第3章 第37話 機関
いつもこの物語をお読みくださり、ありがとうございます!
いつのまにかこの物語を書き始めて1年が経ってました・・・。時が過ぎるのははえぇなぁ。
話を振られて、僕は少しだけ考え込む。話してもいい部分と話すべきではない部分をだ。それを決定するまでにかかった時間は約2秒。上出来だ。
「僕の名前は(この世界では)ショウ=キリュウイン。ここから遠く離れた国の生まれです。」
世界をまたいで離れた国のね。
「その国の中で、僕は18歳まで学校へ通っていろいろ必要なことを学んで習得したところで、さらに高度なことを研究する研究機関のようなところに3年と少しの間所属してました。」
言わずもがな、出牛唆大学のことである。
「そしてそこで僕は師匠に出会い、彼に師事して、世界トップクラスの・・・いえ、世界トップの『魔法のような技術』を、1年と少しをかけて習得しました。
まだすべてを習得したわけではありませんが。」
ブラック・キャットの技術を超えるレベルのマジシャンは、未だに世に出てきていない。僕がこの世界に来る日までのことしか断言できないのが締まらないところだが、そこはご愛嬌。
「たった1年であそこまでやれるようになったのか? それはすごいな。」
お嬢様が口をはさむ。
「そうですね・・・。素晴らしい師匠にめぐりあえることと、技術練習を苦に感じないことと、密度の濃い練習を可能な限り続けられること。この3つの条件を満たすことが出来れば誰でも行けると思いますよ。」
実際、マジックの腕が何で決まるかと言えば・・・『いかに練習をしてきたか』というところに収束すると僕は思っている。どんなに不器用な人でも、練習さえ積めばマジックを行うことは可能だ。
「貴様の師匠と言うのは・・・あの酒場に居たエルフの男だな?」
「ええ、そのとおりです。彼も僕と同じように、研究をしながら『技術』を磨いていました。」
卒業論文に追われながらも、マジックを学び、練習する日々・・・研究発表のせいでド鬱な気分になることもままあったが、その日常は間違いなく楽しかった。今となってはもう、その生活には戻れないのが残念だ・・・。
「研究機関生活4年目が始まってすぐのころに、僕の師匠が機関を抜けてこの街に引っ越しました。そして、新年が明けてまもなくの頃に、僕ももろもろの理由で研究機関を辞めて、師匠を追う形でこの街に引っ越すことになりました。」
『お互いに日本で命を落として、この世界にやってきた。』というとんでもない理由からだが。
「その理由というものを、聞いてもいいか?」
やはりお嬢様もそこは気になるか。しかしこればかりは話すわけにはいかない。
「残念ながらお教えできません。機関のトップシークレットとかかわってくる内容ですので。」
「そうか。」
そういうことなら仕方がないか。と、お嬢様は納得して引き下がってくれた。ありがたい。
「そして、この街での新生活が始まったんです。」
僕の話は、まだまだ続く。




