできないか。横から走ってくる音が聞こえる。
俺は確かめるためにちらっと横を見る。そこにはまさかの、いや性格を考えたら当たり前のことか。フレイが俺と並走していた。
「おっとさすが親友。考えることは一緒だな」
「黙れルイ!お前俺のこと囮にして一人で逃げただろ!」
「そんな!親友にそんなことするわけないだろ」
「チっ……お前が囮になれ!」
フレイはそう言うと俺に向かってタックルしてきた。あまりに予想外のことをしてきたので俺は軽々転ばされてしまう。
「なっ、お前……」
「はっはっはっ!お前が囮だ!じゃあな!」
「行かせるかぁぁああ!!!!」
ここで行かせるわけにはいかない!
そう思ったら体が勝手に動いていた。俺はフレイの足にしがみつき転ばす。
「この野郎!邪魔するな!」
「お前こそ!」
そこから俺とフレイの取っ組み合いが始まった。本来の目的を忘れて。
「君たち味方同士で何してるんだい……」
後から来たイケメンに言われてようやく思い出す。
俺達はこいつから逃げていたのだと。
だが今から逃げてももう遅い。
「はい捕まえた」
こうして俺達は無駄に捕まってしまった。




