第2章 第24話 お目覚めですか?
夢の技術で生み出した夢のようなお薬をムーマ・エンドに飲ませると、すぐに傷は癒えていき、呼吸も穏やかなものに変わっていった。内心不安だっただけに、うまくいったようでほっとする。
少しすると、ムーマ・エンドは黄色いお目目をパッチリと開けた。そして、体の具合を確かめるように軽く浮き上ると、くるくる回りだす。どうやら、体のどこにも問題はなさそうだった。
「体の具合は大丈夫そうだね。」
楽しそうに踊る様子を見てそう判断した僕は、ムーマ・エンドにそう声をかけた。
「きゅっ!? きゅう・・・。」
声をかけられたムーマ・エンドは、驚いたような鳴き声を出した後、おそるおそるといった感じでうなずく。そりゃあそうか。自分を襲った相手にこんなこと言われたら、何かあるんじゃないかって考えるのが自然だ。
だから僕は、言葉を紡ぐ。
「無理かもしれないけど、そんなに警戒しないでくれないかな。話は全部ここにいる西村から聞いたよ。お前は優しいやつだったんだね。それなのに、いきなり攻撃をしかけてごめん。許してくれとは言わないけど、せめて謝らせてくれないかな?」
重い体をなんとか直立させ、僕はムーマ・エンドに頭を下げた。すると、ムーマ・エンドは、ゆっくりとこちらに近づいてくると、
「きゅ♪」
と一声鳴きつつ、僕の頭を、黒い靄を手の形に伸ばしてポンポンと軽く叩いた。顔を上げると、そこには無邪気に笑うムーマ・エンドさんがいらっしゃった。どうやら、あれだけのことをしでかしたのに許してくれるらしい。まったく、小さな見た目とは裏腹にとんでもない大物だ。
「・・・ありがとう。」
「きゅ~~♪」
僕はお礼を言いながら、そっとムーマ・エンドをなでた。なでる手はムーマ・エンドの体をすり抜けることはなく、表面をきちんとなぞることができた。そのさわり心地はなんとも不思議な感じがした。ガスの塊と、なで心地がとんでもなく素晴らしいクッションを足して2で割ったような、そんな撫で心地だった。
「どうやら、これで一件落着だな。」
一連のやりとりを横で見ていた西村が、こちらに近づいてきつつ、まとめるようにそう言った。なんだかたかが薬草採取の依頼のはずなのに、ここまで来るのに大変な苦労をした気がする。
「うん、そうだね。これで一件落着だよ。
それじゃ、そろそろ現実世界に帰りましょうか。 ムーマ・エンド、いっちょお願い。僕たちを眠りから覚めさてくれる?」
「きゅ~!」
打てば響くように、ムーマ・エンドは返事を返す。やがて、僕たちは、そろって夢世界から意識が遠のくのを感じた。




