プロローグ 「夢の中」
ーーなぜ人は夢を見るのだろうか。
夢っていうものは色々な種類がある。正夢、予知夢、警告夢、他にもたくさんと…。
割と世界の不思議ランキング上位かもしれない。
ーー夢を見ていた。
誰だろう。黒いシルエットのなにかが俺に手を左右に振っている。そんな気がする。無意識的に俺はそれに手を振り返そうとするがなにかが原因で手を振り返すことが出来ない。
ーーなんでなんだ?
なぜ手を振り返すことが出来ないのかというとてつもない違和感が俺をじわじわと蝕んでいる。
俺は手を振り返すことが全く出来そうにないため、手を振ることは諦めた。
だがその黒い"なにか"を見ることは出来るため、それをずっと眺めていた。
夢ということもあるのか、見えているもの全てが不鮮明に映し出され、その黒い"なにか"に対しても変なモヤがかかっているようだった。
そしてその"なにか"の容姿は背丈が小学4年生~6年生くらいで頭にはシルクハットのような帽子をかぶっており、服は紳士服ともいえるようなものだと思う。しかし、どこまで見ても見える景色は不鮮明で、それが男性なのか女性なのかそもそも人なのか、というものが全く分からなかった。
ーー!?
と、ずっとその黒い"なにか"を見ていたとき、俺はふと気がついた。
あくまで感覚的に、の話であるが黒い"なにか"が近づいてきていた。
別に走ってきているわけではない。ずっと手を左右に振っていることは変わらないのだが近づいている。
俺の思っている感じでは恐怖心などは抱いておらず、むしろ好奇心が勝っているようなものだった。だがしかし、俺の体はそうはいかなかった。全身に鳥肌がたっているような感覚だった。心では興味を引くものの生物的本能がその黒い"なにか"を恐れていた。
ーー!?
そして俺はまた驚いた。
俺に近づくにつれてその黒い"なにか"はその速度をあげている。
俺の心の中は特に抵抗していないためその"なにか"と俺の距離はだんだんと縮まっている。
ーー当たる。
そんなときだった。その黒い"なにか"が突如静止した。
「ーー!?!?」
俺は困惑した。
このままいけば絶対にあたる、はずだった。
ーーなぜ、止まったんだ?
俺は突如止まったことに対して、頭の中で思考を巡らしていたが、答えを出す暇を与えてくれなかった。
なぜなら黒い"なにか"はまた新しい行動を始めてしまったからだ。
ーー黒い"なにか"が遠ざかっていく。
俺はたくさんの謎を残すその黒い"なにか"が遠ざかってしまうことが耐えられなかった。もう少しそれを知りたいと思ったのだ。
遠ざかっていくそれを俺は追いかけようとするが、動かないのは手だけでなく足もだった。俺の足は地面に瞬間接着剤でくっつけられたかのように動かなかった。
俺と黒い"なにか"の距離が瞬く間に振り出し以下に戻ってしまった。
「また、会おう。また会える日を楽しみにしているよ」
どこからか声が聞こえてきた。
音としては曖昧に、しかし伝わる感じでははっきりと。
俺はそれに答えるように口を開こうとするが手足だけでなく、動かないのは口もだった。
本当になにも出来ないこの世界、謎が多すぎて俺の脳内はパンク寸前だった。
遠ざかっていく黒い"なにか"はもう視認出来ないほど、離れてしまった。
1人残されたこの謎の世界、どうしようかと考えていた……
そんなとき俺はこの世界が崩れていくのを感じた。
「あぁ、もう起きてしまうのか」
直感でそんな感じがした。
ーー刹那、この世界は消失した。
この頃の俺は、この出来事が俺の日常を壊していくことになるということを全く予期していなかった。
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