第2章 第34話 オペレーション・スタート!
今回もフィーアさん視点でお送りいたします。
「・・・そうか。状況はまずいが、まだ致命的というほどではないな。打つ手はある。」
私の報告を聞いてしばし黙考したのち、我がギルドマスターはそうおっしゃいました。彼がそう言うからにはまだ望みはあるのでしょう。
「フィーア君には、これからいくつかやってもらいたいことがある。まず一つ目は、この『更新が終わった奴の冒険者カード』をヤツに返しに行ってもらいたい。依頼の報酬を奴に渡すことも忘れるなよ。難しいかもしれないが、あくまでいつも通りに業務を行っている体で行ってほしい。」
「・・・はい。」
怖いですが、ここは私が踏んばらねばならないところでしょう。返事はこれ以外にありえません。
「報酬等を渡しに行った時点で既に奴が受付から消えていた場合は、すぐにここに戻り、その旨を私に知らせるのだ。その場合は、フィーア君が奴の正体に気付いたことに奴が気付いている可能性が高い。なので新たに作戦を考える。」
「わかりました。」
「もし奴がまだ受付で報酬を受け取るのを待っていた場合は、うまく話を持って行って、奴を『ライ』という店に誘い込んでくれ。そうだな。時間もお昼前だし、ランチにおすすめの店ということでこの店の情報を流せばいいだろう。
奴に店の情報を伝えるところまで終わったら、私のところに報告に来てくれ。奴が『ライ』に入ったらそこからはこちらで何とかする。ここまでで何か質問はあるか?」
「・・・いえ、大丈夫です。ありません。」
不安がないわけではありませんが、マスターと話しているうちに少し落ち着けてきました。これならなんとかいつも通りの態度で事に当たれそうです。
「よし。では、作戦開始だ!」
マスターのセリフを受け、私はキリュウインさんの待つ私の仕事場へと戻るのでした。
☆
マスターから作戦を授かり、受付に戻ってみると、キリュウインさんはまだ受付で私を待っていました。作戦続行です。
まずは、いつも通りにギルドカードと報酬の受け渡し。通常業務であればこれで処理完了となりますが、むしろ今回はここからが本番です。不自然に思われないように、さりげなく、自然をこころがけて・・・。
「ところで、キリュウインさんはお昼のお食事はもう済まされましたか?」
少し唐突すぎましたでしょうか・・・?
「いえ、まだですけど・・・。あ、そうだ。どこかおすすめってありますか?」
私の質問に、いつもの調子で答えるキリュウインさん。どうやら不審には思われていないようです。それどころか、『ライ』を紹介しても不自然じゃない話の流れになりました。これは好都合です。
「そうですね・・・。この近くですと、『ライ』というお店がお勧めですね。ヲーメンという一風変わったスープを出すお店なのですがこれがまた絶品なんです。」
キリュウインさんが『ライ』に行きやすいように、私はお店への地図を書いてキリュウインさんに渡します。これでキリュウインさんはほぼ確実に、『ライ』に行ってくれるはずです。
「お店の場所はこの星印を付けた場所です。ぜひ行ってみてください。」
とどめの一言も忘れない。
「分かりました。今日のお昼はそこにしてみますね!」
そう言って、こころなし早歩きでギルドを後にするキリュウインさん。まだ見たことないであろうヲーメンがそんなに楽しみなのでしょうか。
キリュウインさんを騙していることに心がじくりと痛みますが、彼は魔族です。この痛みは割り切らなければなりません。
私は、作戦の成功をマスターに伝えるため、再びギルドマスターの部屋へと向かうのでした。




