第2章 第37話 なんのために
「ほら見ろ! これだ、これこそが貴様が魔族である事を決定づける証拠だ!
ここを見てみろ!」
僕が取り出したカードを嬉々として奪い取り、僕の顔に向けて突きつけてくるガタツ。ご丁寧に指で『スキル取得欄』を指し示すサービス付きである。
「この字体で書かれたスキルは魔族しか使えない! そして、冒険者カードは偽りの情報で作製することはできない。この2つの情報はもはや常識! ってことは、てめぇは間違いなく魔族なんだよ!」
ガタツが喚くが、カードを見せたらこういう事になるであろうことは予測済みだった。だから当然、僕は慌てない。
「それはどうでしょう?」
「なにぃ?」
僕はガタツが指差しているスキルを人差し指で示しながら言う。手錠が付いているのが美しくないが、仕方がないので気にしない。
「『魔族しか使えないスキル』・・・確かに今まではこういうスキルは魔族しか使用したり習得することは出来なかったのかもしれません。
しかし、今回が初めてとなる例外だったならどうです? たまたま『魔族しか使えない』とされるスキルを僕がこの世界で初めて使用できる人間第一号であったとしたら?
そうである場合は、そちらの言い分は間違っているということになりますよね?」
僕の言い分が正しいなら、ガタツの言い分の証明となる情報が間違っていることになるのだから、そういうことになる。まぁ、僕が人間であることは僕自身が良く分かっているが。
「くっ・・・あくまでも魔族であると認めないってわけか!」
「僕は魔族ではありませんから認める必要はありませんね。」
「ほう・・・。そうか。なら、仕方ねぇな。アレを使うしかねえか。」
何する気なんだいったい・・・。
「何をするつもりなんですか?」
「てめぇが魔族である事を確定させる。てめぇが素直に認めてくれりゃあ楽だったんだが、こうなっちゃぁしょうがねぇ。」
「どうやって確定させるんですか? 僕を魔族かどうか確認するのは構いませんがもし確認した結果『人間です』なんて結果が出たらコトですよ? 名誉棄損で訴えてもいいレベルです。今ならまだ『間違いでした』で済みますよ?」
「ハッハッハ!おいおいそれは脅してるつもりか? 残念だがそんなのは俺には通じねぇよ。なんのためにここにてめぇを連れてきたと思ってるんだ? 教えてやるよ。この建物の中には探知器があるからだ!そいつを使えばてめぇは終わりだ!」
「探知器・・・?」
「そうだ。探知器は魔族かモンスターが検知範囲内に存在する場合アラームを鳴らす機械だってことは知ってるよな?」
言うまでもないが探知器という機械の存在自体が初耳である。
「ちなみに検知範囲は?」
「この部屋の中くらいしかねぇが、安心しろ。範囲が狭い分、精度は完璧だ。使えば間違いなくどちらの言い分が正しいかが確定するぜ。」
なんだと・・・!
検知範囲がこの部屋いっぱいってことは、もし探知機を使われればマリーの存在を検知してアラームが鳴ってしまう!そうなったら『僕=魔族』という嘘が真実として確定してしまい、僕は終わりだ。いかに真実は違っていたとしても、そこから事態を好転させるのは絶望的だ・・・!探知機を使われるわけには断じていかない。しかし、ここで探知機を使わせない方向に持っていく事もそれはそれで不自然っ!
僕の内心の動揺を感じ取ったのか、ガタツはにやりといやらしい笑みを送ってきた。
「じゃあ、探知機を取ってくるぜ。逃げようなんて考えるなよ。部屋の前には見張りを置くし、よしんばここから逃げられたとしても、手錠をしたやつが出せるスピードなんてたかが知れているし、手錠をしていればいやでも目立つ。目撃情報を頼りにすぐに捕まっておしまいだ。
それなら手錠の破壊を試みるか? 無駄だ。その手錠は、掛けられた者の魔法の発動を封じる効果がある。魔法で焼き切ったり破壊したりは出来ねぇし、おまけに使用している金属は硬さに定評のあるオリハルコンときた。物理的にも破壊出来ねぇ。」
なんてことだ。『シャインファイア』の出力を調整して手錠を焼き切り、ここはひとまず逃走しようと思っていたのに!
やばい。これは、この状況は、かつてないピンチだ・・・!




