35話 レイの怒り
「ご、ごめんレイ……」
「……。」
セクハラされまくったレイは顔を真っ赤にしながら拳に力をこめ、今にもフレイを殴りそうな様子だ。
「あの……」
「あなたは黙っててください」
「はい」
フレイのためにも何とかフォローしようとするが、何も言わせてくれない。
空気が重すぎる……
そう思って周りを見ると、さっきまでワイワイと騒いでいたお姉さんたちもいつの間にかいなくなっている。恐ろしいほどの危機察知能力だ。
「今日頼んだ依頼はちゃんとやったんですか?」
「やってません……」
「じゃあ今まで何やってたんですか?」
「買い物したり、ご飯食べたり、お酒飲んだりして遊んでました……」
今日一日中ずっと陽気だったフレイの面影は一つも残っていない。今は、産まれたての子鹿のようにプルプルと震えている。
「最後に何か言うことは?」
ここが最後の弁明の場。
ちゃんと反省して、必死に謝ったらまだレイの怒りもおさまるかもしれない。
俺はフレイに必死に目で訴えかける。
そして、フレイは俺の意思が伝わったのか小さくグッドサインをした。
よかった、伝わって。
「意外と胸あったから気にしなくてもいいぜ!」
ダメだこりゃ。
これはフォローできない。
「死ね」
当然、目に見えない速さでフレイは吹き飛ばされ壁に突き刺さった。
えげつねぇ……
こんなのに巻き込まれるわけにはいかない。
そう何か危機感を覚えた俺は、ひっそりとその店から出ようとしたが、
「あなたもフレイを巻き込まないでください」
いつの間にか、俺の目の前にはレイが立ち塞がっている。
そして、次に気づいた時にはフレイと隣同士で壁に突き刺さっていた。
「次はありませんから」
「「……」」
レイはそれだけ言って店から出ていった。
「なんで俺まで……」
「ほんとにすまん」
俺の楽しい休日が最悪の休日に変わってしまった。




