114話 あなただけリピート
俺たちはカフェを出た後、すぐにグレイの家へと向かった。グレイの家はギルドに近いところにあり、ギルドマスターが用意したらしい。絶対わざと近くに置いたのだろう。
家に着くなり、俺はドアをたたく。
「グレイ!いるか~?」
「ちょ、まだ心の準備が…」
するとすぐに部屋着姿のグレイが出てきた。
「どうしたんだい?」
部屋着でも相変わらずかっこいい。これだからイケメンはずるい。
男の俺でも少し惚れそうなほどだ。ギルドマスターなんか…フリーズしてしまっている。
「ギルドマスターがなんか話したいって」
そう言うと、ようやくフリーズから解放され、今度はあたふたしながら、
「え、いや違う!調査だ!」
「はは、調査ですか。僕はあなたとお話ししてみたかったのですが」
「そ、そうか?」
ギルドマスターは照れているのかもじもじしながら下を見ている。
いつもこの性格ならもてると思うんだけどな。美人の無駄遣いだ。
「あ?今なんて言った?」
「え?」
もしかして今の口に出てしまっていたのか。
俺はすぐに謝ろうとしたのだが、さすがはギルドマスター。謝るよりも先にげんこつが飛んできた。
「いてぇ…」
今日三度目のげんこつ。そろそろ頭が割れそう。
だが、今はグレイの前だ。それに気づきすぐにやってしまったという顔をする。
「あ、いやこれは…」
ギルドマスターは必死に言い訳をしようとしていたが、グレイは何かを考えている様子だった。
「今のパンチ…どこかで…」
「グレイさん?」
「いや、僕たちどこかで会ったことはありませんか?」
「いや、私は覚えてませんけど…」
「そうですか…人違いかもしれません」
パンチで覚えてるってなかなかおかしいと思うのだが。
それからは色々と話をした。新生活に何か困っていないか、最近どんなことがあったかなど、いかにも普通の会話をしていた。
とりあえず、喋れているので連れてきて正解だっただろう。
そして、話すこと一時間、さすがにそろそろお開きにすることになった。
「それじゃあ今日は帰りますね」
「はい、僕実は女性恐怖症なのですが、あなただけは何故か大丈夫だ。これからも仲良くしてください」
これはいい意味でとらえていいのだろうか。本当に女性としてギルドマスターだけ大丈夫なのか。それともギルドマスターは男勝りな性格なので、まず女性として見ていないからなのか。俺はおそらく後者なのではないかと思うが…
「ひゃい…」
ギルドマスターは完全に前者だと思っているだろう。今脳内であなただけという言葉がリピートされているはずだ。
「それでは…」
ある程度仲良くできたので帰ろうとした、その時だった。
「待って!」
グレイがそう言ってギルドマスターの肩をガシッと掴む。そして、ギルドマスターの髪を耳にかけた。
「このピアス。僕のと一緒だ」




