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色彩ーremakeー  作者: 蒼依ゆき
夏季編
25/79

23-5.景色②

―――良樹side




 シンと静まり返る部屋の中で、雪那さんの鼻をすする音が聞こえる。ソファーの隣に座っている彼女を横目で見れば涙こそ流れていなかったが、目は赤くなっていた。そんな姿に失敗したなと後悔をしていた。



 今日は、那津(なつ)が白石さんに会いに行く日で、俺は当然のように部活があったため放課後は別々で帰った。


 部活が終わった後、いつも那津の家に寄るため当人は家にいないものの、そのまま黒岩家へと向かったのだ。家には雪那さんが1人で飯を作っており、それを手伝って一緒に夕飯を食べた。そこまでは良かったのだ。



「どうしよう、那津が帰ってくるまでにどうにかなるかな」



 引き出しから出した手鏡で顔を見た彼女は、思っていたよりも自身の顔が酷い状態だったことに困惑しているようで苦笑を浮かべていた。



「取り敢えず冷やそう、保冷剤とかある?」



 俺は立ち上がり、慣れた手つきで冷凍庫を開ける。中は整理整頓されており、彼女の性格が伺えた。いくつか変に散らばっている冷凍野菜があるのは恐らく那津の仕業であろうことは容易に想像できる。



「確か真ん中の小さい引き出しの奥にあった気がする。ごめんね良樹くん」


「いや、俺が余計なこと言ったせいだから……ごめん」



 奥の方で見つけた小さい保冷剤を台所にあったハンドタオルで包む。リビングに戻れば彼女は大きく息を吐き俯いていた。



「今は一旦忘れた方がいいよ、ぶり返してるし」


「分かってはいるんだけど、もうすぐだし」



 お母さんたちの三回忌、と小さく呟いた彼女の瞳にはまた涙が溜まっているように見えた。2年前の8月8日、それが黒岩家の両親を奪った日だ。そしてその翌日が那津の誕生日だった。



「今年は、一緒にお墓参り行きたいな」



 そう言った彼女はとても寂しそうに見える。それはそうだろう、家族ではない俺と行くよりも弟と両親に会いに行きたいに決まっているのだ。


 しかし去年は那津も荒れており、雪那さんと俺だけで行っていた。俺たちで話し合った結果、落ち着くまではまだ思い出させない方がいいといいうことになったのだ。


 そして今年は那津も普通に学校へ行っているし、高校生活も問題なさそうであるため、俺は提案してしまった「那津にも三回忌の話をしてみないか」と。



「まだ早いかな」


「自分で言ったくせに自信なくしてやんの」


「だって」


「それに、いつまでもこの話題から逃げてるわけにはいかないしね」



 ソファへ寄り掛かるようにして背を伸ばす彼女は、そのままの状態で目にタオルを乗せる。その目に涙が浮かんでいるかどうかももう分からないが、まだ溢れてくるのを必死に止めている状態かもしれない。そう考えると落ち着かない気持ちになる。



「取り敢えず映画を見ていたっていう言い訳をどうにかしないとだよね」


「うっ……」


「テレビもないのにどうやって映画見るんだって話じゃない?」


「いやほら」



 バッと起き上がり、その勢いでタオルが落ちる。言い訳を言おうと泳いでいる瞳はやはり赤く腫れているが、もう涙はないようで安心した。



「スマホがあるならまだしも、ないんだからフォローできないというか」


「お黙り、それを今から考えるんでしょうが」



 眉間にシワを寄せた彼女の普段通りの姿に思ず笑ってしまえば、デコピンをされる。そのまま睨めば、彼女は得意げに笑っていた。この負けず嫌いは相変わらずである。



「まぁ、適当に俺のスマホで見てたって言えばいい話なんだけど」


「いいじゃん、いいじゃん」


「ただ、何を見て泣いたことにするっていう」



 普段は全く泣かない彼女は、涙もろくないわけではない。どちらかと言えば昔はもっと涙もろい方だった気がする。この家に来るたびにTVとかゲームのイベントストーリーとかで泣いていたし。


 ただ最近は滅多に泣かなかった。泣けなかったのだろうし、泣くための映画をゆっくり見る時間すらなかったというのが正解かも知れないけれど。



「やっぱワンピのエ〇スを助けに行くところは何度見ても泣いちゃうよね」


「映画じゃないじゃん、それ」


「暗〇教室の最終回なんかも泣けたなぁ」


「だからそれ映画じゃない、アニメ」


 

 呆れたように溜息を吐く横で、楽しそうに今まで泣いた作品の話をし始めたが話の趣旨を忘れてしまったのだろうか。しかしここで話の腰は折らないことにして、彼女の話に耳を傾けた。





◇   ◇   ◇





「そうだ、こんな話をしている場合じゃなかった」


 約15分、話し続けて漸く現実に戻ってきたらしい。俺は泣ける映画で検索していたスマホの画面を消し、雪那さんへ向き直る。



「あの花劇場版で」


「採用」



 グッと親指を立てて許可をする彼女は満足そうにしている。今までの話の系統からアニメかゲーム作品が良いかと思って色々調べたわけだけど、正解だったようだ。この姉弟はホントに好みが似ているから分かりやすい。



「あとは、佐竹のことだなぁ」



 自然と溜息を吐くように吐き出した言葉に、雪那さんの表情も険しくなる。先ほどの電話では確実に佐竹、と言っていた。それはつまり彼がいる場所に佐竹がいたという事だ。すぐに正気に戻ってはいたが、帰りに会っていないことを祈るばかりである。



「私、一度会ってみた方がいいかな」


「さすがに止めて」



 もしそんな事しようものなら俺が全力で止めるだろう。正直佐竹の顔は見たくもないし、まだ鹿児島市内にいたという事実に苛立ちもする。那津が今、どんな感情で佐竹の事を考えているかは知らないし、例え許していたとしても俺だけは絶対に許さないと誓っている。



「怖い顔してるよ」


「うん」


「全部彼が悪いわけじゃないんでしょ?」


「……俺は嘘つきが大嫌いなだけ」


「子供だなぁ」




「ただいまー」




 子ども扱いをする彼女に反論をしようとしたところで問題児が帰って来た。俺は言いたかった文句を飲み込み立ち上がる。那津はすぐにリビングへと顔を出した。



「ただいま!これお土産の綿あめな、それから良樹が言ったやつは一個も買ってないから」


「おかえり、取り敢えずビンタな」


「なんでだよ!」


「はいはい、じゃれないの。おかえり那津」



 雪那さんは持っていたタオルをポケットへ入れ、立ち上がって俺たちの頭を撫でる。これも子ども扱いされているようで、いい気分ではなかった。


 那津は両手いっぱいにパステルカラーの綿あめを抱えて、不服そうにこちらを見ている。その姿はいつでもパンチがきていいように臨戦態勢ではあるものの屁っ放り腰だった。久し振りに見た最弱の喧嘩姿に思わず吹き出す。



「何笑ってんだコノヤロー!」


「取り敢えず綿あめもらうわ……てかなんで戦隊ものなんだよ」



 脇に抱えられていた青色の袋を奪い取り、ソファへと戻ると、彼もそれに続いて俺の隣へと腰を下ろした。



「いや、なんとなく」



 そうは言っても、絶対に何か理由がありそうな物憂げな表情だったわけだが、それ以上は何も聞かない。なぜなら雪那さんまでもがピンク色の袋を手に、また涙がぶり返してきそうな顔をしているのだから。



 ――そう言えばこの家族、ヒーローもの好きだったな。



 昔、那津のオヤジさんに初めて会った時、それはそれは大きな衝撃を受けた。


 まさか、いい大人が子供と一緒にヒーローを取り合ってヒーローごっこしているとは思わないだろう。結局、母親に怒られて泣く泣くサブヒーローをやっていたけど、悪役いないじゃんっていう。


 俺の家ではない光景だったから衝撃的だったな。まぁケンケン(良樹の祖父)は割と騒がしい方だったけど。


 開けられた袋からは甘い砂糖の匂いが漂ってくる。好き好んで夏祭りに行ったりはしないが、なんとなく懐かしい匂いがした。



いつもいつも更新が遅くてすみません!

2月になれば毎週更新または(できれば)毎日更新か、とりあえず頻度を上げて行こうと思っています。



割と終盤まで来ているなと、今気づきました。

恐らくここからトップスピードで話が進むかもしれません!

今までのゆっくりさはどこへ!となるかも……?

では、次もよろしくお願いいたします!!!

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