106話 グレイの運命
「…といった理由だ」
グレイは涙を浮かべながら自分の過去を明かした。
「最初はイケメン自慢かよ、殺すぞとか思ったけど、さすがに同情するよ」
「尊敬するぜ。俺だったら一人目で心が折れてた。それを百人も…」
その話を聞いて同情した俺立はグレイに歩み寄り、手を握る。
「グレイ…頑張ったな」
「お前は男の中の男だ」
「君たち…」
俺たちは熱く抱き合う。これは男としての尊敬だ。
「え、そんな泣くほど?」
「男の人しかわからないことなんでしょうね」
「はぁ。そういうものですか」
女性陣にはこの辛さがわからないだろう。こういうのは男だけで分かり合えればいいのだ。
「それより、こいつどうするの?」
感動の中、ふいにシオリが現実に引きずりだす。
確かに、この男は魔王幹部であり、賞金もかかっている危険人物なので殺したほうがいいだろう。しかし、俺にはどうしてもグレイを殺してほしくない理由があった。
それはサキュバスのことである。
サキュバスは、俺がこの世界にきてまず探したものの一つだ。だが見つからなかった。
その理由は、とある本に昔に比べてかなり数を減らし絶滅しかけだと書いてあった。それを知ったときは少し、いやかなり残念で異世界の楽しみが一つ消えたと思ったのだが、グレイはサキュバスに襲われたと言っていたのだ。つまりサキュバスはまだ存在するかどうかグレイが知っているかもしれない。
「生かしておいてもいいんじゃないか?」
「は?」
「何言ってるんですか?」
俺のわけのわからない意見に、勇者二人は驚いた顔をする。それはそうだろう。グレイを殺せば、賞金はたんまり入るし、名誉も手に入れることができる。有名になりたいシオリからしたら名誉は特にほしいものだろう。
だが俺はここで引き下がる男ではない。
何とか説得しようとしたその時だった。
「俺もこいつを生かしておきたい!」
フレイが俺の味方をしてくれたのだ。
しかし、その目にはサキュバスのことしか映ってなかった。




