第2章 第11話 おまじないの力
今回は野次馬Aさんサイドでお送りいたしいます。
―終わった。この勝負あいつの負けだ。
あたしは、自分が勝負に挑んだわけでもないのに、絶望に打ちひしがれていた。やけに自信満々に勝負を挑みに行くからこいつならもしかしたらと思っていたのに、配られた手札を見せてもらったら出来ていたのは6のワンペアのみ。悪あがきにカード交換をするも、結局手札の強さはワンペアのまま。『本当にこれで大丈夫なんだろうな?』と表情で問いかけたらひきつった顔をそらす始末だ。これはまずいやつなんじゃないのか。
そしてギラヴィの野郎の方は、カード交換をし終わる際に手札が見えてしまったが、ダイヤのフラッシュが出来ていやがる。このままでは勝負にならない。今回もやつが勝ってしまうのか。ちくしょう・・・。
ギラヴィは得意げになって、あいつの手札を見せつけるよう勝負をせかしてくる。チッ、結果なんてわかってるくせによ・・・。
あたしは半分泣きそうになりながらあいつの持っているカードを見つめる。するとここであいつは、
「わかりました・・・。あ、でもカードを見せる前におまじないをさせてください。」
と、わけのわからないことをぬかし、左手の親指を手札の一番右端に来ているカード(ハートの6だった。)にかけた。いまさらなにをするつもりなのかと思ったが、その疑問はすぐに晴れた。あいつがカードを左手の親指ではじいた瞬間、
「なっ!?」
ハートの6がダイヤの8に一瞬でかわりやがった!続けざまにあいつはその隣のカードの角にまた親指をかける。まさかと思いながら再び奴が親指ではじくと・・・。
(ははっまじかよ!こりゃすげえ!)
今度はスペードの8に変わりやがった!続けて隣のカードも同様に親指ではじいていき、クローバーの8に、もう一枚をハートの8に書き換えていく。あっという間にあいつの手札は8が4枚とクラブの10が1枚のフォーカードになった。これなら奴に勝てる!
「お待たせしました。おまじないが終わったので手札を見せますね。」
そういけしゃあしゃあと言ってあいつは手札をテーブルに表向きで置いていく。公開された手札は当然、8が4枚のフォーカードだ。
「にゃっ!?」
素でびっくりした声を出すギラヴィ。どうやら奴にとっても想定外の出来事のようだ。そして即座に
「グラヴィ!魔力検知機は!?」
となにかの確認をマイクマンのグラヴィにとる。名前からするにたぶん発動した魔法を検知する機械なんだろうが・・・。
「ギラヴィ兄ぃ・・・異常なしにゃ・・・。魔法は一切使われていないのにゃ・・・。」
とのマイクマンのグラヴィの声を聞いて、ギラヴィは・・・。
「こんなのイカサマにゃ! おかしいのにゃ! にゃあが負けるなんてありえないにゃ!」
という自供ともとれるセリフを喚き散らしはじめた。しかし、あいつはそんな二人を気にせずに、
「それで、そちらの手札はどうなってるんですか? 早く見せて下さい。」
と冷静にギラヴィを煽っていた。
しばらくのあいだギラヴィはにゃーにゃー呻いていたが、しばらくしてギャンブラーのプライドにかかわると判断したのか、素直にカードを公開した。公開されたカードはやはりダイヤのフラッシュ。それを理解した瞬間、盛り上がるギャラリー。そして、半ばヤケクソになりつつ、グラヴィが喚き散らす。
「き、決まったにゃぁー!8のフォーカード対ダイヤのフラッシュで、チャレンジャーの勝利にゃぁー!
こんなのうそにゃー!夢なら覚めてくれにゃー!」
いい気味だ。非常に胸がすかっとした。イカサマをした罰だな。
あいつは賞金と奥義書をグラヴィから受け取ると、静かにその場を後にする。あたしはすかさずあいつの後を追いはじめた。




