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第2章 第6話 はじめてのおつかい


  次の日の朝、昨夜寝る前にどのような魔法を使いたいか考えた結果、強烈な雷を杖から飛ばす魔法を使う自分をイメージしたらしっくりきたので雷の魔法―サンダースローと名付けることにした―を習得しようとしたが、この魔法を覚えられないかと1時間ほど格闘したにもかかわらず、冒険者カードが新たな魔法の習得を知らせることはなかった。どうやらイメージだけでは新たに魔法は作り出せないようだ。世の中はそう甘くはないということか。しかし、そうなるとイメージだけで『魔法空間』の魔法が完成したことの説明がつかない。いったいどういう仕組みになっているのだか。ますますこんがらがってきてしまった。まあとりあえず、少し遅くなってしまったが階下に朝食を食べに行こう。

 身支度を整えたあとに朝食を食べ、宿屋にもう一泊分の追加料金を払ってから冒険者ギルドに繰り出した。なにか依頼をこなしてお金を稼ぐことと、ムーマ・エンドについての情報収集をすることが目的だ。とりあえず、まずは依頼だ。いい依頼はないかと掲示板の方に移動する。なにか自分にできそうな依頼はないものか。

 目線を上から下に下げ、少し右にずれてから再び目線を上から下に下げ―という動作を何回か繰り返すと、よさそうな依頼を見つけた。『薬草の採取』と言う依頼だ。とある薬草を採ってくる、というのがミッションの内容で、最低採取数は20株。報酬は最低2000G+出来高制。推奨ランクはF以上となっているから自分でもこなせるだろう。そう考え、僕は掲示板からこの依頼書をはがし、昨日と同様受付の列に並ぶ。 

 しばらくして自分の番が来た。呼ばれて窓口に進んでみれば、そこにいたのは誰あろう、フィーアさんだった。とりあえず挨拶する。


「どうもフィーアさん。おはようございます。」

「おはようございます。本日はどのようなご用件で?」


 例によって完璧スマイルをかましてくるフィーアさん。その微笑みが昨日とは少し違うように感じるのは気のせいだろうか。

 僕は依頼を受ける旨を伝え、彼女に依頼書と自分の冒険者カードを渡す。


「薬草の採取ですね。採取してきていただきたいのはこの依頼所に書いてある通りアフギ草です。アフギ草について説明いたしましょうか?」

「お願いします。」


 なにせこっちはアフギ草なんてきいたこともないからな。説明はきいておいたほうが良いに決まっている。

 フィーアさんは、足元から図鑑のようなものを取り出すとぺらぺらとページをめくり始めた。そしてアフギ草のところでその手を止めて説明を始める。


「アフギ草は、サウホア目サウホア科の一年草です。茎は下部から枝を分け、多少毛があり、高さはだいたい10-30cmになります。葉は羽状複葉で、全長は2.5-9cmほど。見た目としてはこのような感じです。」


 そう言って、図鑑の写真を見せてくるフィーアさん。これがアフギ草か。


「アフギ草がよく生息している場所は、この町の東門を出てまっすぐ進んだ先にある平原です。また、アフギ草は薬を調合する際によく使う薬草ですので、もし今後も採取されましたらギルドに持ってきていただければその都度買取りいたします。

 ただ、この依頼に関してひとつだけ注意事項が。」


 ここで溜めをつくるフィーアさん。そんな言われ方をされると気になる・・・。


「なんです?」

「その平原には低レベルとはいえ魔物が出没するそうなんで注意して下さいね。」

「わかりました。」


 まじか。魔物が出るのか。 Fランクでも受けられる依頼だからそういうのは大丈夫かと思っていたがそうでもないのか・・・。そうなると早急に攻撃魔法を習得しなければなるまい。少なくとも護身用の武器を何か持ってから行くべきだろう。よし、とりあえずどこかでナイフを買おう。早急に。


「よろしければこの図鑑を借りていかれますか?」

「はい、お願いします。」


 そう返事を返し、彼女から図鑑を受け取る。地味に大きい本だ。これでは持ち運ぶのも面倒なので『魔法空間』を使い、謎空間に図鑑を放り込む。重いものを重さを気にせず運べることの便利さを味わえる瞬間である。

 その様子を驚いたような目で見ていたフィーアさん。あ、そうだ、彼女にはもう一つ聞いておかないといけないことがあった。


「すみません、一つ教えて下さい。ムーマ・エンドっていう魔物について詳しく知りたいんですけど。」


 そう、にっくきアイツのことだ。


「ムーマ・エンドですか・・・。キリュウインさんはかの魔物についてどのくらいご存じですか?」

「相手を眠らせるってことくらいしか知りません。」


 そう素直に話すと、フィーアさんはすこし驚いたようだ。この世界では知っていて当たり前の知識なのだろうか。

 少しの間驚いてから、フィーアさんは説明を開始した。


「ムーマ・エンドは黒い煙のような物質で体を構成する悪魔モンスターの一種です。身体は2等身で構成されており、目は黄色で瞳の色は赤。足はありません。実体がないため物理攻撃は全て無効になり、しかも高魔法耐性を持っています。現実世界における攻撃手段は催眠術のみですが、これを回避、あるいは無効化することは不可能です。」


 この時点ですでにやっかいそうな匂いしかしない・・・。


「催眠術を用いて相手を強制的に眠らせ、夢の世界に相手を引きずり込み、自分自身もその夢世界の中に入り込んでそこで相手を攻撃すると言われています。先ほど申しました通り現実世界では催眠術以外の攻撃手段はありませんが、夢世界の中で相手に様々な攻撃をしてくるそうです。もし夢世界でムーマ・エンドに倒されて精神的に死んでしまうとその者は2度と目を覚ましません。ムーマ・エンドの催眠術で眠った相手は、


①夢世界でムーマ・エンドを自力で倒す

②精神的に死ぬ前に誰かがムーマ・エンドを倒す

③ムーマ・エンドが気まぐれで催眠術を解く


 このどれかの条件を満たさない限り眠りからは覚めないとされています。『こいつにあったらとにかく逃げろ。』というフレーズが子供にも定着しているレベルで危険なモンスターと世間では認識されています。それほどに危険なことで有名です。」


 というのがおおまかな説明ですね。というフィーアさん。僕は苦笑いしながら「説明ありがとうございます。」と言うしかなかった。こんなやつを倒さなきゃいけないのか・・・。


「ちなみにムーマ・エンドは平均レベルが90と言われているそうですから、もし発見しても戦わずにすぐにギルドに知らせてくださいね。」

「は、はい。」


 言えない。近いうちにムーマ・エンドを倒しに行くつもりだなどとは・・・。


「まあ、薬草採取に行くだけですからそんな危険なモンスターには遭遇しないとは思いますが・・・なんにしても気をつけて下さいね。

 ・・・はい、これで依頼を受理したことになります。頑張ってきてくださいね。」

「・・・はい、頑張ってきます。」


 受付嬢の笑顔から、僕はどこか逃げるようにその場を後にした。

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