第2話
後光がさす。女の子の両手には、金と銀にそれぞれ輝く球がある。惑いが大きすぎるばかりか、頭の中が真っ白だ。しかし、そんな俺の口からは、ぽろっとこんな言葉が出た。
「ど、どちらでもありません・・・。」
女の子は目を見開き顔をこちらに近づけ、こう言った。
「あなたは正直者ですね!よって、この金の命と銀の命、両方差し上げます!」
その女の子は、俺の目の前にその二つの玉を差し出した。俺は思わず、両手で受け取ってしまった。すると、その玉が手の中に入ってきた。
「うおあっ!!」
変な声が出た。それを見ていた女の子が爆笑している。
「ひゃははははは!!うおあて!あなた驚くにももうちょっとましな声出してくださいよ!」
体が熱くなる。恥ずかしさからくるものだと、しっかり確認できた。
「ん?」
にしても熱い気がする。まるで体の中で何かが燃えているような・・・・・。
!!!
「あつぅ!」
胸のあたりが確かに焼けている。実際には焼けていないが、そう感じるには十分すぎる熱さだ。思わず倒れこんでしまう。どうにか耐えようと息遣いが荒れている。
「コヒュ~!コヒュ~!」
「あの~、大丈夫、ですか?」
こうなった戦犯が、心配そうに話しかけてきた。悶える俺に、ゆっくり触れてくる。瞬間、胸から二つの玉と同じ金と銀の光があふれ出てくる。
「な、なんだ、これ・・・。」
すると、光がゆっくりと消えていく。同時に、熱さも消えていった。意識がはっきりしてきたので、ゆっくり立ち上がってみる。
「あ、あの~、なんか、すみませんです。てへぺろっ!」
女の子が、申し訳なさそうにてへぺろしている。かわいいが、歯痒い。
「おいーーー!なんだよこれ!『てへぺろっ!』じゃねえよ!色々わけわかんねえけどとりあえずお前をどうにかしてやる!」
「いやーー!やめてくださいですーーー!か弱い女の子を追い掛け回すなんて、17歳フリーター童貞のくせにさらに自分の人間的価値をさげるつもりですかーーーー!」
「うるせえ!そんな分かりきったこと言われても何も痒くないわーーー!って、なんでお前が俺のことをそんなに知ってんだよ!」
思わず立ち止まる。すると女の子も立ち止まり、こちらを満面の笑みで見る。
「あなたのことは、泉に落ちた瞬間からだいたい把握しています!改めてまして、私は泉の精です!この泉を担当をしてる精です!」
「い、いずみのせい?ってことは、ここはほんとに『木こりの泉』のいずみってこと!?」
「現実世界ではそのように私のことが広まっているらしいですね!でも絵本にするなら、もっと美しくグラマラスにボンキュッボンの書いて欲しいものです!」
この泉の精は、つくづく表現が古いようだ。
「いやボンキュッボンて・・・。あんたどちらかつったらロリのほうが近いだろ・・・・・。」
「あ!!人が気にしてることをズバリ言いましたね!ええそうですよ!何千年生きてるかわからないのに、見た目だけはずっと変わらない可哀想なロリですよ!」
「そんな生きてんのか!となると、さしずめ合法ロリか・・・・・。いや、ロリババアか。うん、好みです。」
「こいつちゃんとした変態ですぅ!」
泉の精が頭を抱えている。性癖がばれることに対してはたいしてダメージはないが、こうも変態とちゃんと呼ばれるのは少しきつい。なんてことを考えてる場合ではない。今は状況確認だ。
「なあ、教えてくれよ。俺はどうしちまったんだ?さっきの玉は何なんだ?」
すると泉の精は、笑顔でこう言った。
「比嘉 大介さん。あなたはこの泉に命を落としました。細かく言うと、この泉に落ちて死んでしまいました。」
「はあ!?」