第3章 第36話 『いい子』
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「これらすべての出来事からも、あいつらに『私=吸血鬼』であることがバレていることは疑いようもなかったんだ。
しかし私にはわからなかった。私が『吸血鬼』というとびきり危険な魔族であるのに、始末しようと動くわけでもなく、むしろ私に良くしようとする理由がな。だからある時フリナックに直接聞いてみることにしたんだ。『貴様ら本当は気付いているんだろう? 私が人間ではないことに。なぜ私を始末しようとしない?』とな。
そしたら、なんて答えたと思う?」
「・・・『ヌホクリーデさんが吸血鬼であることに気付いていること』をあなたに悟られれば、自分たちが殺されると思ったからですか? でもそれだと、自分が吸血鬼の特性に配慮した行動をすることはむしろ避けるはず・・・。」
「そうだろうな。行動がそのままそれの証明になってしまうからな。」
「他の理由、ですか・・・。うーん・・・・・・。」
しばらく考えてみたが、納得できる理由は浮かんでこなかった。
「残念ながら時間切れだ。
正解を教えてやろう。奴らはな、『お前が吸血鬼であったとしても関係ない。お前がまっすぐな優しい子であるからだ。』などとほざきやがったんだ。」
『拉致のようなことを平然とするのに?』と言いたかったが、こらえる。
「何を言っているんだと思った。だから詳しく話してもらうことにした。そしたらな、フリナックはこんなことを言ったんだ。「わたしたちは、最初にお前と出会った時から『お前が人間ではないこと』に気付いていた。」と。」
そんなばかな・・・。一目見るだけで、そんなことがわかるものなのか? すさまじい観察眼だ。
「『人に擬態できるほどの危険な魔物を野放しには出来ない。自分たちの目の届くところに私をなんとしても置いておきたかった。そして隙を見て、人に仇なす者であるお前を最初は殺すつもりだった。』なんてことを言われたな。
だが、フリナックたちはそうしなかった。理由を聞いたら、『お前が人に害をなす者であったならば間違いなくそうしていただろう。だが一緒に暮らしていればわかる。お前はいい子だ。お前は人を傷つけるようなことをする子じゃない。わたしの目がわたしにそう訴えてきた。』と言っていたな。あの時ほど“見当違いも甚だしいな。どれほど貴様は自分の目を信用しているんだ”と言ってやりたいと思った事はなかった。というか言った。」
・・・・・・。
「口調の割にはなんだか嬉しそうに見えますね?」
「うるさい。
・・・まぁ、確かに貴様の言うとおり悪い気はしなかった。実際、私は今まで人間をむやみに傷つけたことはないし、殺したこともなかった。それは『人を襲えば、その瞬間に私は「タダの魔物」に堕ちてしまう。そんなことはプライドが許さなかった』というだけの話だが、私のその生き様が、フリナックの目には「いい子」として映ったのだろうな。」
「なるほど・・・。」
「『見当違いも甚だしいな。』と言ってやったら、フリナックは『照れんでもいいんだよ?』などとほざいて、朗らかに笑う始末だ。完全に私が『いい子』だと信じて疑っていない様子だった。だからちょっと脅しをかけてみた。こんなふうに。」
言って、お嬢様は目にもとまらぬ速さで僕に近づくと、ぴんと伸ばした指先を僕に向かって伸ばし、心臓に触れるか触れないかのところで止めていた。一連の動きに、僕は全く反応できなかった。
その気になれば、僕の心臓を貫くこともたやすかっただろう。
「今と同じように動いて、『私がその気だったら貴様は死んでいたぞ。これでも私がいい子だと思うのか?』と言ってやった。それでもフリナックの笑みははがせなかった。『お前がいい子じゃなかったらわたしはいまごろ死んでいるよ。』なんて言いだす始末だった。その時点で、私は『いい子』であることを否定することを諦めた。
そして、なんだかんだと居心地の良いこの家で養子という形で居候を続けて、今に至るというわけだ。
スパイ活動の方も、もう2年以上何もしていないな。」
この家の養子として生きている方が面白いしな。と言うお嬢様。魔族側としては、スパイが音信不通になったことに関しては何も思っていないのだろうか・・・? 気になるところだ。
「私の身の上話としてはこんなところだな。次は貴様の話を聞こうではないか。
いろいろ教えてくれ。」
お嬢様に話をせがまれるが・・・さて、どこからどこまで話そうかね・・・。




