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第2章 第8話 誰もいかないのなら


「すみません。ちょっといいですか。」


 僕は近くにいた野次馬A(金髪の女性)に声をかけた。


「ん、なんだ?」


 声をかけられて振り返る野次馬Aさん。なかなかの美人だ。僕でなきゃ見逃しちゃうね。


「これは、ポーカーの勝負をしてるんですか?」


 ドワーフのおっさんの勝負の結果を見てた感じそうっぽいのだがどうなんだろうか。


「ああ、そーだよ。手札交換は一度だけ。参加料金は5000Gで、あいつに勝てれば今なら賞金16万Gに加え、火属性魔法『シャインファイア』習得の奥義書をゲットできる。」

「ふうん・・・。」


 ポーカーの一発勝負で参加費5000Gか。お金は一応足りるな。しかし奥義書ってなんだろうか。


「奥義書ってなんなんです?」

「は?おまえ奥義書を知らねえのか?」


 逆に聞かれた。知らないので素直にうなずく。野次馬Aさんは僕の無知ぶりに驚きつつも説明してくれた。


「奥義書ってのは、読むとそれだけでそこに記されているスキルや魔法を習得できちまう便利な代物だ。スーパー便利なグッズだが、それでも欠点はある。」

「説明を聞いていた限り欠点なんてなさそうなんですが。」


 いやほんとに。


「ところがそうでもねぇんだよ。奥義書はな、誰かが一度そこに記されているスキルや魔法を習得しちまうとその場で燃え尽きてなくなっちまうんだ。だから奥義書を使いまわすってことができない。それと奥義書で覚えたスキルや魔法は、誰かに教えることもできない。まあ、それでも便利な品であることにゃあかわらねえけどよ。」


 なるほど。その旨味をダシにして客を釣っていたということか。姑息な手を・・・。奴を打ち倒さんという思いからか、自然と目に力が入ってしまう。


「まさかおまえ、勝負しに行くつもりか?」


 僕の目を見たであろう野次馬Aさんが聞いてくるが、もちろんそのとおり。目には目、歯には歯だ。イカサマ野郎には、出牛唆大学で『素晴らしきイカサマ野郎』と呼ばれた僕こそが引導を渡すにふさわしい。カードマジックで鍛えたワザを見せてやる。

 僕は野次馬Aさんにうなずきを返す。


「やめとけやめとけ。ギラヴィはおそらくイカサマをしてやがる。なんせもう32連勝してんだぜ。勝てっこねえよ。」


 野次馬Aがとめてくるが僕は聞き入れない。むしろそれを聞いて勝ちを確信してニヤリと笑った。


「大丈夫。僕なら勝てますよ。」


 なにいってんだこいつと言いたそうな目でこちらをみてくる野次馬Aさん。失礼なやつである。周りを見てみるが、このやり取りをしている間もどうやら新しい対戦相手は現れなかったようで、あちらこちらで「おまえいけよ。」みたいなやりとりをしているのが見て取れた。誰もいかないなら遠慮なくいかせてもらおう。


「さあ、もうギラヴィに挑戦しようという気概あふれる者はいにゃいのかー!?」


 というマイクマンの声に便乗して、僕は


「はいはいはーい。僕が挑戦しまーす!」


 と名乗りを挙げた。野次馬Aさんは頭をかかえていた。



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