第3章 第12話 お嬢様とコイン その2
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『僕が左手で持っているコップの中にコインがある。』と、断言したお嬢様。横で一連の動作を見ていたオルガさんや西村も、僕の左手のコップに視線を集中させているのが僕にはわかった。
「では、コップを開けてみましょうか。」
ゆっくりと、僕は左手のコップを持ち上げていく。コップがどけられたそこには・・・銅のような色で輝く、一枚のコインがあった。
「ふふん、どうだ思い知ったか! あの程度の動き、私にかかれば見切ることなど造作もないぞ!まだまだ修行が足りないのではないか?むはははははは!」
『思い知ったか!』の部分で、腕を伸ばして僕に己の人差し指をビシリと突き付けて、ドヤ顔をし、高笑いを繰り出すお嬢様。ひまわりが咲いたような、と喩えられそうな素敵な笑顔だ。そのうち足をテーブルに乗せてさらなる笑いを繰り出してくるかもしれない。
ちらりと横目でオルガさんたちの方をうかがう。オルガさんは『おいおいおいおいおい、大丈夫なのかよ!?』と言いたそうな不安げな表情を、西村は『ここからだろう? うまくやれよ?』という意味が込められた笑みを浮かべていた。僕はそんな二人に『もちろんここからが本番さ。大丈夫。』という思いが届くように、彼らに向けて左目でウインクをこっそり返す。
そう、まだ僕のマジックは、始まってすらいないのだ。ここまでは言ってみれば、撒き餌のようなものだ。そしてターゲットは今、見事にそれに食いついている。あとは、仕上げをごろうじろ、だ。
「いやはや、おみごとです。」
僕はヌホクリーデさんに称賛の言葉をおくる。皮肉の意味合いはない。実際、あのフェイントモーションを正確に見切るのはかなり難しいのだ。
「ふふん、そうだろうそうだろう!もっと褒めてもいいぞ!
しかし、貴様の言う『技術』とやらも大したことないな。少し驚かされはしたが、そこまでだ。」
それは、どうかな・・・。
「ふっふっふ・・・。」
突然意味深に笑い出す僕。ハタから見たら立派な不審者である。
「それはどうでしょう?」
切り出し方は、こんな感じがいいだろう。
「なに? どういう意味だ?」
そのセリフを受け、狙い通りにお嬢様が食いつく。
「今僕がやったのは、あくまでルールを説明するためのデモンストレーションです。確かに、僕はそこでひとつの技をお見せしましたが、あれは僕が言うところの『魔法を使わない、魔法のような技術』ではありません。」
「ほう。言うではないか。
つまり、まだ出していない奥の手がある、ということだな?」
挑戦的にこちらをみてくるお嬢様。この瞬間がたまらない。目の肥えた客と僕の真剣勝負。頼れる武器は磨き上げた己のワザ一つのみ。嫌でも気持ちが昂ってくる。
「そうです。ルールも理解していただいたところで、本番と行きましょう。好きなコップにこのコインを隠してください。」
僕はテーブルの上の100G銅貨をつまみあげ、ヌホクリーデさんに突き付ける。お嬢様は、とても機嫌が良さそうに笑うと、
「いいだろう。貴様の本気、拝ませてもらおうか!」
と言いながら、僕の指先から、コインを奪い取った。




