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翔田美琴のぶっちゃけトーク   作者: 翔田美琴
ぶっちゃけトークコーナー 1
5/29

5 邦画原体験

 今年の五月頃、友人が私の作家デビューを祝いたいと吉祥寺にてランチ会をした。その後、映画を観ようという話になり、映画館に向かった。

 その頃、吉祥寺のシネマでは、丁度「ラプラスの魔女」という邦画は上映していた。「ラプラスの魔女」という題名に何か面白そうに感じたのでそれを観ようと友人と話してチケットを買い観た。

 そして、映画が始まると必ずある他の映画の予告編が流れるが、私はその映画の予告編で、一瞬にして目を奪われた映画の予告編を観た。

 「娼年」という映画がそのタイトルだった。しばらくその予告編が頭に刻みこまれて、「ラプラスの魔女」という映画が始まっても、すぐには映画に集中出来なかった。

 「ラプラスの魔女」が終わり、私達はカフェに寄ったが、そこで友人に話してしまった。


「あの「娼年」という映画のインパクトが凄かったね。「ラプラスの魔女」より面白そう」


 帰った後も、私の頭の中はその「娼年」が気になって仕方ない。

 私はユーチューブを検索して、その頭に焼き付いて離れない「娼年」のプロモーションビデオを何度も何度もみた。

 六月の下旬頃、友人から吉祥寺でその「娼年」が上映するよと教えられた時は、早く行きたいとずっと思っていた。

 私の人生初の映画原体験みたいなものだった。

 

 「娼年」というのは、主人公が、身体を売る「娼婦」ならぬ「娼夫」になり、様々な女性の欲望を解放し、さらにはその主人公が成長する様子がうかがえる恋愛映画だ。

 ただし、”R−18”というレーティングがされているので、真昼間には上映出来なかったのだろう。午後の四時頃、上映が開始された。

 私はその「娼年」という映画をそれまで全く知らなかった。ただ、あの「ラプラスの魔女」の映画の前に流れた、あの鮮烈な予告編が頭の中で刻まれている。

 映画が始まって、すぐに映し出されたものは、主人公がセックスをしている真っ只中のシーンから始まる。

 目を皿にして観ていたのを今でも憶えている。

 そして、次から次へと主人公と相手となる様々な女性とのセックスシーンが流れていた。

 凄いのは、なんとボーイズラブ的なシーンがあったことだ。

 友人は男同士で身体を絡みつかせているシーンを、あの時は目を背けてしまったと後で聴いた。

 私はそれすらも目を皿のようにして、ずっと・・・ペットボトルの紅茶を飲むことも忘れ、お菓子を食べるのも忘れ、その映画の世界にどっぷり浸かってしまった。

 たっぷりと二時間まるまるある作品なのに、最後に流れる歌が美しいことこの上ない。

 ペギー・リーの「Mr.Wonderful」という歌だった。だいたい1956年頃の洋楽である。

 私はこの「娼年」を心の底から観たいと思えた映画だったので、忘れずにパンフレットを購入した。

 それを今でもきちんと保管し、たまに読んでいる。

 意外と神奈川県出身の俳優さんが多かったのは驚いた。

 

 映画を観終わって、私達は映画館出たのは夕食時の午後六時。

 だが、私は全てに”満たされて”しまい、空腹も感じなかった。「ラプラスの魔女」の時はすぐにお腹が空いたのに。

 もう、”満たされた”という想いで私は一杯だった。

 本当に”満たされる”状態ってこういう時なのだろうな。そう思う。

 だから、その日も夕食もたまたま寄った居酒屋で、一つ二つの、焼き鳥を食べ、ソフトドリンクのウーロン茶を飲んで、もうそれでお腹が一杯。

 その日の真夜中も、空腹を感じる時もなくあっという間に眠りについた。

 その日の帰りの電車で、友人に話した。


「これで、今書いているあの作品を描ける」


 実は「三つの背徳の果実」のシーズン0・プロローグ・オブ・バートンの構想を練っていた時に、この映画を観た。

 そして、思ったのは、主人公もそういう側面を持たせれば、ただの兄弟の権力争いだけの話になるより、もっと面白くなるって思えた。

 

 もし、あの時、私が「ラプラスの魔女」を観ていなかったら、この「娼年」に出会うこともなかったし、そういう映画があることも知らずに暮らしていて、今頃頭を悩ませていただろう。

 私の邦画原体験は「ラプラスの魔女」だが、本当に原体験だったのは「娼年」だった。

 あれだけ、映画の世界に惹かれて、洋画は観ていたが、邦画はあんまりとうか今年の「ラプラスの魔女」と「娼年」が初体験だった。

 もし、どこかの映画館でまだこの映画が上映中なら、何度でも観てみたい。

 DVDで発売されたら購入したい。そう思える邦画がやっと見つかった。

 

 あのペギー・リーの歌「Mr.Wonderful」の歌詞を検索して読んだら、歌われている内容は、恋する女性の歓びを表現した歌詞だった。

 もっと言うと、あの歌は、主人公に気持ちを満たされている女性の歓びを歌っている歌と思えた。

 本当にそうだと思う。まさに「娼年」を主題歌として誠に相応しい歌だった。

 密かに感動をしていた。本当にあの時は全てを満たされた。空腹も感じないし、頭の中は気持ちが凄いいい気分になっていた。

 また味わいたいと思う。体験してみたいと思う。

 あの”恍惚”としていたあの時間を。

 どこかで観られないだろうか?

 時間がたっぷりあるから、後で検索をしてみて、明日にでも観ようかと思う。

 今度は自分一人で。出来るなら、友人も連れて行きたいなとも思う。

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