表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/110

第3章 第17話 お嬢様とコイン その7

残念だが今年の更新はこれが最後だ・・・。


「さあ、どうです? コインの場所、わかりますか?」

「・・・・・・・。」


 コップを動かす手を止めてから、僕はヌホクリーデさんに問いかける。場所を入れ替えられたこの3つのコップの中に、正解は1つだけしかない。それを、このお嬢様は見極められるか・・・?

 お嬢様は、「うーむ・・・。」とうなりながら、コップを一つずつ順番に睨み付けていく。当てられるんじゃないかと、見ているこちらまでドキドキしてくる。


「ニシムラ、お前はわかったか?」


 僕がコップを移し替えるのをずっと横で見ていたオルガさんが西村に尋ねる。


「・・・俺にもわかりません。一応、『アレじゃないかな。』という目星はつけていますが、正直自信はありません。」

「だよなぁ。あたしもさっぱりだ。」


 僕の横でオルガさんたちはそんなやりとりをする。それを聞いて、僕は少しだけだが安堵した。『西村にも分かっていないなら大丈夫だ。』と。

今回コインの場所を当てられてしまうことがあるとすれば、それは『コインを別のコップにパスする瞬間をはっきりと目撃されている』場合だ。僕のマックススピードのコップ移動にも平然とついてこれる相手だからこそ、そこを見咎められていればおしまいであると言える。だが、それは逆に言えば『見られていなければ勝てる』ということでもある。

 コイン移動に用いたトリックである『コインを別のコップにパスする』という技だが、これには弱点がある。難易度の高さもそれに当たるが、それ以上に『角度に弱い』のだ。コインのやり取りをするためにコップを傾ける必要がある以上、どうしたってコップの向きは変化してしまう。コップを傾ける向きは相手から見て前後方向であるから、『コップが傾いていることには気づかれにくい』ことは救いではあるが、このお嬢様クラスの動体視力の持ち主が相手では、それは気休めにすらならない。ましてやこのマジックを横から見られでもしようものならなおさらだ。ではなぜ一度目の勝負の時にお嬢様に気付かれなかったのか? という話になるのだが、それは、コップを傾ける角度を、『コインが飛び出せるギリギリだけしか傾けない』からだ。この時に作っている傾きは、コップを掴んだ際にちょっと手に力が入っていれば自然に発生してしまう程度のもののため、相手はこれを不自然には思わない。今、僕の師匠である西村にコップ移動を横から見られていたにもかかわらず、西村がコインの場所を正確につかめていないから、コップ移動を正面から見ていたお嬢様にだってわかるはずがない。こうなってくると怖いのは1/3の直感でコインの位置を当てられてしまうことだが・・・ここについてはもう、祈るしかないだろう。


「どうですか? どのコップが正解だと思いますか?」


 僕はヌホクリーデさんに質問を投げかける。考える時間は与えさせない。そのつもりで、鋭く切り込む。

 ヌホクリーデさんは、静かに一つのコップを指さした。


「・・・そのコップの中だ。」


 お嬢様が指さしたそれは、『僕がコインパスをしていなかった』と仮定した場合に最終的にコインが入っていたコップだった。僕は軽く息を飲むと同時に勝ちを確信した。やはり大した眼だ。だが、一歩、及ばなかったな。

 僕は結果を見せるために、笑みを隠してマリーにお嬢様が指示したコップを開けてもらうようにお願いする。だが、ヌホクリーデお嬢様のセリフは、そこで終わりではなかった。


「と、普通の者ならば宣言するのだろうな。」


 ・・・おや?


「断言しよう。そのコップの中にはコインは入っていない。」


 言うがはやいか、お嬢様はコップを持ち上げる。そこにはお嬢様の言うとおり、コインの姿はない。


 これで、残るコップは2つ、だ。



次の更新は、来年になってからになります。

一月最初の週のどこかで更新したいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ