第3章 第25話 お嬢様と西村 その6
今回も西村視点でお贈りいたします~。
GPSというものがある。最近はいろんなところにこの仕組みが組み込まれていることが多いので、これについての説明は不要だろう。俺は、これまでの流れから『このお嬢様はGPSと似たような原理を応用することで任意の物体の座標を把握することが出来る』と確信に近いレベルで思っている。となれば、重要になってくるのが『精度』だ。左右前後上下方向の3次元的にもmm単位で正確に物体の場所を把握可能であるほどに精度が高ければ、俺はかなりの不利を強いられることになる。勝負内容が勝負内容だけに。
だが、それほどの正確さを持つ探知魔法や探知スキルは存在しないことを俺は知っている。この世界に来て、オルガさんに拾われてから魔法やスキルについての勉強は一通りやっているからな。出来るとしても上下左右方向の2次元的把握だけだ。だから・・・こうすればどうだ?
俺は『GPS発信機と化しているであろうコイン』を右手の親指に乗せ、それを天井高く弾く。そして落ちてくるコインをどちらの手で取ったかわからないよう、右手と左手を巧みに使いキャッチする。そしてどちらかの手でコインを手にした瞬間、素早く両の拳を握る。だが、これだけで俺の小細工は終わらない。
「さぁ、どちらの手にコインがあるか・・・わかります―」
俺は、目の前のお嬢サマの目線の高さに両腕を持ち上げると・・・。
「―かッ!」
『ッ!』のセリフの部分で拳を突き出した。ただし、ただ突き出すだけじゃない。突き出し方を工夫させてもらった。その工夫が正解だったかどうかは―
「くっ・・・!!」
この目の前のお嬢サマの焦っている顔を見れば明らかだ。これは明らかにコインの位置を特定できないでいると考えていいだろう。
俺がやったお嬢サマ封じの腕の突き出し方は・・・まず、両腕を相手の目線と同じ高さでまっすぐ伸ばす。そして、握った拳を縦に二つ重ねることで拳で雪だるまを作る。この時、コインを持っている拳の方が上に来るようにするのがポイントだ。最後に、その『雪だるま』を、手首を曲げることで拳がお嬢様目線から見て一直線に並ぶ―つまり、上の拳が死角になって下の拳が見えなくなるようにすればそれで完成だ。こうすればお嬢サマがコインの位置を特定しようとしても、右の拳も左の拳も上下左右方向的にはまったく同じ場所に存在していることになるため、コインがどちらの拳にあるか特定することは出来ない。これで純然たる50%の賭けの勝負に持ち込めた、ということになる。
しかし、まだ完全に敗北する危険が過ぎ去ったわけではない。カンで場所を当てられてしまう芽は、まだ残っている・・・。
「くそ・・・・・・。」
焦りと不安が入り混じった表情をしだすお嬢サマ。どうやら別の策の用意はなかったようだ。少しホッとする。
「・・・・・・・手。」
3分ほど経った頃、お嬢様はすねたような口調で小さく何事か漏らした。
「はい?」
「だから、右手だと言っている。
その、上側の拳にコインがあるはずだ! 私はその可能性に賭けるぞ!」
「・・・・・・。」
・・・・・・まじかよ。やけくそに宣言したそれ、当たってるんだが・・・。




