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第3章 第1話 お酒は二十歳になってから

お待たせいたしました! 第3章の開幕です!


 ガタツという男の魔の手からなんとか逃げ出した僕は、そのままとある場所へと向かって走っていた。そのとある場所というのが・・・。


「ここか・・・。」


 見た目は古びた居酒屋のような感じだ。台風が来たら3秒と持たず吹き飛んで行ってしまいそうな外観だが、現在もこうして残っているということは意外としっかりしたつくりをしているのだろう。

 手元の、紙で出来た名刺を見て場所を再確認する。間違いなくこの場所だ。


「・・・よし、行こう。」


 傍らにいるマリーとともに一つうなずき、僕はお店の引き戸を開けた。ドアに張り付けてあった『現在準備中』の札は、完膚なきまでに無視した。





「おい小僧、まだ準備中だ。表の札が見えなかったか? それともまだ字が読めねぇのか?」


 お店の中に入ったら、カウンターの中でグラスを磨いていた従業員からそんなことを言われた。まあ、言い方はともかく、まだ営業時間になっていないのにお店に入ってきたらそう言われるのも当然のことだ。

 僕は、その従業員に近づくと、


「オルガさんの紹介でここに来ました。彼女に会わせてくれませんか?」


 とお願いした。これですんなり会えるかと思いきや、


「証拠はあんのか? お頭が小僧にこの店のことを紹介したっていう証拠が?」


 と言われてしまい、オルガさんに会うことは叶わなかった。なぜだ・・・。


「証拠ですか・・・?」


 証拠と言われてもなぁ・・・。


「ああ。お頭の紹介なら、渡されてるモンがあるだろ。そいつを出しな。そしたら、小僧を信用してお頭に会わせてやるよ。」


 ・・・ああ、そうか。あの時に渡された名刺のことか。その名刺は今、僕の上着の内ポケットの中にある。それをそのまま渡すのは簡単だが、それでは面白くない。僕のことを『ただの小僧だ』と思っているこの男に、一発かましてやろう。


「証拠ですか・・・。それなら、もう出してますよ。これです。」


 そう言いながら、僕は自分の両手のひらを表にして、従業員が今いるカウンターの上に僕の手をのせる。無論、この時点では、僕の両手には何もない。


「何もねぇじゃねえか!」


 僕の両手を見て従業員が言うが、それはその通り。現時点では、ね。


「もっとよく見てくださいよ。ほら。」


そう言って、左手をひっこめて右手だけを残し、右手をグーの形にしてそっと持ち上げる。


「なんだ? まさかその右手から証拠のブツが出てくるとでも言うのか?」

「出てくると思いますか?」


 実際のところ、従業員はどう思っているんだろう。質問をしてみると、従業員は僕を馬鹿にしたような顔で見てくるのをやめ、真面目な顔で僕を見つめてきた。僕を見定めるような目、と言い換えてもいい。


「俺自身は出るわけがねぇ。と思ってる。ただ、ここでブツを出せないような小僧に、お頭がここを紹介したとも思えねぇ。」


 つまり・・・?


「出るってことだよ。さぁ、はやくその右手をあけな!」


従業員が吠える。ではお望みどおりに。


「じゃあ、いきますよ。1、2・・・。」


 カウントともに、左手の人差し指だけを伸ばし、それで右の拳をたたく。


「3!」


 ここだけ少々大げさに両手を振る。演出は大事だ。

 そして、腕を振り終わると、そっと左手を下げて右手をゆっくりと開く。そこには・・・。


「ほう・・・! やるじゃねぇか。」


 あのとき別れ際にオルガさんから渡された、あの名刺があった。


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