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第3章 第28話 歩くがよい

遅れてしまってすみません!

更新です!


お嬢様の完敗宣言がなされたことで、場の空気の中から張りつめたものがなくなる。それにより、入れ替わるようにしてこの居酒屋的三次元空間に穏やかな空気がその場を満たしていくが、まだ全ては終わったわけじゃない。僕にはまだやらなければならないことが残っている。それは、このお嬢様も忘れたわけではなかったようだ。


「ニシムラ。私は貴様との勝負には負けたが、この男との勝負には勝っている。だから、貴様らとの誓約にのっとり、私はこの男に一つ要求させてもらおうと思う。」


 無論、危害が加わるようなことは要求しないぞ。と、加えるお嬢様。


「・・・僕に何を望みますか?」


 自然と、探るような口調になってしまう僕だった。こういうメンタルの弱いところが、西村に『まだ精神的に修行が足りない』と言わせる要因なんだろうな。

 僕の言葉を受けたお嬢様は、黙ってつかつかと靴音を響かせて僕の前までやってくる。そして僕の肩に手を置くと、オルガさんに向かって、


「一週間ほどこの従業員を借りるぞ。無論、その使い魔とやらもセットでだ!!」


 と高らかに宣言した。僕たちに拒否権はなかった。





 ・・・本当に連行されることになってしまいました。

 僕は今、いくつかの商売道具とサイフと怪しい仮面(今現在も装着中)だけを持ち、マリーを肩に乗せ、さらに、愛用の日傘をさしているお嬢様と一緒に表通りを歩いている。ハタから見たら、良家のお嬢様と不審者の構図になる。不本意なことこの上ないが、指名手配されている以上、顔をさらすわけにもいかないので現状に甘んじているというわけだ。そして、現在どこに向かって歩いているかと言えば、今僕の横を歩いているお嬢様のお屋敷だ。このお嬢様のことだからてっきり馬車とかに乗るものだと思っていたのだが、そんなことはなかった。そのことを指摘したら、


「私は歩くのが好きだからな。」


 と、日傘をくるくるしながら言われた。いまどき珍しい若者だ、と言えるかもしれない。


「ところで、貴様はその仮面は取らんのか? 歩くのに不便だろう。」


 こっちとしても取れるなら取りたいんだけどねぇ・・・。


「・・・ちょっと、やんごとなき事情がありましてね。外に出る時はこの仮面をつけるようにしているんですよ。」

「しかしそうは言うが貴様、あの店の中でも仮面をつけていたではないか。」

「・・・正確には、外部の人間と接触するときにはこれを付けざるを得ないんです。」


 顔で身元がバレると困るからね。


「・・・なにやら特殊な事情があるようだな。」

「ええ、まあ・・・。」


 指名手配されていたり、指名手配されていたり、指名手配されていたりね・・・。



「お、着いたぞ。ここだ。」


 あれから、さらに20分ほど歩いただろうか。目の前には、今までに見たこともないような荘厳さに覆われたお屋敷が鎮座していた。


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