第2章 第2話 言語に秘められし可能性
それからしばらくの間、受付嬢―フィーアさんは驚愕のあまり発狂してしまっていたが、驚きも時が経てば薄れるもので彼女も次第に自我を取り戻していき、3分後には元の彼女に戻っていた。そして正気に戻ったフィーアさんは、僕に完成した冒険者カードを手渡してくる。大きさは大体遊○王カードを縦と横に1.5倍ほど大きくしたくらいだろうか。
「こちらがこのギルドの組合員証となる冒険者カードです。表面には自分の名前とLVと職業と所属部署、冒険者ランクが記されております。所属部署は冒険者カード作成を依頼した場所となるので、キリュウインさんの場合ですと、ここイシュタル支部所属となります。」
受け取ったカードを見てみるとそこにはたしかにイシュタル支部所属の文字が鎮座しておられた。そして名前の横に大きく記されているFの文字。これがランクを示しているのだろう。しかし異世界にもアルファベットが存在しているとは・・・国際言語の名は伊達ではないということか。恐ろしいことです。
僕が言語の無限の可能性におののいている間も、フィーアさんの説明は止まらず続く。
「また裏面の上半分にはご自分のステータス・・・具体的にはカードの持ち主のHP、MP、筋力、防御力、素早さ、精神力を、下半分には自分が習得したスキルや魔法が記されております。またこれらの数値や習得したスキル等の情報は、数値が変化した瞬間やスキルを習得した瞬間に自動的に更新されます。また、新たにスキルや魔法を習得すると、冒険者カードが音を出してそれを知らせます。」
裏面を見てみるとそこには先ほど紙に書いたとおりのステータスが並んでいた。防具とかを装着すれば防御力の値が変わったりするんだろうか。あとで試してみよう。しかし、カードに記された文字が勝手に変わるとは・・・さすが異世界、いろいろ便利だ。
「ここまででなにか質問等はございますか?」
ううむ、質問か・・・。
「冒険者ランクについてくわしく教えて下さい。」
個人的にはFからはやく脱却したいしね。なぜかって? 出牛唆大学においてFは再履修確定を意味していたからだよ!
「わかりました。では説明させていただきます。
冒険者ランクについてですが、上から順にAランク、Bランク、Cランク、Dランク、一つ飛んでDランクの下にFランク、の5つのランクが存在します。初めて冒険者登録をした方は、たとえどんなお偉いさんだとしてもFランクからのスタートとなります。」
ふむふむ。一番上のランクはSではなくAなのか。評価のシステムまで出牛唆大学と同じ方法とは・・・これはますますF脱却への熱意が燃え上がるな・・・。
「いわゆる初心者の方がFランクに当たります。そして初心者を脱却し、少し冒険者に慣れてきた方、このくらいの方がDランクに該当します。レベルで言うとだいたい50前後くらいでしょうか。
そこから経験を積み、ベテランと呼んでもいいと思わせるような方、こちらがCランクに相当します。そこからさらに経験を積み、国によく貢献し、確かな力を示した冒険者さまがBランクに、そして、Bランク同様国に貢献し、『もうこいつ一人で国一つ滅ぼせるだろ』と思わせるくらいの力を示し、人格等に問題なしと判断された冒険者さまがAランクに該当します。」
ふむ、なるほど・・・。
「ランクを上げる手段ですが、ギルドが出す依頼をこなすとランクが上がることがあります。依頼をこなし、ギルドマスターがランクを上げてもいいと判断した場合のみ、ランクが上がります。なのでがんばって依頼をこなしてください。依頼の受け方ですが、冒険者ギルド内に置かれている掲示板に留められている依頼書を掲示板から取り、それを受付に自分の冒険者カードとともに提出することで依頼を引き受けたことになります。依頼書には、推奨ランクが記されておりますので、ご自分のレベルに見合った依頼を受けるようにしてください。」
F脱却には依頼の完遂・・・!
F脱却には依頼の完遂・・・!
やってやる・・・!やってやるぞ! しかし今日は・・・。
「わかりました。説明ありがとうございます。」
「他には質問はございますか?」
いろいろ思案したが、とくに思いつくことはなかった。だから素直に「ありません。」と返事を返す。
「わかりました。冒険者カードは常に携帯し、無くさないように注意してください。紛失された場合、再発行をしなければならないのですが、その際に手数料として10000Gいただくことになりますので。
説明は以上ですがこのあとはどうされますか?何か依頼を受けてみますか?」
フィーアさんが訪ねてくるが僕はもう今日の予定を決めていた。そう、
「いえ、今日はもう宿に行って休むことにします。依頼は明日から引き受けることにします!それでは!」
外はまだ明るかったがそう言って僕は今日依頼を受けるのを辞退する。とりあえず働くのは明日からだ。
「・・・・・・お気をつけて。」
フィーアさんは若干呆れた顔をしていた。