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忘れ物  作者: 宮本 くつろぎ
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新聞社から連絡があってレコード会社を紹介された。

掲載されたポエムをミュージシャンが気にいったので提供して貰いたいという。

レコード会社を訪ねると相手が待っていた。

初めて会った気がしなかった。

テレビでよく見たからだと思った。でも最近はぱったりとメディアへの露出がなくなっていた。

雰囲気も様変わりしていた。

天才と呼ばれる彼女の歌は昔好きでよく聞いた。だから今回の話は素直に嬉しかった。


「十二年前に書いた曲がありまして、その曲が思うようにいかずにずっと悩んでいたんです。そんな時に新聞を拝見して、これだ!と思って。この詩を探してたんだって思ったんです」

 

彼女にとってこれが二年ぶりの新曲になるらしい。デモテープを聞かせて貰った。

緊張で良し悪しは分からなかった。曲を作り始めた頃は自分が人前で歌うなんて考えても見なかったという。十二年前、高校生の頃に書いた楽譜を見せて貰った。


「色あせてしまって。お見せするのは恥ずかしいんですけど」

「いやいや、すごいですね。こんな貴重な曲に携わらせて頂けるなんて。実は僕も昔…」

 あれ?と思った。どこか見覚えがあった。

「どうかしました?」

「いえいえすみません。何でもないです」


帰り際「奥さんと娘さんにこれを」と外国のお菓子を貰った。その袋の中には娘への手紙が入っていた。


大舞台に立つ赤いユニフォームの高校生に日本中が興奮していた。

オリンピック女子卓球。今大会一のダークホースが決勝まで駒を進めていた。

対戦相手のサービスから始まる。前回優勝の絶対王者は万全の態勢だった。

鋭く弾んだレシーブは力強く打ち返された。粘り強くそれを拾う。

試合前からずっと彼女の胸の中に歌が流れていた。

今もそれはやむことはなかった。

父親が詩を書いた自慢にしてきた曲だった。聞こえてくるメロディに身を任せる。

一瞬一瞬が幸せだった。楽しくてたまらなかった。自然と心が弾んだ。

相手の懐をピンポン玉がすり抜ける。相手は棒立ちでラバーをじっと見つめた。床に転がるボールを拾う。挑戦者は無邪気に飛び跳ねてガッツポーズを見せた。会場が大きく沸いた。


翌日の朝刊には満面の笑みで涙を流す少女の写真が一面を大きく飾っていた。

その隣には「宮本 金メダル!」とあった。


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