第3章 第30話 おおせのままに
長いこと更新できなくてすみません!
「帰ったぞ、セロイグ!」
荘厳な扉を、なんのためらいもなく力任せに右手でバン! と開け、お嬢様は堂々たる帰宅宣言をする。扉を開けるのに使わなかった左手は、あいも変わらず僕の腕をつかんでいる。
「おかえりなさいませ、お嬢様。
と・・・今回はまた奇妙な方をお連れしてきましたね・・・。」
そんなお嬢様の派手な帰還を、玄関前で待機していたであろう執事の人が頭を下げて出迎える。この人が『セロイグさん』なのだろうか。とりあえず、僕は掴まれた腕はそのままに、一度きちんと立ちなおしてから『はじめまして。』と頭を下げた。
「これはこれはご丁寧に。
はじめまして。私はソーア家で執事をさせていただいておりますセロイグ、と申します。以後、お見知りおきを。」
これが本物の執事というやつか。これまでの人生をもってしても、生で見たのは初めてだ。挨拶だけで、この人は『出来る人』だ―というイメージが強烈に植えつけられた。そしておそらく、そのイメージは間違っていないだろう。
「して、あなたは我が家にどのようなご用件がおありなのですかな?」
セロイグ執事のこの質問には、我らがヌホクリーデお嬢様が答える。
「ああ。こんなナリだが、これでなかなか面白い奴だからな。私の独断でここに連れてくることにしたんだ。いつものようにしばらくの間ウチでもてなすことにしたから二人にはよろしく言っておいてくれ。」
このお嬢様、今『いつものように』って言いやがった。こういうこと(拉致もどき?)を日常的にしているということか。なんて奴だ。
「かしこまりました。
このセロイグ、しかと奥様と旦那様にお話を通しておきましょう。」
胸に手を当て、軽く頭を下げるセロイグ執事。
「頼んだぞ。
私はこの者と私の部屋で話をしているから、その間にこいつ用の部屋を用意しておいてくれ。」
遠慮というものを言葉からして知らなそうなお嬢様は、セロイグさんにさらに追加注文をかける。セロイグさんは、追加注文にも全く動じず、
「かしこまりました。お嬢様のおおせのままに。」
と、優雅な礼を返していた。
それを横目にしながら、僕はお嬢様に連れられて彼女の部屋へと向かった。
セロイグ執事とお嬢様の一人称が、漢字にするとまったく同じなのがややこしいですね・・・。
セロイグ執事の方の一人称は『わたくし』で、お嬢様の方は『わたし』ということにしています。




