夜空
お題
「この世界には二種類の人間がいる」から始まる小説
(2020/02/12執筆)
この世界には二種類の人間がいるみたい。
「んでさぁ、川人」
「どしたの」
「その人、どう振るべきだと思う?」
一つは、誰かに好かれる人間。
例えば、僕の幼馴染の理奈とか。
「どう振るべき、って言われてもなぁ……」
「男側からの意見をお待ちしております」
そういわれても、と困惑。
しかし理奈には伝わっていないらしい。答えを待ってるのが隣からひしひしと伝わってくる。
……困った。
「……僕、男側とも言い難いんだけどなぁ」
「あたしからみたら川人も男だよ」
はぁ、とため息をあからさまについてみせる。
……今のは何も考えてない、理奈はそういう発言、自らする子じゃない。
「ほれほれー、なんかないのかー?」
「えー……」
考える時に見上げる癖がある。空を見た。
まだ星座の配置は冬のままで、オリオン座がきらきら光ってた。
風は少し暖かくて、春が近づいてきていることを教えてくる。
気づいたらきっと夏になってるんだろうな、と関係ないことをぼんやり考える。
いつの間にか、僕につられてか、理奈も空を見上げていた。
「……星、すっごいきれい」
「……うん、きれいだね」
小声で賛同する。そもそも理奈も独り言なんだろうけど。
しばらく二人無言で歩く。平坦な道も沈黙も怖くない。
「……今日はお月さんいないね」
「新月なのかな……いや」
ぴたりと歩くのを止める。
数歩先に歩いた理奈が、僕が止まったのに気づいて、少し先で歩くことを止める。
少し距離があいた。
ここで、少し恥ずかしいけど、僕の思いつきを呟いてみよう。
「地球にはわからないように、月は光ってるでしょ」
「……そうだね」
「きっと見えない月もきれいだよ」
もう一つは、誰かを好きになる人間。
例えば、僕とか。