112話 買い物からの地獄
グレイとの戦いが終わって一週間。無事グレイは魔王軍をやめてこの街に来ることができた。今はギルドの仕事を手伝ったりクエストを受けたりしているらしい。もうすでにこの街の生活に慣れていそうだ。
今回の戦いで、経験値もお金もたくさん入ったので俺たちは平和な日々を過ごしていた。
そして今日は、シオリと買い物の約束をしている。リボンは朝早くからどこか出かけて行ったので久しぶりの二人だけの買い物だ。朝から少しワクワクしてしまっている。
まぁこの前戦いに巻き込んだから俺のおごりなんだけど。それでもおごりだけで済んだだけでましだと思っておこう。
「シオリ、まだか?」
時間になっても中々降りてこないので大声でシオリを呼ぶと、ドタバタと慌てた音とともに
「ちょっと遅れる!先行ってて!」
まだ用意が終わっていない様子だった。やっぱり女の子は準備がかかるもんなのか。
「わかった。広場らへんで待っとくぞ」
それだけ言って俺は商店街の広場へと向かう。商店街は昼間はいつも盛り上がっており、異世界に来てしばらくたった今でも祭りが行われている気分がする。
俺は待っている間暇だったので、服やアクセサリーの店を見て回った。やっぱり日本の服とは少し変わっているがどれもおしゃれできれいなものが多い。今回でかなりお金がたまったので少しぐらい奮発しようと思っている。
そしてアクセサリーを見ていた時のことだった。ふいにどこからか視線を感じる。
俺は周りを見渡すと向こうのほうにギルドマスターがいるのに気付いた。さっきの視線はギルドマスターのものだった。
気づいてないふりしよ…
声をかけられたらめんどくさいのですぐに目をそらし、商品を見ているふりをした。だが、それでも視線を向けられている感覚がする。そっとギルドマスターのほうを見てみると、だんだんとこちらへと近づいて来ている。
やばい…!
この感じ、完全に俺に用があるやつだ。
俺はすぐさまその場を離れる。しかし、少し動くのが遅かった。
「ルイ、ちょっといいか?」
声をかけられてしまった。俺はすかさず今気づいたふりをする。
「き、奇遇ですね。どうしたんですか?」
「ちょっと相談があってな」
ギルドマスターの相談なんて絶対だるいに決まっている。ここは、正直にシオリと買い物約束があると言って断ろう。
「ごめん、この後シオリと予定が…」
ちょうどその時シオリが向こうから手を振ってきているのが見えた。
「ルイ…」
だが、名前を呼んでいる最中にシオリは何かに気づいた顔をした。確実にギルドマスターだ。
「る、ルイベルト!」
するとシオリはいきなり近くで散歩している犬に飛びつく。
「あ、会いたかったわよ!ルイベルト!」
「ポチよ。ルイベルトじゃないわ」
「さぁ、今日も散歩しよ!」
「私あなた知らないんだけど」
飼い主のおばあちゃんのツッコミをフル無視し、強引にどこかへ行ってしまった。
「シオリは散歩の予定があったみたいだな。じゃあルイ。お前は暇だな」
あいつ…!仲間を見捨てやがって。人のやることじゃねぇぞ!
「ついてきてくれ」
「はい…」
結局俺は強制的にギルドマスターの相談相手をさせられることになった。




