第3章 第19話 ひとつの戦いの決着
お嬢様が宣言したコップを開けると、そこには、鈍く輝くコインがあった。間違いなく、僕が移動させたコインだった。なにせ、最終的にその場所に移動させたのは、この僕なのだから。それが本物であることは、この僕が、痛いほどに理解していた。
「おいおい、嘘だろ・・・!? キリュウインが、負けた・・・!?」
思わずといった調子で、オルガさんが声を漏らしているのを、どこかぼんやりと僕は聞いていた。テーブル上のコインと僕の間で、オルガさんが視線を行ったり来たりさせているのをなんとなく感じる。今の僕には、そちらを向く余裕すら残されていなかった。
「まじかよ。今のを見破るのか・・・。まさか・・・?」
この結果を受けて、西村が独り言をつぶやきながら、思考にふけりはじめる。マリーは、テーブルの上からこちらを心配そうに見上げているだろうことはわかったが、やはり、反応を返せるだけのエネルギーは、今の僕にはなかった。
「勝負あったな。・・・この勝負、私の勝ちだ。」
お嬢様の無情な勝利宣言が、居酒屋の一室に響いた。
「くっ・・・!」
その一言は、僕にクリティカルヒットする。思わず体がびくりと震えた。
しかし、今でもこの結果が信じられなかった。おかしいと思った。納得が出来なかった。挙動は完璧だったはずだ。だからお嬢様にはコインの位置が分かっていなかったはずなのだ。仮にコインの位置を当てられることがあったとしても、それは、悩んだ末のギャンブル的賭けの末に当てられることになるはずで、今のように確信を以って場所を当てに行くなんてことは出来ないはずなのに・・・!
「・・・どうして・・・・・・。」
自然とこぼれたつぶやきだった。いったいどうして、このお嬢様は自信満々に当てに行くことが出来たのか・・・。 何の根拠があってそんな真似が出来たというのか・・・。
僕のつぶやきに、お嬢様は律儀に言葉を返した。それが勝者の務めであるかのように。
「貴様は完璧だったよ。見事な手際だった。それは間違いない。私でなければコインの場所は見破られなかっただろう。・・・だが。」
お嬢様はここで言葉を切った。
「私が、そのさらに上を行った。それだけだ。」
その言葉を聞き、僕は自然と拳を力の限りに握りしめていた。ちがう、そうじゃない。もっと具体的な何かがあるはずなんだ! この勝敗を決定づけた、決定的な何かが・・・! しかし、それが何かが・・・わからない・・・!
「それだけ・・・。」
「そう、それだけだ。貴様にはないものが、私にはあったということだ。
さて・・・。」
ここで、お嬢様は僕から視線をずらし、西村を見た。そして、
「次は貴様の番だな。貴様は、私に何を見せてくれる?」
そんな挑戦的な言葉を吐いた。




